2014年06月25日
旧式の大型カメラ
僕は気がつく。学校の行事で記念写真を撮る時のカメラマンを思い出したのだ。
「よし、そっちの太った方の坊や」
かがみ込んでいた老人が指さし、耳障りに高く響く声で叫ぶ。オサムだった。
「今度はあんたひとりを撮りますよ。風景の力を撮影しているんですからね、私は。人物は点景なんですから力む必要はありません。もうひとりの子は、見たかったらこちらにおいで」
「よし、そっちの太った方の坊や」
かがみ込んでいた老人が指さし、耳障りに高く響く声で叫ぶ。オサムだった。
「今度はあんたひとりを撮りますよ。風景の力を撮影しているんですからね、私は。人物は点景なんですから力む必要はありません。もうひとりの子は、見たかったらこちらにおいで」
突然のことに不服そうな表情のオサムを後に残して僕は老人の方へ走り寄る。老人は、暑い日差しにもかかわらず皮ジャンパーを着こみ、首のところまでファスナーを上げている。そしてその上から黒い布をすっぽりと被り、オサムに向けたレンズをしきりに調整している。
「この町の子ですか」
黒い布を被ったまま、老人が普通の声で尋ねる。オサムには聞こえない。
「そうだよ」
「この橋が好きですか」
「嫌いじゃないよ。でも別に尊敬してはいない」
僕はありのままに答える。
「フォッ、フォッ、フォッ……」
老人がくぐもったような声で笑った。
上りと下りの二本の列車が同時に線路を通り過ぎ、橋がかすかに揺れる。老人の背は低く、僕とたいして変わらない。黒布越しに見える真っ黒に日焼けした顔には深い皺が何本も刻まれていて、顔もまるで鳥のようだと思った。その目は鋭い鷹のようだった。
「さ、見てごらんなさい。これが今日のラスト・ショーです」
僕は老人がやっていたように黒い布を両手で支え、暗闇の中に頭を突っ込ませる。強い皮の匂いが鼻をつく。どうやらそこには刷りガラスがあるらしいのだけれど、最初は見当が付かない。真っ暗で何も見えないし、どうやって見るのかも分からない。
高田馬場 整体
「この町の子ですか」
黒い布を被ったまま、老人が普通の声で尋ねる。オサムには聞こえない。
「そうだよ」
「この橋が好きですか」
「嫌いじゃないよ。でも別に尊敬してはいない」
僕はありのままに答える。
「フォッ、フォッ、フォッ……」
老人がくぐもったような声で笑った。
上りと下りの二本の列車が同時に線路を通り過ぎ、橋がかすかに揺れる。老人の背は低く、僕とたいして変わらない。黒布越しに見える真っ黒に日焼けした顔には深い皺が何本も刻まれていて、顔もまるで鳥のようだと思った。その目は鋭い鷹のようだった。
「さ、見てごらんなさい。これが今日のラスト・ショーです」
僕は老人がやっていたように黒い布を両手で支え、暗闇の中に頭を突っ込ませる。強い皮の匂いが鼻をつく。どうやらそこには刷りガラスがあるらしいのだけれど、最初は見当が付かない。真っ暗で何も見えないし、どうやって見るのかも分からない。
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