2024年05月05日
政治・経済 【過去問から学ぼう:第3回】
前回と続きで、「大学入学共通テスト」から学んでいきましょう。
設問1
国の法制度(A)や地方自治体(B)に関心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取り組みについて調べている。
かつて、K寺の門前町として栄えたJ市(C)には、多くの観光客が訪れており、K寺はJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道といsての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前には空き家(D)などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、地元の農産物(E)を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開しているのが分かった。
空き家等活用事業:
空き家等を活用し、店舗やカフェ、民泊などの施設として利用する場合に、改修費や設備費を補助するとともに、長期的な安定経営をめざし、経営指導員による継続的指導を行う。
歴史的街なみ整備事業:
K寺周辺地区の歴史ある街なみを保全し、伝統と文化が感じられる景観を形成することを目的に、まちづくり協定で規定する範囲の景観の整備に対する助成を行うとともに、道路の美装化を進める。
生徒たちはとくに空き家などの活用に関心を持ち、空き家や民泊(F)に関する法律(G)についても、立法過程(H)を含め、調べてみることにした。
問3 下線部Cに関連して、J市とK寺のかかわり合いに関心がある生徒Yは、「政治・経済」の授業で学習した政教分離原則のことを思い出し、政教分離に関する最高裁の判例について調べてみた。最高裁判所の判例に関する次の記述ア〜ウの内、正し神道いものはどれか。
ア 津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教活動にあたるとされた。
イ 愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
ウ 空知太神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に私有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
さて、ここで問題は「憲法で禁止されている、宗教団体への行為は何か?」というものです。
詳しくは、前回の記事下部に書いた、「日本国憲法」をみていただければと思います。
(以下に、この設問に関する部分を示します)
≪第20条≫ 信教の自由
「信教の自由は、何人に対してもこれを保証する。いかなる宗教団体も、国からの特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」(第20条第1項)
「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」(第20条第3項)
≪第89条≫ 公金の使用用途
「公金その他の公の財産は、住協上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない。」
上の3つが、政教分離を争うことになる根拠条文になります。
アについては、「神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行った」という部分がどうか
イについては、「県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出した」という部分がどうか
ウについては、「市が神社に私有地を無償で使用させていた」という部分がどうか
詳しくは、また別途説明しますが、答えはイとウが正しい(最高裁で違憲判決が出ている)ものとなります。
ここからは、個別に各訴訟をみてみましょう。
〇津地鎮祭訴訟
津市の体育館建設起工式で、市の職員が式典の進行係となり、大市神社の宮司ら4名の神職主宰のもとに地鎮祭を行った
↓
知鎮祭の挙式費用として、公金から「7,663円」を支出した
↓
この支出が違憲ではないか、と裁判になった。
知鎮祭は、家や建物を建てる際に、一般の人でも行うことがある、工事の無事を祈願するための儀式。
特別な催しではなく、この行為が政治と宗教の分離に違反しているとは言えないとして「合憲」とされた。
このとき示されたのが「目的効果基準(行為そのものが宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる)」というものです。
〇愛媛玉ぐし料訴訟(愛媛県靖国神社玉串料訴訟)
当時の愛媛県知事が、1981年から1986年までの間、神社が主催する催しに対して、公金から玉串料、献灯料又は供物料を支出していた。
↓
1審は違憲、2審は合憲となったが、最高裁では違憲となった。
↓
「目的効果基準」に照らし合わせ、特定の団体が主催する宗教色の強い催しに対して公金から支払うのは政教分離に反するとされたもの
〇空知太神社訴訟(砂川政教分離訴訟)
砂川市にある2つの神社に対して行われた訴訟(富平神社・空知太神社)
↓
前者は、市所有地に神社が鎮座している違憲状態を解消するために、町内会に無償譲渡したので、「合憲」
後者は、町内会に市所有地を無償貸与していたが、その敷地内に鳥居や祠が建てられ、政教分離の原則に違反しているとされ「違憲」
設問1
国の法制度(A)や地方自治体(B)に関心がある生徒Xと生徒Yは、自分たちが住むJ市のまちづくりの取り組みについて調べている。
かつて、K寺の門前町として栄えたJ市(C)には、多くの観光客が訪れており、K寺はJ市の重要な観光資源となっている。市の中心市街地は、駅からK寺へ至る表参道といsての中央通りを中心に発展してきた。駅前には大型店舗が集まり、表参道には個人商店が軒を並べている。また、K寺の門前には空き家(D)などをリノベーションした店舗やカフェが多数立地し、地元の農産物(E)を加工した食品を販売している。
生徒たちがJ市のWebページを調べたところ、市が「市街地活性化プラン」を策定し、次のような事業を展開しているのが分かった。
空き家等活用事業:
空き家等を活用し、店舗やカフェ、民泊などの施設として利用する場合に、改修費や設備費を補助するとともに、長期的な安定経営をめざし、経営指導員による継続的指導を行う。
歴史的街なみ整備事業:
K寺周辺地区の歴史ある街なみを保全し、伝統と文化が感じられる景観を形成することを目的に、まちづくり協定で規定する範囲の景観の整備に対する助成を行うとともに、道路の美装化を進める。
生徒たちはとくに空き家などの活用に関心を持ち、空き家や民泊(F)に関する法律(G)についても、立法過程(H)を含め、調べてみることにした。
問3 下線部Cに関連して、J市とK寺のかかわり合いに関心がある生徒Yは、「政治・経済」の授業で学習した政教分離原則のことを思い出し、政教分離に関する最高裁の判例について調べてみた。最高裁判所の判例に関する次の記述ア〜ウの内、正し神道いものはどれか。
ア 津地鎮祭訴訟の最高裁判決では、市が体育館の起工に際して神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行ったことは、憲法が禁止する宗教活動にあたるとされた。
イ 愛媛玉ぐし料訴訟の最高裁判決では、県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出したことは、憲法が禁止する公金の支出にあたるとされた。
ウ 空知太神社訴訟の最高裁判決では、市が神社に私有地を無償で使用させていたことは、憲法が禁止する宗教団体に対する特権の付与にあたるとされた。
さて、ここで問題は「憲法で禁止されている、宗教団体への行為は何か?」というものです。
詳しくは、前回の記事下部に書いた、「日本国憲法」をみていただければと思います。
(以下に、この設問に関する部分を示します)
≪第20条≫ 信教の自由
「信教の自由は、何人に対してもこれを保証する。いかなる宗教団体も、国からの特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。」(第20条第1項)
「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」(第20条第3項)
≪第89条≫ 公金の使用用途
「公金その他の公の財産は、住協上の組織若しくは団体の使用、便宜若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない。」
上の3つが、政教分離を争うことになる根拠条文になります。
アについては、「神社神道固有の祭式にのっとり地鎮祭を行った」という部分がどうか
イについては、「県が神社に対して公金から玉ぐし料を支出した」という部分がどうか
ウについては、「市が神社に私有地を無償で使用させていた」という部分がどうか
詳しくは、また別途説明しますが、答えはイとウが正しい(最高裁で違憲判決が出ている)ものとなります。
ここからは、個別に各訴訟をみてみましょう。
〇津地鎮祭訴訟
津市の体育館建設起工式で、市の職員が式典の進行係となり、大市神社の宮司ら4名の神職主宰のもとに地鎮祭を行った
↓
知鎮祭の挙式費用として、公金から「7,663円」を支出した
↓
この支出が違憲ではないか、と裁判になった。
知鎮祭は、家や建物を建てる際に、一般の人でも行うことがある、工事の無事を祈願するための儀式。
特別な催しではなく、この行為が政治と宗教の分離に違反しているとは言えないとして「合憲」とされた。
このとき示されたのが「目的効果基準(行為そのものが宗教的意義をもち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になる)」というものです。
〇愛媛玉ぐし料訴訟(愛媛県靖国神社玉串料訴訟)
当時の愛媛県知事が、1981年から1986年までの間、神社が主催する催しに対して、公金から玉串料、献灯料又は供物料を支出していた。
↓
1審は違憲、2審は合憲となったが、最高裁では違憲となった。
↓
「目的効果基準」に照らし合わせ、特定の団体が主催する宗教色の強い催しに対して公金から支払うのは政教分離に反するとされたもの
〇空知太神社訴訟(砂川政教分離訴訟)
砂川市にある2つの神社に対して行われた訴訟(富平神社・空知太神社)
↓
前者は、市所有地に神社が鎮座している違憲状態を解消するために、町内会に無償譲渡したので、「合憲」
後者は、町内会に市所有地を無償貸与していたが、その敷地内に鳥居や祠が建てられ、政教分離の原則に違反しているとされ「違憲」
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