中国が造成した人工島（写真：産経新聞）

　【ワシントン＝青木伸行、北京＝西見由章】南シナ海の人工島における中国の「近接防空システム」（ＣＩＷＳ）の配備は、米国の政権移行や、フィリピンと中国の接近などにかかわらず、海洋覇権拡大という中国の既定路線に変わりがないことを明確に示した。実効支配の強化は、トランプ次期政権に対する強い牽制（けんせい）という意図も併せ持っている。

　中国外務省の耿爽報道官は１５日の定例会見で、「状況はよく理解していない」としつつ、「南シナ海の諸島は中国の固有の領土であり、自らの国土に必要な防衛施設を配備することは国際法が認める主権国家の正常な権利だ」と主張した。防衛施設の配備は「いわゆる軍事拠点化とは何の関係もない」と述べた。

　中国はすでに、パラセル（西沙）諸島に地対空ミサイルを配備済みだ。衛星写真を分析した米シンクタンク戦略国際問題研究所（ＣＳＩＳ）はこれと合わせ、「南シナ海で武力を伴う不測の事態が発生した場合に、人工島を防衛するという中国の真剣な意志を示している」と分析している。

　トランプ次期米大統領は、中国と台湾が「一つの中国」に属するという、中国の原則を認めてきた歴代米政権の政策に、疑問を呈する発言をしている。

　中国は強く反発しており、中国軍の爆撃機が先に、台湾周辺や南シナ海で約２週間にわたり特異な飛行を繰り返したことは、次期政権へ向けたメッセージだという見方が強い。

　フィリピンのドゥテルテ大統領は対中接近を図り、この結果、ルソン島沖のスカボロー礁（黄岩島）に居座っていた中国船が１０月、姿を消すなど「雪解けムード」を印象づけている。だが、こうした措置が取り繕いであることもＣＩＷＳ配備は示している。

南シナ海に防空設備　既定路線進む中国、実効支配強化　米次期政権を牽制

産経新聞 12/16(金) 7:55