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2016年05月18日

地獄(1979)感想

(制作1979:東映) 1979年6月23日公開
主題歌・挿入歌:山崎ハコ 「心だけ愛して」「きょうだい心中」


ストーリー


田舎の名家の次男雲平(田中邦衛)の嫁ミホ(原田美枝子/母)が長男竜造(西田健)との不義の結果身籠って
しまう。そのことが雲平や長男の嫁シマ(岸田今日子)にばれた二人は、村から逃亡しようとするが、雲
平に追いつかれ竜造は殺され、ミホは動物用の罠にかかり衰弱死してしまう。後から追って来た村人達
の目の前でミホは赤ん坊を生み落とす。

シマに預けられた赤ん坊は、発見した村人達の好奇の目があるため殺すことが出来ず、使用人が拾って
来た捨て子と入れ替えられ久美と名付けられた。

20年後、養護施設で育てられていた娘はアキと名付けられ(原田美枝子)成長後はレーサーとなっていた。
ある日のレース事故で車は大破し、その事故の相手が成長した竜造の長男松男(石橋蓮司)の成長した
姿だった。アキはしばらく休養を取ることとなり、雑誌の観光案内で見た不思議と懐かしい思いを抱い
た田舎の村へと旅だった。

列車のデッキで扉にに寄りかかっていたアキは走行中に突然開いた扉から落ちそうになるが、それを見
つけた幸雄に助けられた。その男は竜造の次男であった。

アキの目的地が自分の実家のある村と知った幸雄は自分の家に泊まるようにと彼女を実家まで連れてく
る。ミホと瓜二つに成長したアキを見たシマと使用人は驚愕する。

惹かれ合う実は腹違いの兄妹の二人と、これまた療養に村に帰ってきた長男の松男。自分が入れ替っ子
とは知らず不義の子として村人の好奇の目に晒されながら育った久美、ミホへの思いが断ち切れない雲
平。手遅れにならないうちに村の若い者を使ってアキを追い出そうとするシマ。一家は破滅への道を進
んでゆく。






当時21歳の原田美枝子が主人公とその母の一人二役をして大胆な濡れ場を演じています。当時は若い女優
がヌードになって濡れ場を演じるとマスコミが女優開眼ともてはやしていました。ビデオも普及しておら
ず映画館の中でだけ見られるという特典のような感じでした。最近はネットやDVDが発達したり、テレ
ビ局が資本参加して、後のテレビ放送が前提となっているので、そのようなシーンは邦画ではほとんど撮
影されなくなりました。当時は家族でテレビを見ている時に濡れ場のシーンが流れるととたんに口数が少
なくなって、気まずい雰囲気になってました。

「エクソシスト」など海外オカルトの流行に東映が日本のホラーとして制作したという作品。J-ホラーと
いう言葉がまだ無かった頃で、日本の田舎の土着的な人間関係を描いています。どちらかというと、探偵
が登場しない横溝正史の金田一幸助シリーズのような感じがしました。岸田今日子演ずるシマが自分を裏
切った竜造を死んだ後も自分だけのものにするために、ミイラにして土蔵の地下の壁に埋め込んで会いに
行っているという狂気は怖かったです。


どろどろの人間関係の末に主要人物がすべて死んでしまい地獄で再開するという救いの無い話でした。地
獄は前半に不義の罪でミホが地獄に落ちた場面、アキが臨死体験で地獄を見た時、登場人物がすべて死ん
だ後と大きく3回に分けて出てきますが、131分の上映時間中105分を過ぎるともうラストまでアキの地獄
めぐりが続きます。針の山、賽の河原、灼熱地獄、餓鬼地獄等色々な地獄が出てきますが、石臼で粉々に
挽かれるのは嫌だと思いました。

餓鬼地獄では人間が虫や獣になって共食いをしていて、そこに獣の姿になったミホがいたのですが、たく
さん毛皮を着たきこりまたは出来の悪い狼男にしか見えませんでした。そこにいた虫のほうが造形的に気
味悪かったのでミホの姿はそちらにした方がよかったのではないかと思いました。アキが臨死体験で地獄
のミホを見た時には、針の山で人の姿をしてアキは現世で幸せになれというようなことを言ってましたが、
獣の姿となって記憶もなくなったのかアキに襲い掛かってきます。

天本英世演ずる地獄の使いに地獄ではしゃべるなと言われていたのに母の名を呼び続け、その報いとして
アキは木に変えられてしまいますが、そこに獣のミホは体当たりし続け、結果木の裂け目から光が漏れ、
その光から現世のどこかの海岸に赤ん坊となったアキが転生したところで物語は終わります。今までの罪
はどうなった?という唐突な終わり方でした。

山崎ハコの切ない歌声が心に染みます。杉田かおるが脱いだと話題になった1981年版「青春の門」の主題
歌も歌っていましたね。

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はじめまして。 映画が大好きで、現在も続いている午前十時の映画祭の第一回と第二回では上映作品100本全ての映画を鑑賞しました。 映画やテレビはたとえ架空設定のSFであっても、制作当時の時代を映しています。50歳を超えた今、特に邦画と日本のドラマは、過去の世相と風俗を振り返りながら観ていきたいと思っています。
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