人は病気や体調不良などでぐわいが悪くなったり、強い痛みでは不安感や恐怖感を感じたりすることがある。
それはいったい脳のどの部分の神経核の興奮によって起きるかを解説した内容が25年前に購入した本に記載されていた。
まず、風邪などの病気や酒などの飲みすぎ、食中毒などでは気分が悪くなり、吐き気や嘔吐、腹痛、冷汗などの自律神経反応がおきることがある。
このとき過剰興奮している部位は延髄の上部に位置する脳幹であり、脳幹には恐怖を感じる青斑核という部分があり、ここが過剰興奮するとぐわい悪さや不安感、恐怖感などが現れる。
脳幹は呼吸や内臓の働きなど、生物としての生命維持機能を司っており、生命維持に不利な情報に敏感に反応する。
脳幹には嘔吐中枢も存在するため、自己防衛反応として有害物を外に出そうとする身体反応が生じる。
脳幹部の情報入力は前頭葉からの神経経路と内臓などの異常を知らせる情報は脊椎からの神経線維での入力がある。
不安を感じる脳部位はいくつかあるといわれているが、偏桃体が主たる場所であろうということが、
FMRIなどのリアルタイムでの脳内の活動状況がわかる断層撮影技術で推測されている。偏桃体は自己の危機状況を把握すると興奮する神経核でもある。
前頭葉からの入力は、その人が過去に危険な経験をしたパターンと現在が似ていると脳が判断すると、
脳幹部への神経投射で緊急性を伝え、それが青斑核を興奮させ気分の悪さや不安感、恐怖感が発現される。
一方で、脊髄からの入力は脳幹部に存在する化学受容器によって、有害物質を感知した際に脳幹部が興奮することによっておこるとされている。
どちらにしても、自律神経系を興奮させ、不快な身体症状を呈することになる。
多くの人が経験あることとして、嫌な経験や怖い経験をした場所を避けたり、
過去の苦痛体験がまた起きるのではという不安感を持つ場合がある。(予期不安という)
それは、脳幹の上部に位置する海馬を含む大脳辺縁系と前頭葉の興奮しやすさ、感受性が高い人に起きやすいといわれている。
「また怖い目にあったらどうしようとか、また気分が悪くなったらどうしよう」とかいらぬ心配は無意識に
ふと出てくる思いだが、ふと思う働きは大脳辺縁系の働きであり、五感からの入力と前頭葉での勝手な認識で自動で生じることになる。
大脳辺縁系は情緒の脳と言われ、何かを想像しただけでも興奮する。
したがって、嫌だったことや不安だったこと、憂鬱だったことを想像するだけで興奮し、
場合によっては脳幹に投射された神経をも興奮させ、前述のような不快な自律神経症状を呈することもある。
また、気分の悪さには大脳辺縁系だけでなく、前頭葉も関与しているという。
前頭葉は五感から入ってきた情報を高度処理し、意味のある無しを判断すると同時に、
論理的な思考など全体を束ねる働きがあるが、誤った認識処理で今は緊急状態だと判断したり、
急性の著しいショックを受けると高度情報処理に支障をきたし、
大脳辺縁系や視床下部、脳幹部に非常事態情報を伝えてしまい、心身に自律神経症状を発現させてしまうことがある。
なるほど、悩みや嫌なこと、不安なことなどがあると、視床下部や周辺脳が過剰興奮し食欲がなくなったり、
眠れなくなったりするはずだ。
前頭葉は下位の大脳辺縁系や脳幹部への神経投射でそれらの脳の興奮を抑制する働きがある。
例えば性欲や食欲という欲求が下位脳の興奮で起きても、その場にふさわしくなかったり、
人として行ってはいけないと倫理的な心があれば、意思で抑制が可能である。
ある程度といったのは性欲に関しては、性欲を満たさなくとも生きていけるため行動の抑制は可能だが、
食欲に関しては生命の存続にかかわるので、ある限度を超えると抑制が難しくなる。
もし、前頭葉の働きに異常があれば、上記の欲求以外にも、何かに過剰な不安や恐怖を感じることがある。
したがって、病気の種類や症状に応じて、例えば食中毒であれば、有害物質を産生する菌を殺すために
抗生物質が投与され、うつ病などの不安や不眠が伴う病気では脳の興奮を鎮める安定剤が処方される。
前頭葉の情報処理の過ちに対しては辺縁系や脳幹の過剰興奮をなくすために、上記の安定剤のほか、
脳内物質セロトニンという脳の働きを調整するセロトニン作動薬などが処方される。
また前頭葉の認知の過ちを治す、認知行動療法などを行うことが有効と言われている。
このように、ぐわい悪い気分や感情は主として脳の偏桃体などの辺縁系や脳幹部での過剰興奮によっておきるといえる。
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