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2016年03月01日

『西遊記』より「師匠の憂鬱」

 孫悟空の術の師匠の名は、須菩提と言う。須菩提は悩んでいた。自分の弟子であった孫悟空が今や、天界をも揺るがす問題児となっていたからである。このような事態になる事は早くに予測できていたので、すでに悟空との師弟関係は切っていたのだが、それでも悟空に術を教えた責任を追求され、天界よりお咎めがあるのではないか、とヒヤヒヤする毎日を送っていた。
 やがて、釈迦如来が悟空を捕まえたと言う情報が入ってきて、須菩提もようやく安心できる日々を送れるようになったのだった。
 ところが、それから500年経った時、今度は、仏教に帰依した悟空が、三蔵法師を守って、上を下への大活躍をしていると言う話が聞こえてくると、須菩提は急に悟空の事が妬ましくなってきた。そもそも、悟空に術を教えたのは自分であり、自分だって悟空並みかそれ以上の活躍は出来るのだ。それなのに、師匠の自分を差し置いて、悟空ばかりがチヤホヤされているとは!
 ついに、須菩提は毛むくじゃらの猿の正体を現して、悟空と入れ替わってやる事を決心した。須菩提の正体は、六耳び猴と言う。


 私は、「悪の組織の大研究」に「西遊記」の研究文を載っけちゃうほど、原作「西遊記」が大好きなのですが、そんな訳で、ブックショートの「昔話や古い小説を題材にした小説を書く」と言うお題を見た時、真っ先に「西遊記」ネタで何か書こうと思い立ちました。

 で、まずひらめいた話が、上記したものだったのですが、面白い内容だと思うものの、よくよく思案すると、とても使えそうにないのでした。

 と言うのも、オチの六耳び猴が、一般の人にはよく分からないでしょう。この六耳び猴とは悟空に化けた悪者妖怪の一つで、原作に詳しい人ならすぐピンとくるはずですが、そうじゃない人には馴染みがなさすぎるかもしれません。
 てな訳で、誰でもすぐ分かるようなオチじゃなければ、小説としては失敗ですので、このネタはお蔵入りしてしまった次第です。

 「西遊記」ネタはいろいろ考えてはみたのですが、「西遊記」はプロの作家もすでに頻繁に活用している原作ですので、とびっきり斬新な発想はなかなか見つからないのでした。

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タグ:西遊記
posted by anu at 15:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説
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