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高坂圭
フリーランスの放送作家・脚本家、コピーライター として活動し、33年目を迎えました。 最近は、物語プランナーとして、ストーリーの力で ビジネスをアップするクリエイターとしても活動しています。
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2023年06月10日

あたたかなレクイエム 「三文役者の死 正伝 殿山泰司」  新藤兼人  


再読。  
新藤兼人監督が、
独立プロ、近代映画協会を
一緒に立ち上げた盟友、
殿山泰司に贈る鎮魂歌的エッセイ。
二度目の読了だが、交友50年の重みと
愛情が詰まった名著だ。 

「オレは頭が悪い三文役者じゃけ、何回も何回も
声を出して読まんとおぼえられんのよ。恥知らずな
こと書くなってんだ三文役者め」
というひとり突っ込み文体が最高の
殿山さんのエッセイを随所に引用しながら、彼の人となりを
著者は描いていく。

「タイちゃんが、突然人が変わったように痴呆状態に
堕ちこむ理由が分かった。おかあさんが恋しいのだ。
酒も女も母恋しさからくるのである。幼児生母から
離されたことが、よほどこたえたのだろう。その
突き刺さったトゲは、それこそタイちゃん流にいえば
ノーズイに深く刺さってしまったのだ」 

「タイちゃんには社会の底辺に棲む弱者しか似合わない。
町工場のおっさん、ヤキトリ屋のおやじ、なまぐさい坊主、
いんちき祈祷師、大工、左官、一膳めし屋。
おでん屋お多幸の息子タイちゃんは、市井の名もなき
庶民の姿が一番似合った」

ジャズやミステリーをこよなく愛し、二人の女性の間を
アチラが立てばコチラが立たずと冗談を言いながら、
その実は優しくてどちらとも別れられない、気の小ささと
はっきりしない、煮え切らないところも、
「どうもどうものタイちゃん」と仲間から慕われた
名バイブレーヤー、殿山泰司。

一生かかっても僕にはなれない、憧れのひとりだ。







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