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2015年12月30日

(小説)ルシーの明日・その14

 だが、機械たちは関係ない。こいつらは、全ての動植物が滅びてしまおうと、何の影響も受けないのだ。彼らは、動植物のタンパク質を摂取する必要はなく、電力さえ与えてもらえれば、いつまでも自身を維持していく事ができる。人間たちが作ってくれた発電システムの数々は、地球上の自然の衰退とは関わりなく動き続けるものなのであり、機械たちが自ら整備を続ければ、それこそ永遠に使い続ける事ができて、機械の世の中を存続させる事ができるであろう。
 大自然の崩壊とともに、これまでのタンパク質でできた炭素系の生物たちが滅んでいき、代わりに台頭するコンピュータ装備の機械たち、それこそがシリコニーなのだ。人間がロボットたちの反乱によって取って代わられるという、単純な図式ではない。これは、まさに進化の一過程としての世代交替なのである。炭素系生物が、やがて、ケイ素系生物であるシリコニーに生物界の主流の座を譲るというのは、生物の進化の図式として必然的な流れだったのだ。
 そもそも、我々炭素系生物だって、主流の座を頻繁に新種の生物に譲り続ける事で、ここまで進化してきた訳ではないか。私たち人類は、頭脳をフル活用させる事によって、今日の地球の生物の頂点へと君臨した次第だが、これが進化の最終到着点だったと考えるのは、とんだ思い上がりである。確かに、炭素系生物の中には、我々人類を押さえつけて、取って代われるような存在はもう居ないのかもしれないが、代わりに、我々人間の頭脳の進化だけを引き継いだ電子頭脳が誕生した。電子頭脳の発達はとどまる事を知らず、やがては、生みの親の人類の頭脳をも超えてゆく。進化とは、別にタンパク質の遺伝子内で受け継がれなくてはいけないものでもないのだ。炭素系生物が地球環境の限界で生息不可能になってしまうと言うのであれば、ケイ素系疑似生命の電子頭脳が進化の続きを引き継いだとしても、全然間違った流れでも無いはずなのである。
 こんな発想を、私は、夢を見ながら悟ったのか、あるいは、目覚めたばかりの寝ぼけた状態で閃いたのかは、よく覚えていない。しかし、この進化に関する新たな仮説を深く思索するほど、私は涙が出そうな感情に強く陥っていったのだった。  (つづく)

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posted by anu at 17:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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