2020年07月31日
【硫黄を含むアミノ酸】システインと香気成分の生成
システインはたんぱく質を構成アミノ酸です、成人では非必須アミノ酸で、乳幼児においては、必須アミノ酸となります。硫黄を含んでいる含硫アミノ酸の1つで、独特のにおいを持っています。食品では、肉や魚、卵、にんにく、たまねぎ、ブロッコリー、芽キャベツなどに多く含まれています。体内では、同じく含硫アミノ酸のメチオニンからシステインが合成されます。システインには抗酸化能があることから、食品や化粧品などの原材料として広く利用されています。システインは、チロシナーゼという酵素活性を阻害し、メラニンの産生を抑制することが、細胞試験などで報告されています。一方、過剰摂取した場合、メラニン色素が必要以上に減少し、白髪の原因になる可能性があります。また、システインは解毒や抗酸化作用を持つグルタチオンを構成するアミノ酸のひとつです。システイン2分子が連結したものが、シスチンです。
システインは、ジスルフィド結合を介したタンパク質の立体構造の維持や酸化還元反応による生体成分の代謝など生理的に重要なアミノ酸です。ジスルフィド結合は、空間的に近くに位置する2つのシステインが酸化されることにより形成される硫黄原子間の共有結合です。この結合により、たんぱく質の立体構造が強固になります。ジスルフィド結合は細胞膜表層や細胞外に分泌されるたんぱく質に多く分布し、細胞の中で合成される全たんぱく質のおおよそ10%がジスルフィド結合をもちます。ジスルフィド結合をもつたんぱく質としては、免疫において中心的役割を担う抗体や髪の毛や爪の主成分であるケラチン、インスリンや細胞成長因子などのホルモンが挙げられます。そのため、ジスルフィド結合をもつたんぱく質には、医学にも密接に関係するものが多く存在します。
システインは主に羽毛の加水分解により製造されており、加水分解に用いる濃塩酸の処理が環境に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
含硫アミノ酸は、食品の加熱過程において、それ自身の熱分解反応、あるいは共存するほかの食品成分との反応を経て、香気生成 に寄与します。熱分解反応は焙焼条件などかなり高温で処理 した場合にのみ見受けられるのに対し、共存するほかの食品成分との反応は、40〜500℃程度 の比較的低温から高温加熱までの広範に見受けられ、生成する香気成分の種類も多く、香気も多様性 に富んでいます 。そのため、実際の加熱調理条件下では、共存するほかの食品成分との反応の方が、香気形成上より重要な役割を果しています。
含硫アミノ酸の熱分解によって香気が生成した食品中に含まれている成分は、通常かなり強い不快臭を有します。一般に アミノ酸の熱分解で生じるにおいはあまり好ましいものではありません。しかし、かなり稀薄なときは、この不快臭も薄らぎ、システインなどの含硫 アミノ酸 の熱分解の際に生成するにおいの中には、ポップコーン様の香りが含まれています。
アミノ酸がほかの食品成分との反応を経て香気が生成されるときに、重視されるのは糖との反応、つまりメイラード反応です。一連の反応過程 を経て糖は分解され、同時にアミノ酸も反応の進行に伴い分解され、窒素を含有した化合物が生成します。さらに分解が進んで生じるピラジン類などの化合物が加熱香気の形成に重要な役割を果しています。含硫アミノ酸は、糖とアミノ酸とによる一般的な香気生成反応に、さらにほかの反応が加わるため、一層複雑になります。システインとぶどう糖を加熱反応させると、まず焼肉のような非常に好ましい甘い香りを生じ、この好ましい香りは速やかに甘味を有する煎餅のような香気となり、さらに加熱反応が進むとネギのにおいが強くなり、 加熱時間が長くなるにつれて次第にこのにおいが強くなります。これら一連の加熱過程で生成する香気成分の種類は非常に多 く、全容はまだ十分には明らかにされていません。
システインの代わりにシスチンを用いてぶどう糖と加熱反応させた場合も、システインとほぼ同様な香気成分が生じることが明らかにされています。この傾向は、ぶどう糖よりも反応性の高い5単糖のキシロース とシステイン塩酸塩とを水溶液中で加熱反応させた時にもみられます。
システイン、メチオニン、グルタチオン、タウリン、ビタミンB1などの構造中に硫黄を有している化合物は、加熱による化学反応により硫黄を供出し、少量でもにおいを感じるような化合物の形成に使用されます。羊肉ではこのような硫黄を含む物質が多いこと、豚肉ではビタミンB1 が牛肉の10倍程度含まれることなどから、食肉のにおいの形成に硫黄が影響していると考えられます。
システインはたんぱく質を構成アミノ酸です、成人では非必須アミノ酸で、乳幼児においては必須アミノ酸となります。硫黄を含んでいる含硫アミノ酸の1つで、独特のにおいを持っています。食品では、肉や魚、卵、にんにく、たまねぎ、ブロッコリー、芽キャベツなどに多く含まれています。
システインは、ジスルフィド結合を介したタンパク質の立体構造の維持や酸化還元反応による生体成分の代謝など生理的に重要なアミノ酸です。
アミノ酸がほかの食品成分との反応を経て香気が生成されるときに、重視されるのは糖との反応、つまりメイラード反応です。システインとぶどう糖を加熱反応させると、まず焼肉のような非常に好ましい甘い香りを生じ、この好ましい香りは速やかに甘味を有する煎餅のような香気となり、さらに加熱反応が進むとネギのにおいが強くなり、 加熱時間が長くなるにつれて次第にこのにおいが強くなります。
食品メーカーでは、硫黄を含むシステインなどのアミノ酸とさまざま糖を組み合わせ、加熱することで、食品に好ましい香気成分を付与する研究を行っています。
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