裏金事件を受けた党の処分には、手法と内容の面で問題がある。
然もこの処分を岸田首相が自ら、最大派閥として影響力を持ち続けた安倍派を解体すると言う、実質的な党内抗争の手段とした側面が強い。
内容の方では、岸田首相と二階派会長だった二階俊博元幹事長が処分の対象外になったのは、如何考えても可笑しい。
これでは国民の不信感は拭えない。
直ぐに復党できたり、次の選挙までに資格が復活したりするのでは意味がない。
この点が極めて重要だ。
敵を多くし過ぎないと言う思惑なのだろうが、こんな恣意的な遣り方は権力闘争そのものであり、国民は到底納得できないだろう。
自民党は何時までこんな事を続けるのか。
然し、権力を握り続ける中で、パーティー開催や名ばかりの政党支部を使って制度に抜け穴を作り、企業・団体から組織的、継続的に金を集めた。
そうすれば、野党に集金力で構造的な差を付けられるので常に選挙で勝ち、権力を維持できる。
金も又集まる。
安倍派を始めとする派閥は人数を増やして権勢を振るい、政治家はポストを得て地位を上げていく。
こう言う自民党全体の利益を体現するメカニズムを作り上げた所に、今回の問題の本質がある。
然も「村社会」的な体質そのままに、地方組織の末端までこのシステムに連なっているのだから、業が深い。
自民党の幹事長が年に何億円と使っても使途を報告する必要がない政策活動費の闇をこのままにしておけるのか。
だからこそ野党は、この問題を国民が理解できる様きちんと争点化すべきだ。
そうすれば、只管自民党が権力を維持していくのが良いのか、政権交代により抜本的な制度改革を進めるのが良いのか、次の国政選挙で問う事ができるのではないか。
学習院大教授 野中 尚人 1958年生まれ、高知県出身。 東京大大学院修了。
専門は比較政治、日本政治。 著書に「さらばガラパゴス政治」など。
愛媛新聞 視標から
自民党が権力を維持していくのはいけない。
政権交代により抜本的な制度改革を進めなくてはいけない。
政権交代をさせたいが自民党ができ難くしている。
自民党を解体、消滅させなくてはいけない。