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2014年07月01日
招待の意味を覚った
当日一同が打ち解けた席上で、もう一度今日の話をくり返して恥の上塗りをしなければならぬ事を知りつつ、どうしても後へ退けない事を覚悟した。
 私が承諾した意味を答えると、樫尾大尉は巨大な体躯を傾けて一礼しつつ、辞し去ろうとした。するとその時に嬢次少年は私の背後の机の下の暗い処から、黒いボックス皮の手提鞄を取り出して、中に詰まっている絵葉書を掻き廻していたが、やがてその底の方から、四角に折った薄い新聞包を取り出すと、帰りかけた樫尾大尉を追かけるようにして、無言のまま手渡しした。

受け取った樫尾大尉は、半身を振り返らしたまま不審そうに少年の顔と新聞包を見比べた。
「何ですか……これは……」
 少年は化粧したままの顔で微笑した。
「これは米国の参謀本部で作った日本地図の青写真の写しです。秘密の石油タンクのあり家を予想して赤丸を附けてあるのです」
「ホー。どうしてそんなものがお手に入りましたか」
 と云ううちに流石の樫尾大尉も昂奮したらしく顔を赤くした。
「それを手に入れようと思って随分苦心したのですが……帝国ホテルにも曲馬場にもなかったのですが」
 嬢次少年も顔を染めた。
「……バード・ストーン団長が持っているのを、市俄古から桑港まで来る汽車の中で盗み出して写したのです。寝間着を着た貴婦人に化けて寝台車に這入って、団長の化粧品箱の中から盗み出して、便所でレターペーパーを十枚程使って透き写しをしたのですから、とても判然り難いでしょうと思うんです。けども専門家の方が御覧になったら、あらかたの見当はお付きになるだろうと思いましたから……」
 樫尾大尉は深くうなずきながら、私達を見まわしつつ、新聞包をポケットに納めた。
三鷹 歯医者
Posted by salchan at 22:59 | この記事のURL
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