日本ではすでに170万人が新型コロナウイルス感染症に感染しており、後遺症に悩む方も増えています。

過去に新型コロナに感染した人はワクチン接種を受けるべきなのでしょうか?

また、後遺症の症状にはどのような影響があるのでしょうか?



1】新型コロナに感染したことがあっても再感染することがある

新型コロナに一度感染したことがある人も、再び感染することがあります。

もちろん感染したことによって免疫ができますので、すぐに再感染することはありませんが、回復してから時間が経てば経つほど再感染のリスクは高くなります。

これまでの再感染の報告からは、

初回の感染から半年程度は再感染が起こりにくい

・2回目の感染は1回目の感染よりも軽症になりやすい

免疫が弱っている人では2回目の方が重症化しうる

過去の感染による感染予防効果は約80%(ただし高齢者では約47%)

デルタ株などの変異株は過去の感染による免疫から逃れて感染しうる

・ただし、個々人によってバラつきが大きく、特に軽症や無症状であった人は十分な免疫ができずに長期間持続しないことがある

ということが分かっています。 


2】ワクチン接種による感染予防効果も経時的に低下するが重症化予防効果は長期的に保たれる


一方で、mRNAワクチン接種によって得られる免疫についても多くのことが分かってきました。

これまでのmRNAワクチンの効果に関する知見をまとめると以下のようになります。

・感染予防効果は接種後しばらくの間は80-90%と高く維持される

高齢者や持病のある人にも十分な免疫が得られる

・感染予防効果は経時的に低下し半年後には20%にまで落ちる

・重症化を防ぐ効果は少なくとも半年以上保たれている2回のワクチン接種により重症化を防ぐ効果は長期間保たれますが、感染予防効果は経時的に低下しブレイクスルー感染が増えていることから、海外ではブースター接種が進められており、日本でも12月から行われることになります。


3】自然感染とワクチン接種、感染予防効果はどちらが高いのか?


ウイルスを中和するための中和抗体の量は感染予防効果と関連すると考えられています。

新型コロナに感染した後の中和抗体量よりも、2回のmRNAワクチン接種後の中和抗体量の方が高くなることからは、少なくとも接種後しばらくの間は、自然感染した人よりもmRNAワクチンを接種した人の方が高い感染予防効果があると考えられます。

実際に、アメリカの9つの州で新型コロナと診断され入院となった患者を対象に解析が行われたところ、

自然感染から90〜179日後に再感染したワクチン未接種者と、

90〜179日前にワクチンを接種して初めて感染した人とを比較したところ、

新型コロナによる入院リスクは自然感染した人の方が5.49倍高かった

ということが明らかになりました。

入院患者を対象としていることから、感染予防効果だけでなく重症化予防効果も自然感染よりもワクチン接種者の方が高いことを示唆しています。

このように、現在得られている知見からは、

感染で得られる免疫 < ワクチン接種で得られる免疫

と考えられ、これまでに新型コロナに感染したことがある人もワクチン接種が推奨されます。


4】新型コロナに感染した人がワクチン接種することで十分な免疫が得られる

過去に感染した人がワクチン接種をすることによってより強い免疫が得られると考えられています。


一例として、フランスで行われた、過去に新型コロナの既往のある人とない人それぞれに、mRNAワクチンを接種し抗体価の推移をみた研究では、過去に新型コロナの既往がある人は、初回の接種前から抗体価が高いのですが、初回の接種によってさらに抗体価が上昇し、過去に感染したことがない人よりも10〜45倍の抗体価を示しています(ピンクで囲った部分)。

過去に感染した人のうち、ワクチン接種をしていない人ではワクチン接種をした人と比べて再感染するリスクが2.34倍という報告も出ています。

2へ続きます


新型コロナに感染した人もワクチン接種をした方が良い理由 ワクチンが後遺症を改善するという報告も
忽那賢志感染症専門医 




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