2015年10月03日
側坐核と意欲・運動麻痺の機能改善の最新脳科学とは?(2015年)
キーワード
:側坐核 大脳皮質運動野 活性化 運動麻痺回復
リハビリ関連書籍のレビュー.blogのサイト(以下:当サイト)でも、
麻痺症状などへの運動療法関連の話題として、
以前に、
:Review19. 脳卒中理学療法の理論と技術
:Review21. 片麻痺回復のための運動療法 促通反復療法「川平法」の理論と実際
:Review22. リハビリテーション臨床のための脳科学 運動麻痺治療のポイント
:Review31. 運動学習理論に基づくリハビリテーションの実践
:Review47. 学習と脳 器用さを獲得する脳
などの書籍のレビューをさせていただきましたが、
ニューロリハビリテーション・脳神経科学などの知見と、
運動麻痺改善へ向けての
運動療法の知見に関して、
関心の高い、
理学療法士PTの方や、
作業療法士OT、
医師の方も多いのではないでしょうか。
今回取り上げさせていただく
運動機能回復関連の
論文としては、
論文名
:Function of nucleus accumbens in motor control
during recovery after spinal cord injury
雑誌名など
:Science 2 October 2015
Vol. 350 no. 6256 pp. 98-101
* 2015年10月 3日に
Googleの検索システムで検索してみると
全文のPDFの取得が無料で可能でした。
という研究論文dエス。
研究内容としては、
脊髄損傷後の
運動機能の回復と、
「 側坐核 」の
働きに関連させた
動物研究となっているようです。
書籍レビューの、
:Review29. リハビリテーション効果を最大限に引き出すコツ―応用行動分析で運動療法とADL訓練は変わる
の記事で、
応用行動分析学関連書籍の
レビューをさせていただきましたが、
リハビリテーション従事者の方の中には、
相手の意欲を引き出す方法・モチベーションなどに関して、
関心の高い方も多いのではないかと思います。
脳出血や脳梗塞を始めとする
後天的脳損傷(運動関連領野・錐体路などの損傷)や
脊髄損傷などによる
運動麻痺に関して考えてみると、
1.神経の損傷・変性の程度や、
年齢なども考慮し、
長期的にどの程度、
運動麻痺が改善される余地があるのか?
:予後予測の視点
2.1を考慮した上で、麻痺の改善に焦点を当てるのか?
それとも、現状の機能・能力で、
その人らしい生活ができることに
価値を見出していくか?
:価値観・発想の転換の視点
3.長期的に麻痺の改善に向けて
フォローし続ける機関の有無
:環境因子(制度を始め、外部的な環境)
4.周囲の協力や、金銭的な理由
:環境因子
をはじめとして、
様々な要因が
運動麻痺の改善に関わってくるのではないかと思います。
やる気を引きだせる支援の重要性を
認識はしていても、
やる気を引き出す支援を継続させる場合には、
セラピスト側が知っておきたい情報として、
「 1 」の予後予測に関連する
知見は、
まず知っておきたいのでは
ないかと思います。
運動麻痺のリハビリに関して、
予後予測の知識がない状態では、
暗闇の中を駆け巡るのに
似た状態で、
支援を続けることになり、
相手のモチベーションを高める前に、
支援をする側のモチベーションも
維持のしにくさがあるのではないかと感じます。
一概には
言えないかもしれませんが、
そのような状態では、
運動麻痺改善へ向けて
臨床をされる
セラピストの中には、
あるところで
燃え尽きてしまう可能性も
秘めているのではないかと
思います。
予後予測に関して、
知っておきたい
具体的な知識としては、
現在までの症例研究の知見や、
統計的手法を用いた
大規模研究などの研究などから、
・どの程度の年齢層の方が、
・どの程度の神経の損傷・変性具合で
・どの程度の期間
・どのような練習を継続したら
・どの程度まで麻痺が改善したのか?
・または、麻痺が改善しなかったのか?
などの情報を知っておくことで、
支援の方法にも違いが出てくるのではないかと思います。
現在までの、
予後予測関連の研究成果から、
明らかに、
数十年スパンなどの、
長期的な時間を通して、
麻痺が改善してくるようであれば、
麻痺の改善へ向けて、
意欲を引き出せるように
支援をし続けつづけることが
しやすいのではないかと思いますが、
現在まで、
個人的に調べてきた範囲では、
数十年スパンでの、
麻痺の改善状況を詳細に
提示していただいている
研究論文は
ほとんど
見かけないような気がします。
統計的手法で
有意差が出たという
研究論文は
見かけることもありますが、
よく研究の結果を見てみると、
機能評価などの検査結果の数値は
多少改善していても、
臨床的には明らかな
改善とは言えないような
論文も多いのではないでしょうか。
そういった場合に、
起こりうることとして、
セラピスト側からすると
改善してきたと思っても、
ご本人の主観では、
麻痺は良くなっていないと感じるといった
麻痺の改善の捉え方に関して、
乖離が起きるのではないかと思います。
現在では、
脳機能イメージング研究をはじめとして、
脳神経科学などの研究成果が
世界中で
発表されていることなども影響し、
日本でも、
CI療法(Constraint-induced movement therapy)
などの知見をもとに、
運動麻痺へのアプローチに関心の
ある方も少しずつ
増えてきているのではないかと思います。
運動麻痺へのアプローチに関しては、
職種間の考え方の違いや、
立場・施設・学閥などにより
賛否両論もあるのではないかと思います。
ただ、
現在、
脊髄損傷や、脳神経損傷などにより
麻痺の症状が出ている方と
接することが多い
臨床でご活躍中の
臨床家の中には、
「 運動麻痺改善への強い要望を感じるものの、
制度面や、施設の設備、
自分の現状の知識や技術で
どのように対峙し続けたらいいのか? 」
などと
お悩みの方も
中にはいらっしゃるのではないかと思います。
後遺症が残りながらも
その人らしく生活されているようにみえる
方の中にも、
よく話を聞いてみると、
やはり、
運動機能面の改善を期待される方も
多いのではないかと感じます。
今後、
長期的に運動麻痺が改善された方などから
得られた情報の集積から、
予後予測に関して、
貴重な知見が得られることを
期待していきたいと思います。
神経損傷後の
運動麻痺が長期をえることで
改善傾向に向かう知見が出てくるようであれば、
今回、
紹介させていただいた、
論文名
:Function of nucleus accumbens in motor control
during recovery after spinal cord injury
雑誌名など
:Science 2 October 2015
Vol. 350 no. 6256 pp. 98-101
* 2015年10月 3日に
Googleの検索システムで検索してみると
全文のPDFの取得が無料で可能でした。
の成果も
臨床家などにも
ひろく還元され、
運動麻痺改善へ向けた
支援に関しての
支援者自身の自信や
拠り所となってくるのではないかと思います。
Scienceの雑誌というと、
当サイトでも、
:リハビリ関連英文献・研究機関リストのまとめ
の記事ページで、
取り上げさせていただいているように
インパクトファクター(Impact Factor)が
「 33.61 」(2014年)
「 34.4 」(5年間)
*「 Science 」のサイトの
情報をもとに作成
2015年10月 3日確認時点
であり、
世界的にも
多くの研究者にとって引用される機会の
多い雑誌であるようなので、
今回発表された論文の今後の反響が
長期的にどのようになるか
楽しみです。
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神経科学の学習に
2015年刊行
リハビリテーションのためのニューロサイエンス−脳科学からみる機能回復
2015年刊行
ニューロリハビリテーション
2015年刊行
神経科学の最前線とリハビリテーション―脳の可塑性と運動
by リハビリ関連書籍のレビュー.blog
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posted by RehaBookReview at 01:59
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