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2023年09月28日
特捜最前線 登場人物コラム「特命課・高杉婦警」
今週は、ドラマ解説ではなく、ちょっとした小話を書きます。題して「登場人物コラム」。
登場するのは、特命課の高杉婦警です。
特捜最前線は、レギュラー刑事の交代が5年ほど無かった時代がありました。黄金期と言われることも多いですが、高杉婦警もその一人だったのです。
高杉婦警は、前任の玉井婦警の寿退職後、滝刑事(桜木健一)と同時期に配属されました。関谷ますみさん演じる高杉婦警は、カンコの愛称で親しまれました。
ただし、「太陽にほえろ」の女性事務員のようなマスコット的な存在ではなく、カンコは特命課の事務方として捜査の一端を担う女性警察官でした。
捜査の第一線に出ていくことも度々あり、当然ですが危険な目に遭うことも。神代課長(二谷英明)らの指示通りに捜査資料をそろえたり、捜査車両に乗り込んでサポートしたりと、実務能力に優れた人物だと言えます。
ともすれば、エリート色の濃い婦警になりがちなのですが、カンコの場合はコメディタッチの部分も乙女チックな部分も兼ね備え、特命課という男だけの殺伐とした空気のなかに、カンコが居るだけで華やいだ雰囲気を作ってくれました。
印象に残っている作品は、カンコが幽霊に悩まされながら事件に巻き込まれる「高層ビルに出る幽霊!」でしょう。この作品では、昭和の時代ならではの「視聴者サービス」のシーンもありましたね(笑)
私だけの特捜最前線→51「高層ビルに出る幽霊!〜婦警というプライドとも戦ったカンコの奮闘」
カンコは特捜前半期の滝刑事や津上刑事(荒木しげる)、後半期の時田刑事(渡辺篤史)や犬養刑事(三ツ木清隆)とも共演し、結婚退職となった降板回は杉刑事(阿部祐二)との入れ替えでした。
そうした点を考えれば、カンコは「特捜最前線の歴史を見てきた女性」ということにもなります。ちなみに初期設定では西田敏行さん演じる高杉刑事のいとこだったそうです。
関谷ますみさんは昭和の時代に青春ドラマなどに出演していた女優ですが、特捜最前線のカンコはまさに当たり役。その後、女優は引退されているようです。
今回のコラムはここまでといたします
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2023年09月21日
私だけの特捜最前線→97「豪華フェリージャック・恐怖の20時間!〜スケールの大きなロケを敢行した傑作」
※このコラムはネタバレがあります。
のっけから私事で恐縮ですが、今回紹介する「豪華フェリージャック・恐怖の20時間!」は、私が特捜最前線のDVDを見始めた最初の作品で、このドラマをきっかけに特捜の世界にのめり込んでいったのです。
このドラマは桜井刑事(藤岡弘、)さんの主役を予定していたそうです。藤岡さんがケガで降板し、紅林刑事(横光克彦)の主演作に差し替えられたと言われています。後ほど詳しく触れたいと思います。
間一髪、大惨事を防いだ特命課
ダイナマイト100キロが盗まれた事件の容疑者を追って、紅林刑事は長距離フェリー「さんふらわあ」に乗り込みます。そこで偶然、後輩の海上保安官(内田直哉)と再会しました。
一方、特命課には犯人からの脅迫電話がかかってきます。犯人は、東京湾に付き出した人工島「第二海堡」に海運業と商社の社長を立たせろと指示を出し、1000人の人質がいると告げたのです。
特命課の調べで、第二海堡近くの湾内で1年前に貨物船沈没事故があり、故意に沈められた疑いがあることが分かりました。二人の社長は、その貨物船の船主と荷主だったのです。
その頃、さんふらわあ号の紅林は犯人に拉致されてしまいます。男は貨物船の船長の息子で、復讐のために事件を起こしたのでした。ダイナマイトは船内に仕掛けられていますが、どこにあるか分かりません。
捜査の結果、犯人が乗っていた車にダイナマイトが仕掛けられていることがわかり、海上保安庁の船からのモールス信号をキャッチした海上保安官が、爆発寸前でタイマーを止めたのでした。
呆然とする男に、紅林は手錠をかけます。荷主に成りすまして第二海堡に立っていた神代課長(二谷英明)はじめ、特命課員全員が大惨事を未然に防ぎ安堵したのでした。
桜井刑事が出演していたら
このドラマの脚本はメインライターの長坂秀佳氏です。大型客船のシージャックというスケールの大きさと、実は単独犯による犯行だったという展開は、まさに長坂氏の真骨頂と言えるでしょう。
ただ、事件解決の肝になる部分でゲスト出演者の海上保安官が目立っていたのが少々気になりました。その理由を考えてみると「桜井刑事が降板したことによる代替措置」という結論にいきつくのです。
紅林の役どころは、もともと桜井が演じることになっていました。であるならば、特捜の流れからすると「海上保安官と一緒に行動する別の刑事がキャスティングされていたのではないか」というのが私の推察なのです。
例えば、クライマックスとなる爆弾をギリギリのところで止めるシーン。ドラマでは海上保安官がやりましたが、本来は特命課の刑事(おそらく紅林)の役どころではなかったかと思います。
そのほかにも「ここは刑事がやった方がいいなあ」というシーンが散見しました。ただ、モールス信号を解読する場面など、海上保安官あってのシーンもしっかりと組み込まれています。
これも推察ですが、おそらく長距離フェリーへのロケは、藤岡さんと横光さんだけがキャスティングされており、代替で他の刑事(吉野や津上)を入れられなかった・・・と勝手に妄想してしまいます(笑)
スケールの大きなロケ
この作品には、昭和の時代のドラマ作りは壮大だったことを感じさせられます。まず長距離フェリーを使ってのロケは、1時間のドラマにはもったいないくらいの贅沢ぶりです。
それに加えて、海上保安庁も全面協力し、東京湾海上交通センターのシステムを見せるだけでなく、保安庁の巡視船やヘリコプターまで出動する大掛かりなロケを行っています。
さらに、一般の立ち入りを禁止していた第二海堡(現在は国土交通省所有)でも撮影をしていますので、膨大な製作費と関係機関への協力要請があったのだろうと思われます。
私がこの作品を見たのは2021年4月のことでした。なぜ、この作品が収録されているDVD30巻を真っ先に購入したのかは、よく覚えていません。たぶん「試しに買ってみるか」くらいの感覚だったと思われます。
「豪華フェリージャック・恐怖の20時間!」と、その次の収録作「マニキュアをした銀行ギャング!」は、ともに長坂秀佳氏脚本のドラマ。最初から傑作に巡り合えたのが、のめり込むきっかけになったのでしょうね。
私だけの特捜最前線→79「マニキュアをした銀行ギャング!〜叶刑事が女革命家との知恵比べに挑む」
ドラマで重要や役割となった海上保安官役の内田直哉さんは、声優として数多くのアニメや吹き替えなどに出演しており、現在も活躍中です。
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2023年09月14日
私だけの特捜最前線→96「子供の消えた十字路〜追い詰められたおやっさんの葛藤を描いた名作」
※このコラムはネタバレがあります。
今回は特捜最前線の前期ドラマのなかでも傑作の一つと言われる「子供の消えた十字路」を紹介します。おやっさんこと船村刑事(大滝秀治)の葛藤を描いたスリリングな展開のドラマです。
交通事故に遭った少年が行方不明
船村刑事は、自転車に乗った少年が車とぶつかる交通事故を目撃します。運転していた男(秋元羊介)は少年を抱えて車に乗せて走り去ります。船村ら目撃者たちは「病院に連れて行ったんだな」と安堵したのです。
ところが、どの病院にも少年が担ぎ込まれたという報告はありません。少年を連れ去った車と男の目撃証言を取ろうとしますが、証言はまちまちで犯人像が絞れません。船村ですら思い出せなかったのです。
少年はいったん、救急病院に運ばれましたが、病院が準備を整える前に男は少年を抱えて立ち去っていました。ケガの状態を見た医師から命が助かるタイムリミットを聞いた特命課は、全力で消息を追います。
一方、少年が助からないと勝手に判断した男は、少年を廃車の中に隠してしまいます。男は、家族の悲願だった一戸建て住宅の契約をするため急いでおり、そのために救急救命措置を怠ったのでした。
特命課の懸命な捜査の結果、容疑者として男が浮かび上がります。否定する男に対し、事故現場で祈る母親の姿を見せながら、船村は「どうか坊やを死なせないでくれ」と懇願します。
男の自供で少年の行方が判明。工場でスクラップされる寸前の車の中から少年を救出することに成功します。船村は安堵するとともに、怒りを込めて男を一発殴りつけたのでした。
「何も思い出せない」苦悶のおやっさん
このドラマは、おやっさん(船村)が事故を目撃していながら、何も思い出せないという葛藤がテーマです。そこに少年の命というタイムリミットを重ね合わせ、いらだち、焦る船村の姿を描いています。
目撃者は「少年が病院に運ばれた」と思って安心してしまい、事故を起こした車や運転手の男のことを思い出せなくなります。21人の目撃者・・・いや船村を入れれば22人全員が同じでした。
刑事であるにもかかわらず、一般市民と同じく目撃証言ができない船村。少年の母親からは「どうして覚えてないんですか」と詰め寄られ、「何も思い出せないんだよ」と苦悶の表情を浮かべます。
「練馬ナンバーだった」という少年の証言を得て、該当する800台の車の持ち主に片っ端から電話をかけまくる特命課。だが時間は過ぎ去っていくばかり。船村は耐えきれず、部屋を飛び出してしまいます。
神代課長は、ムダな作業だということは百も承知でした。そのうえで「一番苦しいのはおやっさんだ。おやっさんに記憶を取り戻してもらうしかない」と、刑事たちに真意を語ったのです。
現場に戻ったおやっさんが、あるきっかけを得て車のナンバーの一部をついに思い出します。それから捜査は一気に進展し、容疑者の特定、そして少年の救出へとつながっていくのです。
長坂脚本と大滝秀治さんの名演技
ドラマは、長坂秀佳脚本の真骨頂とも言えるような非常にメリハリがあるスピーディーな展開。少年の命というタイムリミット、そしてスクラップ工場でのピンチと、スリリングなままエンディングまで突き進みます。
ドラマの中盤からは事故を起こした男と、その家族にもスポットを当てています。男は根っからの悪人ではなく、予期しなかったアクシデントに右往左往する小心者として描かれています。
マイホームという自分と家族の夢を裏切れない・・・男にも葛藤がありました。だからといって、ケガを負った少年を連れまわし、挙句の果てに放置した行為は絶対に許されるものではありません。
救出された少年は桜井刑事(藤岡弘、)らが病院へと運びます。ドラマでは少年の命が救われたのか、手遅れだったのか、そこまでは描いていません。それが船村のラストのセリフにも表れています。
「生きてくれ、生きてくれと念じつつ、私は噴き上げる怒りを鎮めることなどできなかった」。その怒りの大部分は男に対してでしょうが、思い出すのに時間がかかった自分への怒りも含まれていたと思います。
人間ドラマも散りばめた長坂脚本は見事の一言に尽きますが、60分のストーリーの中で喜怒哀楽を縦横に演じ切った大滝秀治さんは、やはり名優だなと思わずにはいられませんね。
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2023年09月07日
私だけの特捜最前線→95「殺人伝言板・それぞれのクリスマス!〜人間ドラマを最後に束ねていく塙脚本の妙」
※このコラムはネタバレがあります。
今回紹介する「殺人伝言板・それぞれのクリスマス!」は、特捜最前線のメインライターの一人で、独特の人間ドラマを描く塙五郎氏の脚本。塙ワールド全開とも言えるような味のある作品です。
クリスマスイブの殺人事件
クリスマスイブの夜、デートに向かう滝刑事(桜木健一)の車に若い女が飛び込もうとしました。女は訳ありのようで、目を離せなくなった滝は、結局一晩中、女に付き合わされてしまうのです。
同じ頃、新宿駅地下道で中年男性が何者かに撲殺される事件が発生。近くには伝言板があり、事件前後に伝言板に書き込みをした人が目撃している可能性があるとして、特命課は伝言を一つずつ調べていきます。
一方、滝は女から「実は私もデートをすっぽかしたの」と打ち明けられます。女は前夜知り合ったトラック運転手と待ち合わせをしていました。滝は「きっと連絡が来るから」と、女を家に帰したのでした。
特命課の捜査で、伝言板の近くで若い男が誰かを待っていたことが判明。その男が書いたと思われる伝言を見て「今日も現れる可能性がある」とみた特命課は、現場周辺の張り込みを開始します。
そこに現れたのは、滝を連れまわした女・・・そして、女がデートをすっぽかしたトラック運転手こそが犯人だったのです。しかも運転手は、桜井刑事(藤岡弘、)が逮捕したことがあった青年だったとは・・・
青年は、酔ってぶつかってきた中年男性に女へのプレゼント用のケーキを落とされ、罵られたためにカッとなって撲殺してしまった・・・というのが、ドラマの本筋部分にあたるストーリーです。
「小ネタ」満載のストーリー
このドラマは本筋以外のところに小さなサイドストーリーがたくさん散りばめられています。それがゴチャゴチャにならず、一本の線としてクライマックスへとつながっていくのが塙脚本の妙と言えるでしょう。
桜井刑事と青年との関係では、青年が祖母と二人暮らしという設定とし、更生の道を歩き始めていた青年が再び犯罪を犯してしまい、桜井は新たな悲しみを抱えるであろう祖母へのやるせない思いを表情に浮かべています。
目撃者探しでも「小ネタ」を入れています。近くでおもちゃを売っていた男性は、橘刑事(本郷功次郎)らが事情を聞きに自宅を訪ねたら、孫を道連れに自宅に放火して無理心中を図ろうとしていました。
紅林刑事(横光克彦)が張り込んでいた連れ込み旅館にいた男は、警察手帳を見せた途端、逃げ出したので取り押さえられます。実は伝言板を使って、覚せい剤の取り引きをしていたのでした。
事件発覚前、自宅にいた津上刑事(荒木しげる)は、酔って帰ってきた妹に説教をし、妹と喧嘩になってしまいます。捜査中もつい、妹のことが気がかりで仕方なく、なかなか身が入りません。
唯一、ドラマで「滑稽役」となったのが吉野刑事(誠直也)。目撃者だと言い張る浮浪者に絡まれ、目撃者探しでは「メリーさん」という名の男性?にビックリさせられ・・・という感じです(笑)
特命課刑事たちの人間ドラマ
人間ドラマという点では、津上刑事と妹だけでなく、橘刑事や神代課長(二谷英明)の家族にも触れています。ドラマの本筋とは直接関係ありませんが、とても印象に残る場面が続きました。
事件発覚前に吉野刑事とスナックにいた橘は、手に息子の名前が刻まれた万年筆を持っていました。クリスマスプレゼントとして送ったものの、息子から送り返されてしまったのです。
この回想シーンで、橘と息子・信一とのすれ違いを描いた「死体番号 044の男!」の一場面が流れました。橘が信一と和解できるようになるのは、まだまだ先の話になります。
神代課長の回想・・・それは愛娘の夏子でした。神代は夏子からプレゼントをもらった思い出とともに、目の前で夏子が凶弾に倒れた場面も思い浮かべてしまいます。これも回想シーンで流されました。
津上刑事と妹では、事件解決後に笑顔で電話をするシーンが描かれました。実はこのドラマの3作後に津上刑事殉職編が放送されています。それを考えると、非常にせつないシーンを見せつけられた気がします。
そしてドラマで一応主役だった滝刑事。実は滝がすっぽかしたデートの相手とは、何とカンコこと高杉婦警(関谷ますみ)だったのです。ただし、下心があった滝とは違い、カンコは「美味しいもの目当て」でしたが。
事件を知らずに翌日の朝出勤した滝に対し、カンコはブンむくれで冷たい態度を取ります。しかも神代から「私も美味しいものを食べさせてもらいたいな」と言われる始末・・・カンコにチクられてしまったのでした(笑)
ドラマのBGMで使われていたのは、アリスの名曲「帰らざる日々」でした。「バイバイバイバイ・マイラブ」のメロディーが人間模様とマッチしていて、ドラマを一層印象深いものにしています。
ラストは街中でクリスマスツリーが片付けられ、特命課ではカンコが鏡餅を備えるシーン・・・辛い思い出ばかりのクリスマスよバイバイ、笑顔で新しい年を迎えましょうという演出。珍しく「後味がよかった」ですね。
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