・在来機のAMRAAM管制用RADAR/OFPは既にリリースされている可能性がある
・LOBLのみで運用しても、そのメリットは大きい
とある資格の試験勉強のためにすっかり更新が疎かになりました。。。相変わらずの管理人です(w
能力向上の対象にならなかった本邦のF-15在来機の約100機ですが、もし何処かの国で第二の人生を送るのならそれなりの能力向上が必要です。最も手っ取り早いのはAIM-120(AMRAAM)やAIM-9Xが使えることでしょう。
胴体下にAIM-120を装備したUSAFのF-15C
画像引用元: http://www.deagel.com/library2/ US Air Force Original work of the US Federal Government - public domain
さて、AIM-120の能力を生かすためには、初期・中期誘導の為に慣性データをデータバス(MIL-STD-1553B)経由でミサイルへ送信する必要があります。ミサイルはそれを頼りに目標へ向かい、途中で母機からUTDC(Up To Date Command)を受けて飛行コースを修正し、終末はミサイル自身のアクティブレレーダーシーカーにて目標を捉えます。
自分がAIM-120に間接的に触れたのはLAU-128ランチャーのマニュアルを見た時でしたが、そのマニュアル上でもAIM-120では発射前に機体から慣性データがミサイルに送信されて発射されるとの記述があります。
ご承知の通り在来機にはMIL-STD-1553Bデジタルデータバスが装備されておらず、これが在来機が能力向上の対象にならなかった一因にもなっています。ただ、在来機に何もデータバスが備わっていない訳ではなく、H009と言われるデータバスが実装されています。
これは電気電子学会(IEEE)のフェローであったErwin Carl 'Erv' Gangl氏によると、以下のようです。
When the initial F-15 design was found to exceed the required gross takeoff weight, hardware and functionality were trimmed as much as possible. But there was still a need to reduce the weight a couple hundred pounds more. So the lead engineer grabbed me and asked whether my idea of time-sharing wires would reduce the weight in cabling. I said, "definitely!" There would be weight savings due to fewer wires, fewer connectors, etc.
【訳文】
F-15 の初期設計が必要な総離陸重量を超えていることが判明した際に、ハードウェアと機能は可能な限りトリミングされました。しかし、さらに数百ポンド軽量化する必要がありました。そこで主任エンジニアは私を捕まえて、ワイヤをタイムシェアリングするという私のアイデアがケーブル配線の重量を軽減するかどうか尋ねました。私は「間違いなく!」と言いました。ワイヤやコネクタの数が減るため、重量が軽減されます。
引用元: AVIATION TODAY
https://www.aviationtoday.com/2002/09/01/interview-erv-gangl/
元々は機体重量を軽減するためだったようですね。そしてデータバスの選定を行い、マクドネル・ダグラス社に選定されたのがH009だったようです。これはその後の1553の前身となり、多重化デジタルアビオニクスバスの最初の適用となりました。
ただ、H009はノイズ対策等でハーネスには非常に厳密な制御と厚いシールドが必要という実装上の問題があり、またデータバスの共通化を意図して、より改良された新規格である1553へと進化していきます。そして1553を最初に実装したのはF-16になります。
こうして改良された1553はF-15にもバックフィットされて、これがMSIP機となります。ただ、注意すべきはMSIP機となってもH009バスの部分は残っているということです。これはAAM-4搭載試改修を実施されたMSIP機がH009バス・モニタ・ユニットが搭載されていたことからも分かると思います。
では、在来機にも同様に1553バスを追加すれば良いのではないかと思うのですが、これには実例があり、旧blogでも取り上げています。
旧blogでの投稿記事(F-15のH009バスであります。)
PASCOT(Programable Asychronous Serial Communication Translator)と言われるインターフェイスユニットを通してH009と1553が連接されています。
Highly Integrated Digital Electronic Control -- HIDEC
画像引用元: NASA Highly Integrated Digital Electronic Control -- HIDEC
https://www.nasa.gov/centers/dryden/pdf/88077main_H-1318.pdf の11ページより抜粋
1553が後付け追加出来るのであれば、あとはRADAR/OFPとランチャーさえ備えればAIM-120を撃てるようになるでしょう。RADAR/OFPについては平成10年度契約のAMRAAM運用研究事業で在来機用OFPもボーイングからリリースされているとの噂レベルの話があります。ランチャーについてはLAU-106AをLAU-106A/Aへ改修するのは容易と思われますが、AIM-120を運用できるLAU-128ランチャーとADU-552ランチャーアダプターを搭載するのは難しいかもしれません。
もう一つ考えられるのは、1553データバスを新たに搭載せずにミサイルをLOBLのみ運用してしまうことです。
実際、在来機の手っ取り早い能力向上としてAAM-5の搭載が行われておりますが、1553バスを搭載しないことからAAM-5の最大の利点であるLOAL(Lock On After Launch 発射後ロックオン)能力とHMDによるキューイング機能は使えません。ただ、LOBL(Lock On Before Launch)のみの運用となりますが、AAM-3との比較で約3倍と言われる最大ロックオンレンジと高いIRCCM能力を活用出来ることから、従来のAIM-9LやAAM-3と比べて大幅な能力向上が期待できます。
勿論、LOBLは最大射程はシーカーのロックオンレンジ以内となるので射程も大幅に低下しますが、中間誘導も要らないのでミサイル撃ってそのまま退避も可能です。
在来機といえどF-15は本当に出来た子なので、末永く活躍していただきたいと思います(w
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