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2017年03月04日

アガサ・クリスティから (99) (ミス・マープルと十三の謎*金塊A)







(ミス・マープルと十三の謎*金塊A)






「ラソールっていう小さな漁村よ、まさかあなたの話と同じ村じゃないでしょうね?」







「違うよ、僕の話の村はポルぺランというんだ・・・。」

レイモンドの話では、そこはコーンウォールの西海岸にある荒れた岩だらけの土地のようだった。






彼は、その二〜三週間前に人の紹介でニューマンという男と出会った。
ニューマンは実に面白い男で、頭もよく切れて、楽に暮らせる身分を持ち、それにあわせて、ロマンティックな空想を持っていた。
彼の道楽で、ポル・ハウス(ポーランドづくりの家)を借りていたようだ。






レイモンドは話を続けた。

「その男はエリザベス朝時代(エリザベス1世の昔の時代のこと)にかけては、たいした専門家で、スペイン無敵艦隊の総崩れのことなど、まざまざと手に取るような話っぷりで僕に話してくれましたっけ。まるでその場面を目撃したかのように心を込めてね。この世には生まれ変わりということがあるのかな。・・・本当にそんな気がするんです。」






「あんまりロマンティックすぎますよ、レイモンド」
叔母でもあるミス・マープルが彼の方を優しく見た。





「僕はロマンティックの”ロ”の字ももってませんよ。」
レイモンドは慌てて、打ち消した・・・少し、気を悪くしたのだ。






しかし、ニューマンという男は総身ロマンティックというような男だった。
それゆえに、過去の不思議な生き残りのようで、レイモンドは興味を惹かれたのだ。







無敵艦隊の所属のスペインの一艘の船が、スパニッシュ・メインから大量の金塊を乗せてきて、コーンウォールの海岸の有名な難所・蛇岩に乗り上げて難破したという。
皆がこぞって、その船を引き上げて財宝をものにしようと試みて来た・・・そのための会社も設立されていた。






ところが、結局、その会社が破産してしまったため、ニューマンはその事業の権利を安価で手に入れたという。






(次号に続く)




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