2014年07月19日
中公新書の起源
人々を惹きつけてはやまない中公新書。どんな経緯で中公新書のレーベルが立ち上がったのか、ふと好奇心が湧いたので調べてみることにした。そこで今回は中公新書自体は紹介しないが、それに携わった人や歴史背景について紹介したい。中公新書の創刊にかかわっていたのが、中央公論社元常務取締役で鉄道・紀行作家として名高い故・宮脇俊三氏である。氏が草壁焔太氏に語りまとめた『私の途中下車人生』(角川文庫、2010年)の第三章に、「中央公論社のころ」という章があり、そこに中公新書が創刊したいきさつが書かれている。名シリーズが出たいきさつについて、『私の途中下車人生』から紹介したい。
もともとこじんまりとした所帯であった中央公論社の目玉は「婦人公論」や「中央公論」。宮脇氏は当初校閲部→雑誌「自然」に配属され、「婦人公論」部に配属される。ところがハードな仕事の結果、途肺結核となった宮脇俊三は休職を余儀なくされる。一旦建築家になるために会社を退職するも、29歳で復帰。病み上がりということもあり、出版部に回される。その当時中央公論社は「週刊公論」という週刊誌の発行に踏みきったのだが、2年も満たずに廃刊(詳細はこちらを参照)。宮脇によればこのとき新入社員を大幅に増員。ところが売れ行き不振の「週刊公論」の赤字が累増し、社外の編集会社に依頼し、全集シリーズを刊行するもなかなかうまくいかなったようだ。その後、読売の<日本の歴史>がヒットしていた関係で『オリンピア』などの著作がある村川堅太郎氏に相談し、<世界の歴史>シリーズの編纂で成功。「週刊公論」の赤字をかなり回復するが、週刊誌のために大量に雇った新入社員を出版部に配属することなり、従来の文藝路線の第一出版部と宮脇氏が担当することになるノンフィクション部門の第二出版部に分かれて本を出版することになる。この当時、宮脇氏は34歳であった。
その後光文社カッパノベルズの成功で新書ブームが起こり、第二出版部の部長として中公新書のレーベルの立ち上げにかかわることになる。その結果、昭和37年11月に中公新書が創刊、第一回発売は桑原武夫編集『日本の名著』(中公新書・1)、野々村一夫『ソヴェト学入門』(中公新書・2)、会田雄次『アーロン収容所』(中公新書・3)、林周二『流通革命』(中公新書・4)、『象形文字入門』(中公新書・5)の5冊である。特に会田雄次氏の『アーロン収容所』はのちに中公新書にも収録され、現在も重版を重ねているベストセラーである。小生は現在会田雄次『アーロン収容所』の初版・帯・ビニカバを探しているのだが、いまだに入手できていない。当時の帯は統一した色ではなく、ビニカバも表面がすべすべしているものではなく、ざらざらしたものであった。この傾向はしばらく続く。のちにこのブログでも紹介する予定であるが、当時のチラシとはがき、スリップなどがこれらの本には入っていたが、そこには中公世界の歴史のシリーズのチラシ(赤色)があった。このことは宮脇氏のエッセイでもわかるように、<世界の歴史>シリーズがよく売れていた証左であろう。
岩波新書に続き、現在は中公新書が二番目に古いレーベルになっている。1962年から緑と白の落ち着いた風情のデザインは変わらず、「議論や解釈を避け、事実に語らせようちう方針」(p.114, 『私の途中下車人生』)が今でも継承されていることをいまだに小生は感じるのである。
もともとこじんまりとした所帯であった中央公論社の目玉は「婦人公論」や「中央公論」。宮脇氏は当初校閲部→雑誌「自然」に配属され、「婦人公論」部に配属される。ところがハードな仕事の結果、途肺結核となった宮脇俊三は休職を余儀なくされる。一旦建築家になるために会社を退職するも、29歳で復帰。病み上がりということもあり、出版部に回される。その当時中央公論社は「週刊公論」という週刊誌の発行に踏みきったのだが、2年も満たずに廃刊(詳細はこちらを参照)。宮脇によればこのとき新入社員を大幅に増員。ところが売れ行き不振の「週刊公論」の赤字が累増し、社外の編集会社に依頼し、全集シリーズを刊行するもなかなかうまくいかなったようだ。その後、読売の<日本の歴史>がヒットしていた関係で『オリンピア』などの著作がある村川堅太郎氏に相談し、<世界の歴史>シリーズの編纂で成功。「週刊公論」の赤字をかなり回復するが、週刊誌のために大量に雇った新入社員を出版部に配属することなり、従来の文藝路線の第一出版部と宮脇氏が担当することになるノンフィクション部門の第二出版部に分かれて本を出版することになる。この当時、宮脇氏は34歳であった。
その後光文社カッパノベルズの成功で新書ブームが起こり、第二出版部の部長として中公新書のレーベルの立ち上げにかかわることになる。その結果、昭和37年11月に中公新書が創刊、第一回発売は桑原武夫編集『日本の名著』(中公新書・1)、野々村一夫『ソヴェト学入門』(中公新書・2)、会田雄次『アーロン収容所』(中公新書・3)、林周二『流通革命』(中公新書・4)、『象形文字入門』(中公新書・5)の5冊である。特に会田雄次氏の『アーロン収容所』はのちに中公新書にも収録され、現在も重版を重ねているベストセラーである。小生は現在会田雄次『アーロン収容所』の初版・帯・ビニカバを探しているのだが、いまだに入手できていない。当時の帯は統一した色ではなく、ビニカバも表面がすべすべしているものではなく、ざらざらしたものであった。この傾向はしばらく続く。のちにこのブログでも紹介する予定であるが、当時のチラシとはがき、スリップなどがこれらの本には入っていたが、そこには中公世界の歴史のシリーズのチラシ(赤色)があった。このことは宮脇氏のエッセイでもわかるように、<世界の歴史>シリーズがよく売れていた証左であろう。
岩波新書に続き、現在は中公新書が二番目に古いレーベルになっている。1962年から緑と白の落ち着いた風情のデザインは変わらず、「議論や解釈を避け、事実に語らせようちう方針」(p.114, 『私の途中下車人生』)が今でも継承されていることをいまだに小生は感じるのである。
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