2014年04月21日
天秤のカネアイというところ
小山田筑前が口措くも大失敗を演じた原因は、中新田の城を乗取ろうとして掛ったところ、城将葛岡監物が案外に固く防ぎ堪えて、そこより一里内外の新田に居た主人義隆に援を請い、義隆が直ちに諸将を遣わしたのに本づくので、中新田の城の外郭までは奪ったが、其間に各処の城々より敵兵が切って出たからである。
譬えば一箇の獣と相搏って之を獲ようとして居る間に、四方から出て来た獣に脚を咬まれ腹を咬まれ肩を攫み裂かれ背を攫み裂かれて倒れたようなものである。氏郷は今それと同じ運命に臨まんとしている。何故といえば氏郷は中新田城に拠って居るとは云え、中新田を距ること幾許も無いところに、名生の城というのがあって、一揆が籠っている。小さい城では有るが可なり堅固の城である。氏郷が高清水の方へ進軍して行けば、戦術の定則上、是非其の途中の敵城は落さねばならぬ。其名生の城にして防ぎ堪えれば、氏郷に於ける名生の城は恰も小山田筑前に於ける中新田の城と同じわけになるのである。しかも政宗は高清水の城まで敵の城は無いと云ったのであるから、蒲生軍は名生の城というのが有って一揆が籠って居ることを知らぬのである。されば氏郷は明日名生の城に引かかったが最期である、よしんば政宗が氏郷に斬って掛らずとも、傍観の態度を取るだけとしても、一揆方の諸城より斬って出たならば、蒲生勢は千手観音でも働ききれぬ場合に陥るのである。
ワクワクメール
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