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2023年06月15日
心の機微は面倒だから。 「地先」 乙川優三郎
再読。
知的レベルの高い小説ほど
うねりのある物語性は低く、
人生の断片を切り取った憂い、
心の機微、哀感といったものを
描く傾向にある。
’
いわゆる純文学系といわれるやつだ。
僕も太宰、梶井にどっぷりの少年、
青年期だったから、純には弱い。
けれど手前で働き、飯を食うように
なって、文芸より、演芸に気持ちが動いた。
人生に対して正味、な感じがしたからだ。
’
そして今、この両方を味わせてくれる
ものを求めてる。
この本は、まさしくそんな一冊。
上質な文学の香りの奥に、情緒が滲む。
’
人生の後半に差し掛かった男と女が
織りなす人間模様を静謐に描き、
心の機微を行間に記す。
’
僕は普段の生活は、人の心の綾を感じない
ようにしている。
なぜなら、面倒だし、つらいから。
なるべく、のほほんと、湯上りのような顔を
して、「アホやから難しいことはわからへん」と
暮らしたい。
’
だからこそ小説には機微を求める。
そんな矛盾だらけの僕を、
乙川さんは確実に射止める。
大人にしかわからない珠玉の短編集です。
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2023年06月14日
Netfflixで再び。「さかなのこ」
「南極料理人」、「モリのいる場所」の
沖田修一監督が、また素敵な
ハートフルコメディを作って
くれました。
さかなクンの自伝的エッセイを
もとに、子どもの頃から
さかな大好き一直線で育った主人公ミー坊を
女優ののんさんが演じているんですが、
もうナイスキャスティング。
天真爛漫な笑顔に癒されます。
オープニングで出てくる
「男か女かはどっちでいい」の
コピーどおり、とても自由な空気が
流れている映画で、
勉強のできないミー坊に苦言を呈す
先生に対し、「この子はこのままでいいんです」
と魚好きを褒めるお母さん(井川遥)に
ほろりとさせられ、
笑ったり笑ったり笑ったり、ちょっと泣いたりと
139分ずっと楽しかったです
映画館ハシゴの巻
映画2本
「逃げきれた夢」
’
北九州オールロケ、光石研さん主演、
カンヌと聞けば、行かなきゃ。
みんな同じ思いか、小倉では
珍しくほぼ満席。
さて、感想は。
うーん。
’
「岸辺露伴、ルーヴルへ行く」
’
むかーし、5日間通ったルーヴル美術館ロケと
聞き、楽しみに鑑賞。
なかなかと登場しないパリ、ルーヴルにいらいら。
あ、やっと出てきたと思い、美術館をしばし堪能。
さて、感想は。
うーん。
「逃げきれた夢」
’
北九州オールロケ、光石研さん主演、
カンヌと聞けば、行かなきゃ。
みんな同じ思いか、小倉では
珍しくほぼ満席。
さて、感想は。
うーん。
’
「岸辺露伴、ルーヴルへ行く」
’
むかーし、5日間通ったルーヴル美術館ロケと
聞き、楽しみに鑑賞。
なかなかと登場しないパリ、ルーヴルにいらいら。
あ、やっと出てきたと思い、美術館をしばし堪能。
さて、感想は。
うーん。
2023年06月11日
とぼけた同居人
調子が悪い時は
いつもクールに、
とぼけた顔して
なぐさめてくれる
我が家の同居人、
うそ吉でーす。
いつもクールに、
とぼけた顔して
なぐさめてくれる
我が家の同居人、
うそ吉でーす。
親父と重なって……。「さようなら、コダクローム」
Netfflixオリジナル作品。
コダクロームとは、コダックが
世界で最初に出したカラーフィルム
のこと。
疎遠だった父と息子が旅をするなかで
徐々に心を通わせあっていく、
ロードムービーだが、これがよかった。
’
父はガンで余命いくばくもない著名写真家、
初期の頃に取ったコダクロームの現像所が
廃止されるというので、付き添いの美人
看護師に頼まれ、現像のための
長いドライブ旅に出る。
’
首寸前の音楽プロデューサーの息子は
初めはかたくなに断っていたが、
人気バンドの契約が道中で出来ると知り、
いやいや同行する、という話だ。
’
地味な物語だが、父親のキャラが他人事
じゃない。
超自分勝手で、妻子をほったらかし
女とも寝放題、写真三昧で生きてきた。
’
貧乏絵描きのくせに借金を作り、
息子よりも先に家出をし、逃げ出した
僕の親父にそっくりなのだ。
当然息子は、父を許さない。
でも映画の父は、写真に関して
いいこと言うんだよねー。
’
フィルムのカメラで撮っている父に息子が
言う。
「デジタルで撮ればいいのに」
と父が答える。
「借り物のおっぱいを触ったことは?」
「何?」
「見た目がよくてもニセモノはニセモノだ。
最近は皆、写真をたくさん撮る。
何十億枚もだ。でも現像はしない。
データだけだ。
電子のチリだ。
後世の人が探しても写真は出てこない。
俺たちがどう生きたか、その記録はゼロだ」
’
なんとか間に合った現像所で
著名な父は、
写真家やファンたちに囲まれる。
そのときの彼のセリフがまたぐっとくる。
’
「俺たちは未知の時間ってものを怖がる。
時間がすべてを消していく。
だからこそ、我々の役割がある。
写真で時間を止め、瞬間を永遠にする」
’
やがて父を父親が撮った写真が現像される。
そこに写っていた彼の初期の作品たちとは
……。
’
アメリカの雄大な自然。
旅を続けていく中で起こるトラブルと
交流。そして恋。
’
男なら誰にもある父との葛藤が
切なく哀しく、ときにはユーモラスに
描かれている映画、心にしみる秀作です。
’
2023年06月10日
「消された信仰 ー最後のかくれキリシタン 長崎県・生月島の人々」 広野真嗣
もう15年前ぐらいになるのかな。
取材で行った長崎平戸で、かくれキリシタンが
祈りを捧げていたという小屋を覗いた。
部屋に入った途端、体中が震え涙が止まらなくなった。
仏様を模したマリア像、傷だらけの十字架、
目に入る全てのものに
反応してしまい、どうしようもなくなった。
'
以来僕の前世は「かくれキリシタン」だと思ってます。
悪友は、「違う。お前の前世はキリシタンを迫害した
役人のほうだ。 だから罪の意識で泣くのだ」
と言ってますが。
'
まぁそれはいいとして(笑)、とにかく僕は以来、
15年間ひとりで全国の
隠れキリシタンの郷を訪ね歩いているのです。
当然関連本も相当数読んでますが、今回の本は別格でした。
'
2018年に長崎は、「長崎と天草地方の潜伏キ
リシタン関連遺産」として、 世界遺産に登録されました。
ただこの中に、最後の隠れキリシタンといわれた
「生月島」の 名が消されているのです。
'それはなぜなのか。彼らの祈りの歴史は無視されたのか。
その真実を追求するのがこの作品で、
小学館ノンフィクション大賞を受賞しています。
'
作品によると、一般的に隠れキリシタンと
呼ばれるものには 迫害から身を守りひたすら
信者を続けた「潜伏キリシタン」と 、
生月島のように時代が変わっても和洋混合の
独特なキリスト教を 信じる人々がいる。
’
彼らのことはあえて「カクレキリシタン」と区別する
風潮が強くなっている。
世界遺産はその背景に物語がないと認められない。
どんな迫害にあっても神を信じ続けた
「潜伏キリシタン」の 関連施設のみ世界遺産にする。
したがってその物語に該当しない「生月島」の名は
消されてされてしまった。
でも著者はそれはおかしいのではないかという。
’
「弾圧を受けてもひたすらキリスト教を信じた
人々という 意味では生月島の人々も同じだ。
確かに独特の宗教ではあるけれど、
その思いを長崎県が受け止めず、もはやなかった
ようなものにするのには
大きな違和感がある」と訴えています。
’
その通りだと僕も思います。
近々、生月島、また行こうかな。
’
あたたかなレクイエム 「三文役者の死 正伝 殿山泰司」 新藤兼人
再読。
新藤兼人監督が、
独立プロ、近代映画協会を
一緒に立ち上げた盟友、
殿山泰司に贈る鎮魂歌的エッセイ。
二度目の読了だが、交友50年の重みと
愛情が詰まった名著だ。
’
「オレは頭が悪い三文役者じゃけ、何回も何回も
声を出して読まんとおぼえられんのよ。恥知らずな
こと書くなってんだ三文役者め」
というひとり突っ込み文体が最高の
殿山さんのエッセイを随所に引用しながら、彼の人となりを
著者は描いていく。
’
「タイちゃんが、突然人が変わったように痴呆状態に
堕ちこむ理由が分かった。おかあさんが恋しいのだ。
酒も女も母恋しさからくるのである。幼児生母から
離されたことが、よほどこたえたのだろう。その
突き刺さったトゲは、それこそタイちゃん流にいえば
ノーズイに深く刺さってしまったのだ」
’
「タイちゃんには社会の底辺に棲む弱者しか似合わない。
町工場のおっさん、ヤキトリ屋のおやじ、なまぐさい坊主、
いんちき祈祷師、大工、左官、一膳めし屋。
おでん屋お多幸の息子タイちゃんは、市井の名もなき
庶民の姿が一番似合った」
’
ジャズやミステリーをこよなく愛し、二人の女性の間を
アチラが立てばコチラが立たずと冗談を言いながら、
その実は優しくてどちらとも別れられない、気の小ささと
はっきりしない、煮え切らないところも、
「どうもどうものタイちゃん」と仲間から慕われた
名バイブレーヤー、殿山泰司。
’
一生かかっても僕にはなれない、憧れのひとりだ。
2023年06月09日
昨日から夢中になって観てる。 「村本大輔ドキュメント」
ウーマンラッシュアワーの村本さん
を追いかけたドキュメントが
YouTubeでシリーズになって
流れてる。
これが面白い!
’
テレビは毎年一回だけ、「THE MANZAI」のみに
出演し、あとはソロライブを続けている。
朝鮮、ニューヨークを始め全国各地で
彼は自分が疑問に思うこと、怒りを感じたことを
例の弾丸のような早口でまくしたて
笑わせる。
’
多分本来は繊細で優しい方なんだろう、
少しおびえながら、周りの反応をめちゃくちゃ
気にしながらも、世の中に突っ込む。
そのギャップも魅力的だ。
彼を観ると思う。
’
笑いはテレビでおきてるんじゃない
現場でおきてるんだ。
’
こちらが一回目のYouTube。
興味のある方はどうぞ。
2023年06月08日
芸人ってやっぱ、すげぇな。
オリラジの中田さんのYouTubeに
お笑い界が騒然。
松本人志さんに提言と題して、
「すべての賞レースの審査員を
し過ぎてる。そろそろ後輩に
ゆずってあげて。権力が集中
するのはよくない」といった
ことが発端で、先輩後輩入り乱れ、
中田さん批判が止まらない。
彼は今シンガーポールにいるので
日本にいる相方、藤森さんが
そのフォローに大わらわ。
というのが今展開されている
ストーリー。
で、これを受けてオリラジの二人が
緊急会議と称して、リモート対談を
やった。
これが超面白い。
炎上しても、誰になんと言われようと
軽やかに世の中を渡って
いく術を、この二人が教えてくれる。
人間関係に悩んでいる方は、必見かも(笑)。
「どうでもいい、日本は平和だねぇ」
なんて言わないでね。
面白くなくなるから。
「佐伯祐三展」 大阪中之島美術館 2023.6.25(日)まで。
BSの番組で彼の特集を観る。
小学校4年生のときだ。
父に連れられていった
久留米の石橋美術館で
「コルドヌリ(靴屋」という
絵を観て、動けなくなったことを
今でも覚えている。
父は貧乏絵描きだったが、
絵の良さ、芸術の素晴らしさを僕に
伝えようと、5歳ぐらいから、
毎年全国の美術館に連れていってくれた。
演劇やコンサートはもちろん、陶芸などは
可能な限り、窯元を訪ねて、焼き方や
色付けの仕方などのお話や工程を
見せてもらった。
’
だから10歳でもそれなりに
いろいろなものを観てるほうだと思うが、
佐伯の絵は異色だった。
激しいタッチ、なのにクールな佇まい、
多分ジャズを初めて聞いた感じ、といえば
一番近いかなぁ。
とにかく見たとたん、「かっこいいー」と
思った。
ちなみに絵を一番最初に好きになったのは、
5歳の時に観たルォーのピエロ。
これは「かなしい」と思った。
けれど佐伯ほどは興奮しなかったと記憶している。
ピカソ、マチス、ロートレック、ミロ、ドガ、
クレー、モジリアニ、有元利夫などなど、
好きな画家は、数えきれないほどいるが、
佐伯の描いたパリは、僕にとって、一番
かっこいい絵画だ。
でも絵ってすごいね。
少しの間、痛風の痛み忘れた。
現在、大阪中之島美術館にて、「佐伯雄三展」開催中。
https://nakka-art.jp/exhibition-post/saekiyuzo-2023/