2008年08月03日
生きる
命短かし 恋せよ乙女
今日、黒澤明監督の「生きる」を見ました。
志村喬さん主演のこの映画。いつだったろ?黒澤映画ではないけど、まったく同じストーリーのドラマを観た記憶が僕にはあります。でも、いつだったんだろ?
そんなことを考えながら映画を観ていました。
いくら考えてもわからないのでネットで調べてみました。ありました。去年の9月にテレビ朝日系で放送された秋のスペシャルドラマ「生きる」。
そうか、あれは去年の話だったのか・・・・。
リメーク版「生きる」についての優良ブログ ⇒ 「日々の細道」
54年ぶりにリメークされた「生きる」。このドラマは、先に黒澤映画を観ていた方にはいろいろとツッコミを入れたくなるところも多かったようで、「ブログ:プラトンの洞窟」を書かれた方のように観るに耐えない、と批評する人も多かったみたいですね。この時はまだ黒澤作品の「生きる」を観ていなかったので、ある意味、救われていたのでしょうか(^^?
しかしオリジナルを観た今となっては、「プラトンの・・・」を書かれている方の気持ちは良くわかります。映画が好きな人にとって、リメークされた映画ほど観るに耐えないものはないでしょうから・・・
※もちろん例外はあります(^^♪
僕も、先に黒澤映画「生きる」を観ていたら、おそらく同じ感想を持ったと思います。とはいえ、松本幸四郎さんの演技もとても素晴らしいものだったと思っていますし、先にドラマを観ていたからこそ、今日の「生きる」を観ることが出来たんだと思っています。
渡辺勘治役の志村喬さん。素晴らしいですね。特に、目の演技?がすごい。演技というのか凄みというのか?すべてにおいて大人の映画を観たという気がします。また、小説家役で登場した伊藤雄之助さんと役所の部下・とよ役の小田切みきさんがとても素敵でした。
劇中で、志村さんが「ゴンドラの唄」を歌うシーンが2度あります。ひとつは、自分が癌であることを知り、自分の生きている意味がわからずに苦悩しているところで知り合った小説家によって、夜の繁華街をはじめて経験し、雑多で華やかな人々で溢れるクラブにありながらピアノの伴奏に合わせて歌うシーン。(このシーンで、いままで賑やかだったまわりの人たちが一気に引いていくところが印象的でした。)
もうひとつは、生きがいだった公園計画をやり遂げた後、雪の降る中でひとりブランコに揺られながら歌うシーン(この後、この公園で勘治は死ぬわけですが)。
同じ歌ですが、片や絶望の中で歌う声と、片ややり遂げた満足感の中で歌う声では、あきらかに声のハリが違っています。また、深夜の公園でブランコに揺られる勘治の姿を見た駐在が通夜の晩に焼香に訪れ、その時の勘治の姿が「楽しそうだった・・・」と告げたシーンと、喪主である息子(金子信夫さん)が父の気持ちに気がつくシーンにはジーンときました(まったく、気がつくのが遅いっつうの(T_T))。
生きがいを見つけだした勘治の後ろでハッピーバースデーが聞こえるシーンや本編の約3分の1が通夜の席でのシーンだったことも印象的で、まるで「12人の怒れる男たち」を観ているような気がしていました。
繰り返しになりますが、黒澤作品は大人の映画だって思い知らされた日となりました。
音楽が流れます ⇒ 「ゴンドラの唄」
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