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2017年04月13日

アガサ・クリスティから (124) (ミス・マープルと十三の謎*血に染まった敷石【8】)






(ミス・マープルと十三の謎*血に染まった敷石【8】)






ずっと向こうの方からキャロルと呼ばれていた女性が崖道に沿って歩いて来た。
彼女は急いでいた。






彼女は岩の灰色を背にして、まるで真っ赤な毒花のように見えた。
帽子もまるで血の色で・・・。







ジョイスは頭に血がのぼり、変な考えが思い浮かんでくるのだと思い、体をゆさぶり、なんとか,
それを払しょくしようとしていた。






少し経って、その女の車が出ていく音が聞こえた。






彼女もデニス夫妻のようにペンリザーに行くのかなあと思っていたが・・・車は反対方向の左に曲がった。
ジョイスは、車が丘をはい上がっていき姿を消すまでじっと見送った。
やがて、それは見えなくなり・・・ラソールの村は再び静かなまどろみのうちに戻ったようだった。
ジョイスは何故か、ほっとした気持ちになった・・・。







ジョイスが話を切ると、レイモンドは口をはさんだ。






「それでおしまいなら、早速意見をいうがね、消化不良だよ。食事の後で、目に、ありもしない斑点がちらついたんだ。」






「これでおしまいじゃないのよ。続きを聞かなきゃ。」
ジョイスは答えた。

「二日後の新聞で、『海水浴の犠牲』という見出しが出ましたの。それを読んだら、デークル夫人、つまりキャプテン・デニス・デークルの妻は不幸にも海岸のはずれのランディア湾で溺死したということだったんです。」


ジョイスは記事の内容を皆に話した・・・。

夫人とその夫はそこの旅館に滞在中で、海水浴の予定だったが、冷たい風が吹き出したので、キャプテン・デクールは泳ぐには寒すぎると言い、旅館の他の客と一緒に近くのゴルフ場に出かけた。

デークル夫人は自分は寒くないと言って、一人で湾に行ったが帰ってこない。
それで夫は驚き、仲間と一緒に海岸に行ってみた、岩のそばに彼女の服が脱いであったが、その不幸な夫人の姿はなかった・・・と記事にはあった。

死体はそれから一週間ほど経って、少し離れた海岸に打ち上げられた。
死ぬ前に受けたと思われる打撲傷が頭にあったが、これは水の中へ飛び込んで岩に頭をぶつけたのだろうという説だった。







ジョイスは言った・・・「どう考えても、私にはっきりしているのは、彼女は私が血痕をみた時から24時間後に死んだのだろうということなんです。」







(次号に続く)




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