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2020年03月25日
『血と暴力の国』ピュリッツァー賞受賞作家マッカーシーの一番読みやすいサスペンス小説の感想
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現代アメリカ純文学の代表的な作家の1人、コーマック・マッカーシー。
彼は『すべての美しい馬』で全米図書賞と
全米書評家協会賞を受賞した才能ある実力作家です。
2007年には『ザ・ロード』でピューリッツャー賞も受賞しました。
彼の作品は非常に美しくストイック、哲学的で詩的で深い味わいがあります。
今回ご紹介する2005年発表の『血と暴力の国』は、
そんな彼の作品の中で最も読みやすい作品です。
コーマック・マッカーシーを読んだことがないとか
彼の別の作品を読もうとしたけど難解で挫折したという方には
特にオススメです。
さくっと読める大衆向けのサスペンス、犯罪小説です。
退役軍人ルウェリン・モスは偶然麻薬密売人の殺害現場に遭遇し、
思わぬ大金を見つけてしまう。
とっさに大金を持ち逃げしてしまうモスだったが
瀕死の男に水を飲ませるため現場に戻ったことで
殺し屋に命を狙われることなる。
先の見えない絶望的な逃避行を続けるモスを追うのは、
殺し屋アントン・シュガー。
シュガーは彼独特の哲学を持った死神のような男だった。
コーマック・マッカーシーの文章はいつも心理描写がありません。
なので、非常にドライなテイストになっているんですが
その分、会話が粋で奥行きがあります。
ジャック・ロンドンの動物ものと共通する洗練されたセンスを感じます。
マッカーシーの文体にハマる人も多いです。
マッカーシーの小説は、他の作品もそうですが、旅がひとつのテーマです。
モスとシュガーは旅の途中で様々な人々に出会います。
家出少女やマフィア、交渉人、モスの妻などなど。
皆それぞれ自分の人生があって、それぞれの理念があります。
それがこの小説に多彩性を与えています。
シュガーは、「生きた破壊の預言者」で
「ユーモアを解しない」男で「原理原則を持っている」人間です。
彼に「情」はありません。
「その原理原則は金や麻薬といったものを超越して」いて、
「特例を許容しない」、ある意味現世を超越した存在です。
常識とか、通常人間が持っている一般的普遍的なルールを持っていません。
2004年スティーヴン・キング製作総指揮のテレビシリーズ
「キングダム・ホスピタル」に登場するアリクイ
( 見た目は、長い鼻先と鋭い歯が並ぶ大きな口を持つオオアリクイに
似た生き物で、形而上的存在)にちょっと似てるかな(笑)。
シュガーはアリクイみたいにかわいくはないけど、
怖いのに憎めないところが似てる。
シュガーもアリクイも人に死をもたらすので恐ろしい存在ではあるけれど、
でも何故か、どこか惹かれるところがあります。
なぜでしょうね。
煩わしい現世のあれこれに縛られないからでしょうか。
モスの逃避行と平行して語られる保安官の語りがあります。
保安官はモスの事件を追いながら、
自らの過去に遡り家族のことなどを語っていきます。
これが逃避行とはまた別のひとつのドラマになっています。
深い意味で、マッカーシーの次の作品『ザ・ロード』にも繋がる
父と息子のストーリーとなっていて興味深いです。
大金を盗んで逃避行するというとても俗世的なストーリーですが
随所に見られるメタファーはとても詩的で幻想的です。
例えば、ラストに保安官の父親が持っている「牛の角の中に火を点した」灯り。
この「月の色をした」灯りのイメージ、とても綺麗だと思いませんか?
『血と暴力の国』は、幻想的な美しさを内包しています。
『血と暴力の国』は、深い余韻に浸れる非常に美しい小説です。
マッカーシーの入門書として読みやすいサスペンス作品になっています。
是非ご一読ください。
そして、もし気に入っていただけたら
ちょっと読みにくいかもしれないけれど、マッカーシーの超絶美しい作品
『越境』にチャレンジしてみるのもオススメです。
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最後まで読んでいただいてありがとうございました(*^▽^*)
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現代アメリカ純文学の代表的な作家の1人、コーマック・マッカーシー。
彼は『すべての美しい馬』で全米図書賞と
全米書評家協会賞を受賞した才能ある実力作家です。
2007年には『ザ・ロード』でピューリッツャー賞も受賞しました。
彼の作品は非常に美しくストイック、哲学的で詩的で深い味わいがあります。
今回ご紹介する2005年発表の『血と暴力の国』は、
そんな彼の作品の中で最も読みやすい作品です。
コーマック・マッカーシーを読んだことがないとか
彼の別の作品を読もうとしたけど難解で挫折したという方には
特にオススメです。
さくっと読める大衆向けのサスペンス、犯罪小説です。
あらすじ
退役軍人ルウェリン・モスは偶然麻薬密売人の殺害現場に遭遇し、
思わぬ大金を見つけてしまう。
とっさに大金を持ち逃げしてしまうモスだったが
瀕死の男に水を飲ませるため現場に戻ったことで
殺し屋に命を狙われることなる。
先の見えない絶望的な逃避行を続けるモスを追うのは、
殺し屋アントン・シュガー。
シュガーは彼独特の哲学を持った死神のような男だった。
心理描写がないストイックな文体
コーマック・マッカーシーの文章はいつも心理描写がありません。
なので、非常にドライなテイストになっているんですが
その分、会話が粋で奥行きがあります。
ジャック・ロンドンの動物ものと共通する洗練されたセンスを感じます。
マッカーシーの文体にハマる人も多いです。
旅の途中で出会う人々多様性
マッカーシーの小説は、他の作品もそうですが、旅がひとつのテーマです。
モスとシュガーは旅の途中で様々な人々に出会います。
家出少女やマフィア、交渉人、モスの妻などなど。
皆それぞれ自分の人生があって、それぞれの理念があります。
それがこの小説に多彩性を与えています。
死神アントン・シュガーの魅力
シュガーは、「生きた破壊の預言者」で
「ユーモアを解しない」男で「原理原則を持っている」人間です。
彼に「情」はありません。
「その原理原則は金や麻薬といったものを超越して」いて、
「特例を許容しない」、ある意味現世を超越した存在です。
常識とか、通常人間が持っている一般的普遍的なルールを持っていません。
2004年スティーヴン・キング製作総指揮のテレビシリーズ
「キングダム・ホスピタル」に登場するアリクイ
( 見た目は、長い鼻先と鋭い歯が並ぶ大きな口を持つオオアリクイに
似た生き物で、形而上的存在)にちょっと似てるかな(笑)。
シュガーはアリクイみたいにかわいくはないけど、
怖いのに憎めないところが似てる。
シュガーもアリクイも人に死をもたらすので恐ろしい存在ではあるけれど、
でも何故か、どこか惹かれるところがあります。
なぜでしょうね。
煩わしい現世のあれこれに縛られないからでしょうか。
同時平行で語られる父と息子のストーリー
モスの逃避行と平行して語られる保安官の語りがあります。
保安官はモスの事件を追いながら、
自らの過去に遡り家族のことなどを語っていきます。
これが逃避行とはまた別のひとつのドラマになっています。
深い意味で、マッカーシーの次の作品『ザ・ロード』にも繋がる
父と息子のストーリーとなっていて興味深いです。
幻想的、神話的な美しさ
大金を盗んで逃避行するというとても俗世的なストーリーですが
随所に見られるメタファーはとても詩的で幻想的です。
例えば、ラストに保安官の父親が持っている「牛の角の中に火を点した」灯り。
この「月の色をした」灯りのイメージ、とても綺麗だと思いませんか?
『血と暴力の国』は、幻想的な美しさを内包しています。
ま と め
『血と暴力の国』は、深い余韻に浸れる非常に美しい小説です。
マッカーシーの入門書として読みやすいサスペンス作品になっています。
是非ご一読ください。
そして、もし気に入っていただけたら
ちょっと読みにくいかもしれないけれど、マッカーシーの超絶美しい作品
『越境』にチャレンジしてみるのもオススメです。
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最後まで読んでいただいてありがとうございました(*^▽^*)
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