ジュール叔父さん(79)
−−−−−−−−−−【79】−−−−−−−−−−−−−−−−
Je lui laissai* dix sous de pourboire. Il me
remercia:
≪ Dieu vous bénisse, mon jeune monsieur ! ≫
Avec l' accent d' un pauvre qui reçoit l' aumône.
Je pensai qu' il avait dû mendier, là- bas !
.−−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−−−−−−−−
ぼくはチップを10スー持たせてやった.男は感謝の
念を述べてくれました:
「神の祝福が御身にありますことを!」
それは施しを受けるときの乞食の口調でした.ぼくは
男が向こうでは物乞いをしていたに違いないと思いま
した.
−−−−−−−−−−《語句》−−−−−−−−−−−−−−
sou:1スーは5 サンチーム.10スーなので50サンチーム.
1フランが100サンチームなので、0.5フラン渡し
ている.イメージとしては1フランを1万円札だと
想像するとよいかも知れません.チップに5000円
奮発したということにしましょう.
*laissai:原書、及び大学書林短篇集Uはlaissai、
第三書房、大学書林語学文庫ではdonnai
意味は同じだがニュアンスは若干変わる.
laisser 「持たせてやる」、
donner 「与える」
pourboire:(m) チップ、心づけ
pour + boire = 飲み代→酒手→チップ
pauvre:(m) 貧民、貧乏人
accent:[アクサン](m) (感情を表わす)口調、語調、調子
aumône:[オモーヌ](f) 施し、施し物
mendier:(他) 物乞いをする
là-bas:向こうでは、あちらでは;
アメリカで、ということでしょう.
「船上で」と解釈できないこともないが
その場合はici でじゅうぶんでしょう.
−−−−−−−−−−≪註釈≫−−−−−−−−−−−−−−
Avec l' accent d'un pauvre qui reçoit l'aumône:
主語も述語動詞もありません.なければどうするか?
読み手のほうで付け足します.ではなにを付け足すの
がいいか?C'était prononcé 辺りでしょうか.
C'était prononcé avec l' accent d'un pauvre qui reçoit
l'aumône. その発話は乞食が施しをもらうときの
ものだった.
なぜavec が使われているのか分かりにくい方もいらっ
しゃるかもしれません.文には現れていませんが、
男は感謝の気もちを「込めた」からです.avec には
「〜を込めて」という意味があります.
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