2022年02月23日
新ワクチン開発は女性mRNA科学者 新冷戦(182)
新型コロナワクチンではmRNAワクチンと
呼ばれるワクチンとしてはあたらしいタイ
プが出現しました。ファイザー社とモデル
ナ社がこのタイプのワクチンなのですが、
新型コロナの予防接種では日本だけでなく
世界的にも主流になっています。以下の報
道記事は2021年5月に配信されたものです。
ファイザー・ワクチンは提携しているドイ
ツのビオンテック社が完成させたのですが、
mRNAワクチンの研究開発の中心はハンガ
リー生まれのカタリン・カリコ博士という
人です。カリコ博士は2013年にアメリカの
大学からビオンテックへ移ったということ
です。ビオンテックの経営者夫妻はガンに
効く抗体薬を研究していたのですが、免疫
の分野とすると同一分野と言えるのかもし
れません。アメリカでカリコ博士の講演を
聞き、有効な研究と判断してカリコ博士を
迎い入れることを即決したということです。
mRNAにウリジンが結合しているとヒトの
体の中では異物とみなされて、ヒトの体を
防御するための攻撃を受けて排除されて消
えてなくなるが、mRNAにシュードウリジ
ンが結合していると排除されないことをカ
リコ博士と共同研究者は発見しました。こ
のことからウリジンをシュードウリジンに
置換することを試し成功したということで
す。
ウリジンとかシュードウリジンとかは始め
て聞く言葉かもしれませんが、記事内にこ
の辺りのことを解説した図があります。ゆ
っくりとご覧ください。人体の細胞の中の
核酸とかリボ核酸とかの周辺に存在してい
る物質と想像して自分も持っていると思え
ば分かりやすいでしょう。さらに、あの
「ヤマサ醤油」でシュードウリジンが売ら
れているということなので親近感を持って
も大丈夫でしょう。
重要なことは、シュードウリジンを持った
mRNAは新型コロナウイルスの突起部分の
スパイクタンパクをよく作ることもカリコ
博士は確認しました。シュードウリジンの
mRNAがヒトの体の中に入ってスパイクタ
ンパクを作ると、人の体は異物と見て排除
する抗体を産生します。これで安全で確実
なワクチンが出来上がったわけです。この
技術を使うと多くのワクチンが迅速に作り
されるだろうと専門家は見ています。
実際、ファイバー社はオミクロン株のワク
チンを完成して臨床試験をしています。順
調なら3月中にアメリカ政府に緊急使用の
申請をするでしょう。図入りの詳しい解説
はオミクロン株のワクチンが日本で騒がれ
るようになって、思い出せばいいでしょう。
2へ続きます
竜巻・モンタナ州
2018年6月の13
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NHK 2021年5月27日
新型コロナウイルスの発症と重症化を防ぐ「切り札」と期待されるワクチンの1つ「mRNAワクチン」に欠かせない技術を開発したことで知られ、世界的に注目される科学者、カタリン・カリコ博士がNHKの単独インタビューに応じ
「ワクチンを導入した国では効果が確認されている。希望を持って欲しい」と日本の私たちに向けてメッセージを述べました。
1苦難の連続
ハンガリー出身の科学者、カタリン・カリコ博士は、大学卒業後アメリカに渡り、遺伝物質の1つ「mRNA」の研究を行いました。
しかし、研究成果はなかなか評価されず、助成金の申請を企業に断られたり、所属していた大学で役職が降格になったりするなど、40年にわたる研究生活は苦難の連続でした。
2005年には、当時同僚だったドリュー・ワイスマン教授と、今回のワクチンの開発につながる革新的な研究成果を発表しましたが、これも注目を集めることはなく、その後大学の研究室を借りる費用も賄えなくなり、2013年にドイツの企業ビオンテックにうつりました。
遺伝物質「mRNA」は、体内に入れるとすぐに分解されるほか、炎症反応を引き起こしてしまうため、長年、薬などの材料として使うのは難しいと考えられていました。
しかし、カリコ博士らはmRNAを構成する物質の1つ「ウリジン」を「シュードウリジン」に置き換えると炎症反応が抑えられることを発見。
この技術を用いて2020年、新型コロナウイルスのワクチンが開発されました。
現在、日本で接種が始まっているファイザーとビオンテックが開発したワクチンとモデルナのワクチンは2つともこの技術を使っていて、欧米の研究者などからは、実用化の鍵を握るこの研究成果はノーベル賞に値するという声もあがっています。
2「本当のヒーローは医療従事者など」
カリコ博士は今回、NHKの単独インタビューに応じ「物事が期待通りに進まない時でも周囲の声に振り回されず、自分ができることに集中してきた。私を『ヒーローだ』という人もいるが、本当のヒーローは私ではなく、医療従事者や清掃作業にあたる人たちなど感染のおそれがある最前線で働く人たちだ」と述べました。
そのうえで、日本の私たちに向けて「接種が進んだ国では普通の生活に戻りつつあるところもあり、ワクチンの効果は確認されている。もうしばらく注意深く過ごさなければならないが、希望を持って欲しい」と述べました。
3「mRNAワクチン」とは
ファイザーとビオンテックが開発したワクチンとモデルナのワクチンは、ともに「mRNAワクチン」と呼ばれています。
新型コロナウイルスの表面には「スパイクたんぱく質」と呼ばれる突起があり、ウイルスはここを足がかりとして細胞に感染します。
遺伝物質のmRNAは、この突起の部分のいわば「設計図」にあたり、ワクチンを接種すると、これをもとに、細胞の中でウイルスの突起の部分だけが体内で作られます。
そして、この突起によって免疫の仕組みが働き、ウイルスを攻撃する「抗体」などが体内で作られるため、あらかじめワクチンを接種しておくと発症や重症化を防ぐ効果があるとされています。
mRNAをワクチンに用いるアイデアは以前からありましたが、体内に入れると異物として認識されて炎症反応が起きることなどから、研究者の間では実現は難しいと考えられていました。
こうした中、カリコ博士は当時同じペンシルベニア大学にいたドリュー・ワイスマン教授との共同研究で、細胞の中にある「tRNA」と呼ばれる別のRNAは炎症反応を起こさないことに注目。
mRNAを構成する物質の1つ「ウリジン」を、tRNAでは一般的な「シュードウリジン」に置き換えると炎症反応が抑えられるとする論文を2005年に発表しました。
さらに2008年には、特定のシュードウリジンに置き換えることで、目的とするたんぱく質が作られる効率が劇的に上がることも明らかにしました。
カリコ博士らは、基礎医学の発展に寄与した功績が認められ、ノーベル賞受賞者も多く受賞しているアメリカの医学賞、ローゼンスティール賞を2020年に受賞しました。
この賞の選考委員会で議長を務めるジェームズ・ヘイバー氏は「カリコ博士らの研究はmRNAワクチンの開発にとって、最も重要なものだった。ウイルスとの闘いを根本から変える驚異的な成果で、今後はこの技術を使って多くのワクチンが迅速に作り出されるだろう」と評価しています。
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