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2021年06月28日

産後うつ病・双極性障害の薬と授乳の可否A

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皆様、こんにちは(*^_^*)

薬と授乳について知りたい方がいらっしゃるようなので、今日は私が精神科に通院していた時に服用したことのある薬の授乳関連の情報をまとめたいと思います。

情報源はLactMedというアメリカNIH(国立衛生研究所)の科学データベースです。

ちなみに私自身は上の子が0歳10ヶ月の時から保育園に行っていましたが、1歳3ヶ月までは母乳をあげていました。

※レクサプロ・ロラゼパム・ゾルピデムについては以前の記事でもご紹介していますが、2021年6月現在の最新情報を以下に紹介します。

ルジオミール(一般名:マプロチリン)

抗うつ薬。授乳中のマプロチリンの使用経験はほとんどないため、特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

アモバン(一般名:ゾピクロン)

催眠鎮静薬。低月齢でない乳児の授乳中に時々使用しても、乳児へのリスクはほとんどないとされている。安全性スコアに基づく基準ではゾピクロンは授乳中でも使用可能だが、乳児の過度の眠気に注意する必要がある。 特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

レクサプロ(一般名:エスシタロプラム)

抗うつ薬。1日20mgまでの服用では母乳中の濃度は低く、母乳育児中の乳児(特に生後2か月以降)に対して悪影響を及ぼすことはないと考えられる。母親がエスシタロプラムを必要とする場合、母乳育児を中止する理由にはならない。

ワイパックス(一般名:ロラゼパム )

抗不安薬。母乳中の濃度が低く、他のベンゾジアゼピン系薬よりも体内から早く消失するため、乳児に直接投与しても安全である。通常の服用量では母乳育児中の乳児に副作用を引き起こさないことが示されており、授乳中に使用可能であるとされている。

マイスリー(一般名:ゾルピデム)

催眠鎮静薬。母乳中の濃度が低く体内から早く消失するため、乳児が摂取する量は少なく、母乳育児中の低月齢でない乳児に悪影響を及ぼすことはないと考えられている。乳児の過度の鎮静、筋緊張低下、呼吸抑制がないか注意する。

メイラックス(一般名:ロフラゼプ酸エチル)

抗不安薬。米国での販売は承認されておらず、乳汁中への移行に関する情報はほとんどない。特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

ドグマチール(一般名:スルピリド)

抗精神病薬。米国での販売は承認されていないが、諸外国では精神治療薬として使用されている。母乳中にかなり大量に排泄されるが、母乳育児中の乳児の血中濃度は評価されていない。産後の母親は、産後うつのリスクが比較的高く、スルピリドは副作用としてうつを引き起こす可能性がある。よって大うつ病の既往歴のある女性にはスルピリドの使用を避けるべきであり、感受性の高いこの時期には、どの母親にも長期間使用してはならない。

ジプレキサ(一般名:オランザピン)

抗精神病薬。1日20mgまでの服用では母乳中の濃度は低く、母乳で育った乳児の血清からは検出されない。オランザピンを投与された乳児の長期追跡調査によると、乳児はおおむね正常に成長した。オランザピンは授乳中でも許容できるとされ、第二世代抗精神病薬において授乳中の第一選択薬であると結論づけられている。

リスパダール(一般名:リスペリドン)

抗精神病薬。1日6mgまでの服用では母乳中の濃度は低いが、他の抗精神病薬と併用すると乳児に悪影響を及ぼすことがある。授乳中のリスペリドンの使用経験はほとんど公表されておらず、長期的な追跡調査のデータも少ないため、特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用したほうが良いかもしれない。

デパケン、バレリン、セレニカ(一般名:バルプロ酸)

抗けいれん薬。母乳中のバルプロ酸濃度は低く、乳児の血清中のバルプロ酸濃度は検出されないか低い。バルプロ酸単剤療法中の授乳は、乳児の成長や発達に悪影響を与えないと考えられているが、ある研究では母乳で育てられた乳児は非母乳で育てられた乳児よりもIQが高く、言語能力が向上していた。 授乳中のバルプロ酸の使用は可能とされており、 母親がバルプロ酸を必要とする場合、授乳を中止する理由にはならない。

ルネスタ(一般名:エスゾピクロン)

催眠鎮静薬。授乳中のエスゾピクロンの使用に関するデータはない。ラセミ体であるゾピクロンのデータを参照。特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

ラキソベロン(一般名:ピコスルファートナトリウム)

下剤。消化管から吸収されず、母乳中に検出されない。授乳中に服用することができ、特別な予防措置は必要ない。

サイレース、ロヒプノール(一般名:フルニトラゼパム)

催眠鎮静薬・抗不安薬。米国での販売は承認されていない。母乳中に排泄され、体内から消失するまで時間がかかるため、母乳育児中の乳児の血清中に蓄積する可能性がある。特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)

抗精神病薬。用量に応じて血清中の女性ホルモン量を変化させる。使用に関するデータは少なく、より多くのデータが得られるまでは、特に新生児や早産児の授乳中は他の薬剤を使用することが望ましい。

レキサルティ(一般名:ブレクスピプラゾール)

抗精神病薬。母乳中の排泄に関する情報はなく、より多くのデータが得られるまでは、他の薬剤を使用することが望ましい。

今から思うとなぜこの薬が処方されたのかと疑問に思うものも複数ありますが、たった2〜3年で薬の情報が大きく変わると思えず、それだけ産後や授乳関連の知見は一般の精神科医に浸透していないかもしれないということなのでしょうか。。

また例えばバルプロ酸の場合、日本の添付文書では「授乳を避けさせること。」とあるのに対し、米国の添付文書では「Talk to your healthcare provider about the best way to feed your baby if you take Depakene.(デパケンを服用している場合、赤ちゃんへの最適な授乳方法については医療機関に相談してください。)」とあるので、薬を認可する日米の国の機関の認識の違いも大きく影響しているような気がします。

産後のメンタル不調を適切に治療するためにも、そして赤ちゃんに適切に栄養を与えるためにも、より多くの人に正しい科学的な情報を知ってもらえれば嬉しいなと思います。


【参考文献】
LactMed(https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/lactmed.htm
医薬品インタビューフォーム バルプロ酸ナトリウム 2017 年 9 月改訂(第 25 版)
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=1139004F1045
Depakene (valproic acid) capsules and oral solution, FDA Approved Labeling Text dated October 7, 2011 (https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2011/018081s046_18082s031lbl.pdf


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東京大学農学部、同大学院農学生命科学研究科修士課程修了。メーカーの研究所に就職して以来様々なバイオ研究に従事し、製品開発につなげたり論文を書いたりしてきました。
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