彼らの間で最も流行している薬が「ピラセタム」。元来てんかんや認知症の患者に処方されるものだが、脳の血流を改善し、思考力や記憶力にかかわるアセチルコリンを増大させる効能が注目され、「最強のスマートドラッグ」と呼ばれている。
他にも脳内伝達物質のドーパミンやセロトニンを増加させる「コリン」「チロシン」、慢性疲労やうつ病に効果があるとされる「アーカリオン」、ADHDの治療薬として使用される「ストラテラ」等が流行しており、いずれも「頭が良くなる薬」という触れ込みの元、ネット上の輸入代行業者で販売されている。
「スマートドラッグという言葉で検索すれば販売先がいくらでも出てくるし、クリックひとつで買えます。1箱30錠から50錠で3000円程度。ものによっては5000円を超える薬もありますが、どれも一般世帯で容易に手に入る値段です」(前出・医療問題に詳しいジャーナリスト)
◆覚せい剤と同じ症状が出るものも
大阪市北区の「まきメンタルクリニック」院長で精神科医の西崎真紀先生が語る。
「スマートドラッグと呼ばれる一連の薬の中には、確かに集中力を高める効果が認められるものもあります。のめば徹夜もできるし、一時的に勉強がはかどることもあるかもしれない。でも、薬には副作用があるものです。イライラしたり吐き気がしたり、覚せい剤と同じ症状が出るものさえある。そもそも本来は別の病気の薬なのです。健常な人間が服用して、リスクがないわけがありません」
実際、薬が切れた際の倦怠感は避けがたく、スマートドラッグを実際に使用し、TOEICの勉強をした25才の会社員によれば他にもさまざまな副作用に襲われたという。ちなみに同氏は800点台をウロウロしていたが、スマートドラッグを飲むようになって900点の壁を突破した。だが、今はもう服用をやめている。
「のまないと全く勉強ができなくなったんです。で、また薬に頼るわけですが、今度は効果が切れた際に、急激な眠気に襲われるようになった。頭痛もひどくなり、仕事にも支障が出始めちゃって…。悪循環ですよね。これはヤバいと医者に行ったら怒られましたよ。“病気でもないのに、なんてものをのんでるんだ!”と。そこでキッパリやめたんです」
例えば「ピラセタム」には頭痛や下痢の副作用が、「ストラテラ」には肝機能障害の副作用が指摘されている。薬物問題に詳しい「芦屋JINクリニック」院長の神三矢先生が語る。
「海外から輸入されるものには粗悪品や偽物もあります。のみ合わせ次第では健康被害が出ることもありえるし、脳が未発達の子供が医師の処方箋もなしに服用すれば、どんな影響が出るかわかりません。精神的な依存も無視できない上、国内では記憶力がよくなるなどの医学的な効果のある薬としては承認されていません」
前出・西崎院長の元には、最近、スマートドラッグの依存症になった中高生が相談に来ることが増えたという。
「薬のせいで生活リズムがメチャクチャになり、心身に変調をきたして医者を頼るんです。どこでこんな薬を手に入れたのかと聞くと、スマホを見せるわけです。“先生、簡単に買えるよ”って。服用するうちに体が耐性を持ち、のむ量がどんどん増えていく。体が未発達の中高生がこんな薬を乱用していたら、普通は真っ先に親が止めるべきでしょう。なのにその親が黙認してるケースも多い」(西崎院長)
最大の問題は、中高生にとって、スマートドラッグが違法薬物への入り口になる危険性を秘めていることだ。前出の西崎院長が語る。
「小さい頃から薬に頼るうちに、問題を自力で解決しようとする意志や集中力、注意力といったものが失われていく。結果的に覚せい剤や大麻などへの抵抗感まで薄れていき、違法薬物に手を染める“心の隙間”が生まれるわけです。目先のことだけ考えて、サプリ感覚でスマートドラッグを子供に与えている保護者は、その先に重大な落とし穴があることを認識するべきです」
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