2015年10月04日
レオナルド・ダ・ヴィンチ 幻の傑作 アンギアーリの戦い
2015年11月27日まで京都文化博物館で開催されているアンギアーリの戦いの特別展へ行って来ました。
アンギアーリの戦い (イタリア語: Battaglia di Anghiari)とは、15世紀半ばのイタリア・トスカーナ地方のアンギアーリにて、フィレンツェ共和国軍とミラノ公国軍の間で行われ、1440年、アンギアーリにある橋を巡って争われ、フィレンツェ軍が勝利した戦いのことです。
ダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』は、
イタリア・フィレンツェのフィレンツェ政庁舎(ヴェッキオ宮殿)大会議室(五百人大広間)に、レオナルド・ダ・ヴィンチによって描かれた壁画なのですが、
未完成だったことから、
その上からヴァザーリによって『マルチャーノ・デッラ・キアーナの戦い』(Battaglia di Marciano della Chiana)
が描かれてしまいました。ダ・ヴィンチは、『アンギアーリの戦い』で軍旗を激しく奪い合う兵士たちや、軍馬の衝突を描いたと言われています。
ダ・ヴィンチは、様々な絵画技術を研究しましたが、『アンギアーリの戦い』でもテンペラやフレスコではなく油絵で壁画に挑戦しました。
恐らくロウを混ぜた厚い下塗りなど試行錯誤したのでしょうが、表面の絵の具が流れ落ち出してしまい、急いで乾かしたものの絵画の下半分しか救うことができず、上部は色が混じり合ってしまいました。そして、ダ・ヴィンチはこの壁画を諦めることとなり、未完のままとなってしまったのです。
1555年から1572年にかけて、大広間はコジモ1世の宮廷のために改築、拡張され、この時、ダ・ヴィンチとミケランジェロの2つの未完成の壁画は共に壁ごと失われたと考えられていました。
しかし、ヴァザーリはダ・ヴィンチを尊敬していたため、ダ・ヴィンチの絵画を消してしまうことは考えられず、ヴァザーリのフレスコ画の12m地点、フィレンツェ兵士が掲げている緑色の軍旗のところに、"Cerca trova"(「探せ、さすれば見つかる」)というヴァザーリの文字が記されていることから、それはダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』を指していると考えられています。
そして、五百人大広間を隈なくレーダーやX線による調査を行ったところ、ダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』があったと言われる東側の壁面は、ヴァザーリによってもう一つ壁が作られた二重壁になっていたことが分かりました。
2つの新旧の壁の間には1cmから3cmの空洞があり、これは『アンギアーリの戦い』を保護するには十分な空間でした。上に描かれたヴァザーリの作品も傑作であるため、ダ・ヴィンチの傑作の暴露は慎重に行われています。
未だ『アンギアーリの戦い』の全体像は謎に包まれていますが、あまりの傑作であったため、ミケランジェロをはじめとする多くの画家に模写されており、その模写やダ・ヴィンチの残した習作から『アンギアーリの戦い』とは一体どのような作品であったのかを推測することができます。
ジョルジョ・ヴァザーリはその著書『
』においてダ・ヴィンチの『アンギアーリの戦い』の描写の素晴らしさを賞賛しています。あのラファエッロも、噂となっていたダ・ヴィンチの絵を見るためにはるばるイタリアにやってきたのだとか。
『アンギアーリの戦い』の中心部分はフランス・パリのルーヴル美術館にあるピーテル・パウル・ルーベンスの模写によって広く知られています。1603年にルーベンスが『アンギアーリの戦い』の模写を描いた時はダ・ヴィンチの壁画は失われていたので、1558年のロレンツォ・ツァッキア(Lorenzo Zacchia)による版画を元にしているようです。
ピーテル・パウル・ルーベンス(ベルギーの画家。『フランダースの犬』で主人公ネロが見たがっていた絵はルーベンスの『キリスト昇架』と『キリスト降架』で、ネロが祈りをささげていたのもルーベンスの『聖母被昇天』。)
ルーベンスは、絵画技術も高いため、彼の描いた『アンギアーレの戦い』が最もダ・ヴィンチの元画に近いのではないかと考えていますが、ルーベンスは直接ダ・ヴィンチの壁画を目にすることはなく、黒チョークの模写素描を入手してそこに加筆して仕上げたといわれています。この模写は今では『タヴォラ・ドーリア』と呼ばれています。
作者不明
この絵の画家は、未完成の『アンギアーレの戦い』を見て想像力で背景などを描き足したと考えられます。
今では幻の作品ですが、『アンギアーレの戦い』は傑作であったため、多くの作家が『アンギアーレの戦い』を基にした作品を残しています。
レオナルド・ダ・ヴィンチによる『アンギアーリの戦い』のための人間と馬の習作
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レオナルド・ダ・ヴィンチは、万能人と呼ばれるように、ヘリコプターの原型や新型の大砲などの発明家や医学者としても知られており、牛を解剖してその心臓の構造を模写した図はとても有名です。
ダ・ヴィンチは、「芸術家は、万能でなければならない」という言葉も残しており、こうして身に付けた知識の全てを芸術に注ぎました。
そうして彼の様々な分野に及んだ研究は、輪郭をぼかすスマ―フ法や、遠い場所は空気の層でぼやけるという空気遠近法を生み出したのです。
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