宝塔の光古びた塔に 祈りを捧げ
仏舎利尊 やすらぎの地
遥か彼方の 若者が来て
奇跡の光 身を包む
宝の塔よ、七宝の輝き
罪を浄めて、道を開け
供養の心で 福徳満ちて
村に広がる 平安の光
ある村の片隅に、古びた宝塔がひっそりと佇んでいた。その塔は、何世代も前から村人たちに大切に守られ、供養され続けてきた。塔の中には仏舎利、つまり仏陀の聖なる遺骨が納められており、その存在は村全体を包み込むような神秘的な力を秘めていた。
村の人々は、毎朝塔に手を合わせ、香をたき、灯明を捧げた。その供養は、彼らの生活の一部となっていた。誰もが知っていた。この宝塔がある限り、疫病も災いも遠ざかり、村は安穏に保たれると。
ある日、遠くの山から一人の若者が村に訪れた。彼は困窮に苦しみ、貧しさにあえぐ生活から逃れようと、村々を渡り歩いていた。衣服はぼろぼろ、食べ物もなく、道中で力尽きかけていたが、ふと立ち寄ったこの村で不思議な力に惹かれるように宝塔の前に立った。
「この塔に祈れば、何かが変わるだろうか?」若者はそう呟きながら、塔にひざまずき、手を合わせた。
突然、塔の中から柔らかな光が放たれ、若者の身体を包み込んだ。光の中から聞こえてくる声は、人間のものではなく、どこか天から降り注ぐような、静かで荘厳なものだった。「求めよ、されば与えられん。真心をもって供養せよ、そうすればお前の罪障は浄められ、道は開かれよう。」
驚いた若者は、声に従い、精一杯の祈りを捧げた。彼の心には次第に平安が訪れ、これまでの苦しみや悩みが薄れていくのを感じた。そして、その瞬間、塔の姿が変わった。瓦や石でできていたはずの塔が、七宝で装飾され、黄金の光を放つようになった。
若者は目を見張った。「これはただの塔ではない…神変妙の宝塔だ!」彼は思わず叫びそうになるのをこらえ、さらに深く祈りを捧げた。すると、まるで天からの雨のように、無数の宝珠が彼の前に降り注ぎ始めた。
「これが法身如来の力か…」若者はその奇跡に感謝し、以降毎日欠かさず供養を続けた。そして、その功徳は彼だけに留まらず、村全体に広がり、やがて誰もが宝塔に祈りを捧げるようになった。
時が経ち、若者は村の人々に「人を助けたいのなら、まずは自らが徳を積み、供養を忘れぬことだ」と語り伝えた。村人たちはその教えに従い、日々の行いを改め、互いに助け合いながら生きるようになった。
宝塔の光は、夜が訪れても決して消えることなく、村全体を静かに照らし続けた。それはまるで、如来の慈悲が形となったようであり、村の人々の心に深くしみ込んでいった。
この村の物語は、やがて周囲の地域にも広まり、人々は遠くからこの宝塔を訪れ、供養を捧げるようになった。そうして、村は栄え続け、誰もが平安を得る場所となった。
「宝塔を敬う心を持ち続けよ」と、若者は最後まで言い続けた。そして彼もまた、仏の教えに従い、静かにこの世を去っていった。
その後も、村の人々は彼の言葉を守り、宝塔に祈りを捧げ続けた。その塔は、今も変わらず村を守り、人々に幸せを与え続けている。
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