2014年06月25日
デパートのアドバルーン広告
白い建物がはっきりと、しかし逆さまに浮かぶ。そうか、左右も逆になっているのかと、僕は気が付く。その少し上に古い駅のホームがあり、そこに至る線路が二本、上の方に延びていく。たくさんの線路が入り組む操車場のあたりは複雑すぎてわけが分からない。
一台の貨物車が線路にぶら下がりながら、下から上に走り抜けていく。そして画面のいちばん上のあたりに〈緑橋〉のアーチの一部が写り、画面真ん中の一番上に、こちらを向いて何だか不安そうに立っているオサムのちっぽけな姿が逆さまにはりつけられている。それは、この町の逆立ちした風景画を背景にピンで逆さ吊りにされたコオロギの標本のようだった。
「お分かりですか。これが時間の標本箱です。いつ眺めても飽きません」
老人が黒い布の外から小さな声で囁く。
「この中に閉じ込められたら最後、どうしたって出てこられるもんじゃあない。人も建物も、空に浮かぶ雲さえもねえ。と言って、別にボクがこの画面をこしらえたわけじゃあない」
暗闇から外に出てみれば、当たり前の風景が当たり前に拡がっているだけで、そこでは逆だちしているビルなどひとつもないし、貨物車はレールの下ではなく、その上を走っている。オサムはやはりオサムで、コオロギではない。僕は軽い目眩を感じる。僕にはこの時あたりから、何かのマジックがかけられていたのかもしれない。
miq高田馬場店ホットペッパービューティー
「お分かりですか。これが時間の標本箱です。いつ眺めても飽きません」
老人が黒い布の外から小さな声で囁く。
「この中に閉じ込められたら最後、どうしたって出てこられるもんじゃあない。人も建物も、空に浮かぶ雲さえもねえ。と言って、別にボクがこの画面をこしらえたわけじゃあない」
暗闇から外に出てみれば、当たり前の風景が当たり前に拡がっているだけで、そこでは逆だちしているビルなどひとつもないし、貨物車はレールの下ではなく、その上を走っている。オサムはやはりオサムで、コオロギではない。僕は軽い目眩を感じる。僕にはこの時あたりから、何かのマジックがかけられていたのかもしれない。
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