だが、それまでの場所が体に身に沁みついていたようで、つい先月までは好物の猫缶をスプーンで叩いて、猫缶をあげようとしても、うちの三匹は猫缶を保存している台所に一旦集まるのだが、ワイが猫缶を持って餌容器に向かおうとすると、猫らは一斉に縁側へと喜び勇んで走り去って行くのであった。何度廊下の餌容器に猫缶を与えても、一向に治らなかった。やはり4年間そこでご飯を貰っていた習慣が簡単に抜け出せないのはわかる。
やっとそれも半年間ほど繰り返してから、この頃やっとシロジローだけは猫缶は廊下で貰えるものだと覚えたようで、台所から出ると、すぐそちらへとゆるりと左折するようになったが、ミネちゃんだけは物覚えが悪いのか、いまだに縁側の右方向へと走ってしまうものだから、ついそれにつられてジロタンまでそちらへ走って行きそうになることもままある。
きっと、ミネちゃんは生まれて初めて猫缶を貰えるようになったことで、縁側で食べた頃の旨かった猫缶の記憶が抜け切らないせいなのだと思う。だから、つい条件反射的に縁側のある方向へと、いまだに走ってしまうのだろう。最近ではミネちゃんも右へと走り出してすぐに慌てて戻るようになってはいる。すでに一足早く矯正できている「坊ちゃん育ち」の息子シロジローからはワンテンポ遅れそうだ。