2023年06月11日
親父と重なって……。「さようなら、コダクローム」
Netfflixオリジナル作品。
コダクロームとは、コダックが
世界で最初に出したカラーフィルム
のこと。
疎遠だった父と息子が旅をするなかで
徐々に心を通わせあっていく、
ロードムービーだが、これがよかった。
’
父はガンで余命いくばくもない著名写真家、
初期の頃に取ったコダクロームの現像所が
廃止されるというので、付き添いの美人
看護師に頼まれ、現像のための
長いドライブ旅に出る。
’
首寸前の音楽プロデューサーの息子は
初めはかたくなに断っていたが、
人気バンドの契約が道中で出来ると知り、
いやいや同行する、という話だ。
’
地味な物語だが、父親のキャラが他人事
じゃない。
超自分勝手で、妻子をほったらかし
女とも寝放題、写真三昧で生きてきた。
’
貧乏絵描きのくせに借金を作り、
息子よりも先に家出をし、逃げ出した
僕の親父にそっくりなのだ。
当然息子は、父を許さない。
でも映画の父は、写真に関して
いいこと言うんだよねー。
’
フィルムのカメラで撮っている父に息子が
言う。
「デジタルで撮ればいいのに」
と父が答える。
「借り物のおっぱいを触ったことは?」
「何?」
「見た目がよくてもニセモノはニセモノだ。
最近は皆、写真をたくさん撮る。
何十億枚もだ。でも現像はしない。
データだけだ。
電子のチリだ。
後世の人が探しても写真は出てこない。
俺たちがどう生きたか、その記録はゼロだ」
’
なんとか間に合った現像所で
著名な父は、
写真家やファンたちに囲まれる。
そのときの彼のセリフがまたぐっとくる。
’
「俺たちは未知の時間ってものを怖がる。
時間がすべてを消していく。
だからこそ、我々の役割がある。
写真で時間を止め、瞬間を永遠にする」
’
やがて父を父親が撮った写真が現像される。
そこに写っていた彼の初期の作品たちとは
……。
’
アメリカの雄大な自然。
旅を続けていく中で起こるトラブルと
交流。そして恋。
’
男なら誰にもある父との葛藤が
切なく哀しく、ときにはユーモラスに
描かれている映画、心にしみる秀作です。
’
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