Beatsの新ワイヤレスイヤホン、Beats Fit Proが米国で発売されました。199.99ドル(約2万2000円、日本国内価格未発表)と、249ドル(日本国内価格3万580円)のAirPods Proより約50ドル(5,500円)安い設定ながら、アクティブノイズキャンセリング(ANC)搭載だしAppleのH1チップ入りでiPhoneとの連携もスムースだし、空間オーディオ対応だしと、「もうこっちでよくないか…?」と思わせるスペックです。
Beatsって不思議な立ち位置です。彼らのマーケティングはトップクラスで、低音を前面に出したそのヘッドホンは、セレブやアスリート、ミュージシャンなどなどが(少なくとも写真に撮られるときは)愛用してることで知られていました。あのデザインは「あ、Beats」って、見ればすぐにわかります。でも最近のBeatsは従来のオーバーイヤー型ヘッドホンからBluetoothイヤホンへと守備範囲を広げてるんですが、そのデザインはもっと控えめで、ブランディングの役にはそれほど立たなそうです。キム・カーダシアンが最近Beats Fit Proを着けてるのを撮られたとき、それは以前使ってたBeatsの「b」ロゴが光るオーバーイヤー型ヘッドホンほどわかりやすくはありませんでした。
Appleの傘下にあるからには、BeatsのイヤホンはAppleのテクノロジーの恩恵を受けるものと期待します。でも今年6月に発売したBeats初のイヤーフックなし完全ワイヤレスイヤホン、Studio Budsは、AirPods ProにあるようなiOSとの連携機能を一部削っちゃってました。Androidユーザーの場合、AirPodsよりシームレスに使えるんですけどね。
ともあれ、Beats Fit Proを1週間使ってみました。その結果、断言できます。AirPods Proとか第3世代AirPodsくらいマジカルにAppleのデバイスとつながり、フィットも完ぺきなノイキャンイヤホンが欲しい人は、Beats Fit Proを買うべきだと。
Beats Fit Pro
これは何?:Apple傘下のBeats発、完全ワイヤレスイヤホン。基本的に、50ドル(約5,500円)安くなったAirPods Pro。
価格:199.99ドル(約2万2000円)
好きなところ:ウィングが付いてて運動時もしっかりフィット、素晴らしいノイキャン性能、AppleのH1チップによる自動のデバイス間切り替え、アダプティブEQ(+α)、なが〜〜いバッテリーライフ、AirPods Proより安い。
好きじゃないところ:充電ケースが大きい、ワイヤレス充電できない。
超安定のフィット
Beats Fit Proでまず目に入るのは、ウィングのデザインです。耳の後ろにかけるフックで固定していたPowerbeats Proと違って、Beats Fit Proにはフレキシブルなウィングが付いてて、耳穴上のくぼみ、Google検索によれば「耳甲介舟」っていう部分にキュッと収まります。このウィングがイヤホン全体を固定して、たしかに動きません。
Beats Fit ProはBeatsのイヤホンの中で最小じゃないんですが(Studio Budsのほうが小さい)、でももっとエルゴノミック、かつウィングが付いてることで、耳の小さい人にはStudio Budsよりフィットが良い気がします。Beats Fit ProにはStudio Buds同様、シリコンのイヤーチップが3サイズ付属されててフィット感を選べますが、さらにiPhoneのBluetooth設定(Androidの場合Beatsアプリ)の中のイヤーチップフィットテストを受けると、一番密閉できるチップが見つかります。
Beats Fit Pro、密着性は高いです。不快なほどじゃないんですが、私の知る限りノイキャンイヤホンの中では決してフィットの良くないAirPods Proよりは、フィットしてます。もちろんイヤホンのフィット感ってすごく個人差があるので、私にとって良いものがみんなにとっても良いとは限らないです。
私は髪がそれ自体別の生き物であるようなもっさもさのカールなので、髪を耳にかけただけでイヤホンを落とすことで有名です。そんな事案はランニング中に頻発し、歩道を転がっていくAirPodを追いかける自分の姿ほどみじめなものはありません。
が、幸いBeats Fit Proではこの問題は起きていません。先週、私はBeats Fit ProをPeloton Bike+とペアリングしていくつかのサイクリングクラスをこなしたり、屋外でランニングしたり、筋トレしたりしましたが、そもそもイヤホンを着けてること自体忘れるほどでした。重量的には、AirPods Proが5.4gに対しBeats Fit Proは5.6gと同じくらい軽いんですが、Beats Fit Proのウィングがやっぱり効いてます。運動で汗をかくとAirPods Proは少しずつ耳から外れがちになるんですが、Beats Fit Proは動じません。Beats Studio Budsも運動中に快適で、Beats Fit ProもAirPods ProもBeats Studio Budsも、IPX4認証の耐水・耐汗性があります。
でもやっぱりBeats Fit Proのウィングが、固定するには良い働きをしています。どんなにがんばっても、フィットがゆるむことはありませんでした。
Beats Fit Proのデザイン要素で好きじゃないのは、充電ケースです。といっても、丸みを帯びた四角いケースは可愛いし、私が試したライラック色で中がグレーのタイプはとくにキュートです。でもちょっと大きすぎて、Powerbeats Proほどじゃないんですが、第3世代AirPodsはもちろん、AirPods Proよりも大きくて、服のポケット事情に恵まれない女性としてはやや持ち歩きにくいです。ライラック以外では、ブラックとホワイト、それから外がグレーで中がセージグリーンのタイプがあります。
AirPods Pro級の音
Beats Fit Proにはマイクが計6個(両サイドに3個ずつ)と、Beats Studio Budsより15%大きい9.5mmのデュアル・ダイナミック・ダイアフラム・トランスデューサーが内蔵されてます。6日間試してみたところ、全体的に音質にはとても良い印象です。フィットはAirPods Proより良いですが、音質は同じくらいで、場合によってはデザイン上さらに良くなってると思います。
Beatsのイヤホンらしく、Beats Fit Proは低音の扱いに長けていて、Kim Petrasの『Demons』のインダストリアルな低音から、NormaniとCardi Bの『Wild Side』の90年代R&B風ビートまでちゃんと聞こえるし、逆にThe Mountain Goatsのアコースティックギターとかシンバルロールのローファイな音もその通りに聞かせてくれます。
Beats Fit Proでは、低音はやっぱりAirPods Proで聞くより前面に出てきます。Beats Fit ProとAirPods Pro、第3世代AirPodsで同じ曲を聴き比べてみたところ、どれも同じくらい良いんですが、AirPods・AirPods Proのほうがより自然に聞こえることが多いと感じました。Beats Fit Proの音はシャープに明るく、サビが強調されすぎることがあり、とくにノイキャンがオンのときに顕著です。とはいえこんな感想は重箱の隅であって、全体的に音はすごく良いです。
Beats Fit Proは左右のイヤーピースを単体でも使えて、電話のときには便利でした。両方のイヤーピースを一緒に使うときは、6個あるマイクのうち5個は自分の声を拾って周りの音を消すのに使われます。片方だけ使うときは、そのイヤーピースの3つのマイク全部が使われます。通話品質はクリアで、通話相手側も問題なく私の声が聞こえていました。
Beats Fit Proは密着性が高いので、ノイキャンもすごく高性能になります。今回は時節柄まだ飛行機で試せていないんですが、いろんな環境音を消せるかどうかテストした結果は良好でした。屋外の音、Sonos Playbaseで大音量で再生した飛行機の機内音、拙宅の古い洗濯機の動作音、みんな効いてました。AirPods Proとも比べたところ、Beats Fit Proのノイキャンはベターでないにしろ同じくらいだと感じました。
ノイキャンモードと外音取り込みモードはどちらかのイヤーピースの長押しで可能ですが、iOSのBluetooth設定またはAndroidのBeatsアプリでは、長押しジェスチャーを別のタスクに割り当てることもできます。ノイキャンも外音取り込みも両方オフにすると、アダプティブEQが有効になり、耳に合った音になるので、私はこのモードが一番好きでした。ちなみにAirPodsにもアダプティブEQはあります。フルのEQコントロールは、アプリの手動操作があるイヤホンでは便利だと思っているのですが、Beats Fit ProのアダプティブEQもうまく機能してます。ただちょっと変だなと思ったのは、ノイキャンと外音取り込みモードをオフにするときは長押しではダメで、Bluetooth設定でやらないといけないとこです。
Beats Fit Proの他のジェスチャーはカスタマイズできませんが、十分に使えます。普通に1回押すと再生・一時停止・電話応答ができ、2回押すと前にスキップ、3回押すと後ろにスキップとなります。音声アシスタントでも操作可能です。
AirPods Pro(または第3世代AirPodsやAirPods Max)と同じように、Beats Fit ProはAppleの空間オーディオをサポートしていて、内蔵の加速度計とジャイロスコープによりダイナミックヘッドトラッキングもできます。これはBeats Studio Budsにはなかった機能です。これらはつまり、Dolby Atmosの曲を聞いてるときにより没入感あるオーディオ体験ができ、頭を動かすのにつれて音が変化するってことです。空間オーディオ対応のデバイスではどれもこのエフェクトを楽しめました。空間オーディオのためだけに何か買うってほどじゃないんですが、Beats Fit ProがこのAppleの推し機能を搭載してるのは何らかの良い兆候だと思います。
期待通りのApple体験
ウィング付きデザイン以外でBeats Fit ProがBeats Studio Budsと違うところは、AppleのH1チップを搭載し、H1由来の機能が使えることです。
iPhoneとのペアリングがAirPods並みに簡単なだけでなく、Beats Fit ProはAirPodsやAirPods ProをiPhoneとシームレスにつなぐのと同じ、いろんな機能を持ってます。Beats Fit Proには装着検知機能があるので、耳に入れると自動で音楽を前回の部分から再生したり、電話に出られたりできます。ユーザーが使っているAppleデバイスを知っていて、それらの間を十分シームレスに(多少ラグがありますが、それはBluetoothのせいなので)切り替えられます。Beats Studio Budsにはどちらの機能もありませんでした。
Beats Fit Proはまた、Apple傘下のデバイスとしては異例なほど、Androidともきれいに連携しています。Android ファストペアリングをサポートしているので、Androidスマホへの接続が簡単だし、Beatsアプリを使えばジェスチャー操作をカスタマイズしたり、バッテリー状況をチェックしたり、イヤーチップフィットテストを受けたりできます。空間オーディオのヘッドトラッキングは使えませんが、Dolby Atmosの没入感ある音楽はサポートしています。
すごく長いバッテリーライフ
Beats Fit Proのバッテリーライフはノイキャン・外音取り込みオフで7時間、オンで6時間とされ、ケースにはノイキャンオフで23時間分、オンで21時間分が入ってます。なのでオフのときは合計30時間、オンでも27時間になります。これはイヤーピースで5時間、ケースで24時間のAirPods Proより長くなるし、イヤーピース5時間、ケース10時間だったBeats Studio Budsと比べるとかなりのアップです。こうなるとBeats Studio Budsは、数ヵ月前に出たばかりなのに、ほとんど存在理由がないようにすら見えてきます…。
実際使った感じでも、Beats Fit Proのバッテリーライフは触れ込み通りでした。毎日数時間音楽やポッドキャストを聞き、電話をして、運動して約1週間使ってきましたが、ケースのバッテリー残量は65%、イヤホンはつねにチャージされてました。数週間充電しないでも大丈夫そうで、理想的です。
AirPodsと違い、Beats Fit ProのケースはUSB-Cでの有線充電です。ワイヤレス充電には非対応ですが、私はあまり問題視してません。私は充電したいときにはとにかく速く充電したいほうなので、ワイヤレス充電は遅すぎる気がします。でもこういうのは人によって違うかもしれませんね。
Beats Fit Pro、誰が買うべき?
Appleにはもうイヤホンの選択肢がいろいろあるので、Beats Fit Proが出てくるとわかりにくくなっちゃうじゃないかなー、と心配してました。でもそれは杞憂でした。実際に使ってみた今、Beats Fit Proこそワイヤレスノイキャンイヤホンを求める人が買うべきイヤホンだと思います
。フィットもバッテリーライフも素晴らしいし、音質もノイキャンも最上級だし、Apple独自の利便性も全部入ってて、かつAirPods Proより50ドル安いんです。Beats Studio Budsはもっと安くてノイキャンも入ってますが、Apple系の機能が入ってないので、私としては厳しいなと思ってます。
そもそもノイキャン必要ないよって人には、AirPodsはすごく良いしBeats Fit Proより若干安いです。ただイヤーチップでカスタマイズできない分、フィットしにくいかもしれません。
Beats Fit Proの唯一の不満は充電ケースですが、これもそんなに大問題だと思いません。私はBeats Fit Proがすごく好きになったし、多分たいていの人もそうなると思います
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