2022年03月05日
新ワクチン開発は女性ｍRNA科学者2 新冷戦(183)
新ワクチン開発は女性mRNA科学者2
新冷戦(183)
新冷戦(183)
1からの続きです
カリコ博士はハンガリーの大学で生化学の
博士号を取得して1985年にアメリカへ移
住しました。まだソビエト連邦が存在して
いる時代であり、ハンガリーを出国する時
に苦労したということです。アメリカでは
ペンシルベニア大学でｍRNAの研究を続け
たのですが、注目されることはなく苦節の
中での地道な研究生活だったということで
す。
ペンシルベニア大学ではHIVを研究してい
たドリュー・ワイスマン教授と知り合い、
2005年にはｍRNAの研究成果を共同で発
表しました。残念ながら注目されることは
なかったということです。しかし、2013
年にはビオンテック社から声がかかり、副
社長に就任しました。
新型コロナの始まりは、2019年12月1日
とされています。これは中国の武漢で謎の
肺炎を発症した日だそうです。12月30日
に患者の検体を解析してウイルスであるこ
とを突きとめ、ゲノム配列を解読したとい
うことです。2020年1月10日には国際デー
タベースに登録されたということです。
2020年3月にはビオンテック社はファイザ
ー社と共同で新型コロナワクチンを開発す
ると発表しました。そして2020年12月に
一般の人へのワクチン接種を開始しました。
ワクチン完成までの迅速さとワクチンの生
産量の多いこと、ワクチン接種の効果が
95％など、今までにない驚異的なワクチン
であることを示しました。
1984年からアメリカ国立アレルギー・感染
所の所長になったファウチ博士という人が
います。歴代６代の大統領に感染症の助言
をしてきたという感染症の権威なのですが、
ファウチ博士は「1年をまたずに2種類のワ
クチンができた。この2つはカリコ博士が
2005年に発表したｍRNAワクチンの研究
成果が土台になっている。パンデミック収
束の希望を与え、さらなる可能性を開いた」
と述べたということです。2021年2月の発
言なので、このまま信じていいでしょう。
現在は2022年3月になりました。パンデミ
ックと言われる地球的感染拡大を感染者数
でみてみましょう。感染者数の累計は4億
3400万人、死者数の累計は631万人です。
1日の感染者は21年12月下旬から急激に増
え、2022年1月18日に最多の400万人に達
しました。オミクロン株による感染拡大と
思われます、そこから2月26日には137万
人へ減っています。
38日間に1日の感染者数が260万人減りま
した。ウイルスの感染を回避する人の努力
や、ｍRNAワクチンの追加接種で重症化を
防ぐと、同時に周囲への感染もなくなるの
ではないでしょうか。地球上全体で必要な
ワクチンの量と接種する人の労力、どちら
も想像が及ばない膨大な量でしょう。実際
たくさんの命が救われたことでしょう。カ
リコ博士は「本当のヒーローは私ではなく、
医療従事者や清掃作業など感染の恐れがあ
る最前線で働く人たちだ」ということです。
ｍRNAワクチンは新型コロナ・パンデミッ
クの救世主ではあるのですが、オミクロン
株が感染拡大して話が複雑になりました。
現在はまだ先が見えず、恐怖も続いていま
す。
ファウチ博士の「ｍRNAワクチンはさらな
る可能性を開いた」の言葉か ら期待するな
ら、まずはオミクロン株ワクチンでしょう。
日本国内の例ですが、デルタ株よりも感染
力が強いことから感染者数が多く、重傷者
も多く死者数も多いです。子供や若者の感
染も増えています。極最近は後遺症につい
ても報告され始めています。ファイザー社
は3月中にアメリカでオミクロン株ワクチ
ンの承認申請をする可能性があります。も
う少しの間ウイルスから逃げ回りましょう。
竜巻・モンタナ州
2018年6月の14
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
“革新的”研究成果がコロナワクチン開発に 女性科学者の思い
NHK 2021年5月27日
1からの続きです
４苦節40年 母国を離れて
ハンガリー生まれのカリコ博士は首都ブダペストから東におよそ150キロ離れた地方都市で育ちました。親は精肉店を営んでいました。
大学で生化学の博士号を取得したあと、地元の研究機関で研究員として働きましたが、研究資金が打ち切られたことから1985年、夫と娘の3人でアメリカに渡りました。
当時ハンガリーは社会主義体制で、外国の通貨を自由に持ち出すことができなかったため、出国の際、カリコ博士は2歳の娘が持っていたクマのぬいぐるみの中に全財産の900ポンドをしのばせてアメリカに持ち込んだということです。
アメリカでは、ペンシルベニア州のテンプル大学やペンシルベニア大学で研究員や助教として働き、mRNAなどの研究に没頭。
しかし、研究成果はなかなか評価されず、助成金の申請を企業から断られたり、所属していた大学の役職が降格になったりするなど苦難の連続だったといいます。
そうした中、ペンシルベニア大学の中でコピー機を使う際に言葉を交わしたことがきっかけでHIVのワクチン開発の研究をしていたドリュー・ワイスマン教授と知り合い、2005年、今回のワクチン開発に道をひらく研究成果を共同で発表しました。
しかし、この論文も当時は注目されず、2010年には関連する特許を大学が企業に売却してしまいました。
多くの研究者がその可能性に気付かない中、ドイツの企業ビオンテックはこの研究成果に注目。企業に招かれたカリコ博士は2013年に副社長に就任、おととしからは上級副社長を務めています。
2020年3月、ビオンテックは以前から共同で研究していたアメリカの製薬大手ファイザーとmRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンの開発を開始すると発表。
臨床試験で95％という高い有効性を確認したとして世界を驚かせたあと、共同開発の発表からわずか9か月後の2020年12月に一般の人へのワクチンの接種が開始。カリコ博士らの功績が世界に認められることになりました。
５「パンデミック収束への希望を与えた」
アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるアンソニー・ファウチ博士は、2021年2月「1年を待たずに2種類のワクチンができた。この2つはともにmRNAワクチンで、90％以上の高い有効性を示している。
そして、いずれもカリコ博士らが2005年に発表した研究成果が土台となっている。世界にパンデミック収束への希望を与え、ワクチンのさらなる可能性を開いた」と述べ、カリコ博士らの研究成果を評価しました。
またイギリスの新聞、ガーディアンは「カリコ博士は新型コロナワクチンの技術のパイオニアだ。研究者としての環境を求めてクマのぬいぐるみにわずかなお金を隠してアメリカに渡った研究者が、今ではノーベル賞の有力候補といわれている」と報じています。
また、フランスのニュース専門チャンネル「フランス24」は「カリコ博士は研究者の中心から外れたところで何年も過ごした。カリコ博士と、共同研究者のワイスマン教授は今ではノーベル医学・生理学賞の本命候補となっている」と伝えています。
ペンシルベニア大学の上級研究員、村松浩美さんは、10年以上にわたってペンシルベニア大学やドイツの企業でカリコ博士とともに研究してきました。
村松さんは「研究が趣味のような人で、『土日は家で論文が読める』などと言ってとにかく毎日、論文を読んでいた」と研究に没頭するカリコ博士の様子を振り返りました。
さらに「予想とは違っても実験で出た結果を大事にする人だった。結果のよしあしに引きずられず、データを受け止めて研究を進めた。これが本当の科学だと思った」と述べました。
また「彼女のような革新的な研究であっても助成金がもらえないケースがあるのだから、ノーベル賞級の成果だったとしても、人目につかないまま消えていったものがたくさんあると思う」と述べました。
ハンガリー生まれのカリコ博士は首都ブダペストから東におよそ150キロ離れた地方都市で育ちました。親は精肉店を営んでいました。
大学で生化学の博士号を取得したあと、地元の研究機関で研究員として働きましたが、研究資金が打ち切られたことから1985年、夫と娘の3人でアメリカに渡りました。
当時ハンガリーは社会主義体制で、外国の通貨を自由に持ち出すことができなかったため、出国の際、カリコ博士は2歳の娘が持っていたクマのぬいぐるみの中に全財産の900ポンドをしのばせてアメリカに持ち込んだということです。
アメリカでは、ペンシルベニア州のテンプル大学やペンシルベニア大学で研究員や助教として働き、mRNAなどの研究に没頭。
しかし、研究成果はなかなか評価されず、助成金の申請を企業から断られたり、所属していた大学の役職が降格になったりするなど苦難の連続だったといいます。
そうした中、ペンシルベニア大学の中でコピー機を使う際に言葉を交わしたことがきっかけでHIVのワクチン開発の研究をしていたドリュー・ワイスマン教授と知り合い、2005年、今回のワクチン開発に道をひらく研究成果を共同で発表しました。
しかし、この論文も当時は注目されず、2010年には関連する特許を大学が企業に売却してしまいました。
多くの研究者がその可能性に気付かない中、ドイツの企業ビオンテックはこの研究成果に注目。企業に招かれたカリコ博士は2013年に副社長に就任、おととしからは上級副社長を務めています。
2020年3月、ビオンテックは以前から共同で研究していたアメリカの製薬大手ファイザーとmRNAを用いた新型コロナウイルスワクチンの開発を開始すると発表。
臨床試験で95％という高い有効性を確認したとして世界を驚かせたあと、共同開発の発表からわずか9か月後の2020年12月に一般の人へのワクチンの接種が開始。カリコ博士らの功績が世界に認められることになりました。
５「パンデミック収束への希望を与えた」
アメリカ政府の首席医療顧問をつとめるアンソニー・ファウチ博士は、2021年2月「1年を待たずに2種類のワクチンができた。この2つはともにmRNAワクチンで、90％以上の高い有効性を示している。
そして、いずれもカリコ博士らが2005年に発表した研究成果が土台となっている。世界にパンデミック収束への希望を与え、ワクチンのさらなる可能性を開いた」と述べ、カリコ博士らの研究成果を評価しました。
またイギリスの新聞、ガーディアンは「カリコ博士は新型コロナワクチンの技術のパイオニアだ。研究者としての環境を求めてクマのぬいぐるみにわずかなお金を隠してアメリカに渡った研究者が、今ではノーベル賞の有力候補といわれている」と報じています。
また、フランスのニュース専門チャンネル「フランス24」は「カリコ博士は研究者の中心から外れたところで何年も過ごした。カリコ博士と、共同研究者のワイスマン教授は今ではノーベル医学・生理学賞の本命候補となっている」と伝えています。
ペンシルベニア大学の上級研究員、村松浩美さんは、10年以上にわたってペンシルベニア大学やドイツの企業でカリコ博士とともに研究してきました。
村松さんは「研究が趣味のような人で、『土日は家で論文が読める』などと言ってとにかく毎日、論文を読んでいた」と研究に没頭するカリコ博士の様子を振り返りました。
さらに「予想とは違っても実験で出た結果を大事にする人だった。結果のよしあしに引きずられず、データを受け止めて研究を進めた。これが本当の科学だと思った」と述べました。
また「彼女のような革新的な研究であっても助成金がもらえないケースがあるのだから、ノーベル賞級の成果だったとしても、人目につかないまま消えていったものがたくさんあると思う」と述べました。
NHK 2021年5月27日
終りまでお読み頂き、ありがとうございました
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