今回はボクが一番敬愛する作家のお話でも書きましょうかね。
今新刊(と言っても殆ど文庫としての新刊ですが)が出ると必ず購読するのは、奥田英朗と池井戸潤の小説ですが、本当だったら自分にとっての絶対的存在の作家がもう一人います。でも、その作家の小説・エッセイの新刊が出ることはもう決してありません。
景山民夫。彼の話を人にした時、ほぼこう言うリアクションが帰って来ます。「ああ、幸福の科学の人ね」「彼は自殺したんでしょう?」に対してボクはこう答える事にしています。「重度心身障害者として生まれた彼の長女が18歳で一度もベッドから起きることなく一生を終えた事が関係してるんじゃないかな」「プラモデル作ってたら接着剤に煙草の火が引火して焼死したんだよね」
ボクが彼の存在を知ったのは、放送作家だった彼が台本を書いている番組、11PMだったかな?に本人自身が出演をしていた時だった思います。
出没おもしろMAPって番組に出ていたのは何となく覚えてますし、タモリ倶楽部の初代放送作家は景山民夫で、これも本人も出演していた記憶があります。クイズダービーも構成作家は彼でした。
その後、彼の名前を活字で見たのは雑誌BRUTUSで、エッセイを書いていた時。後で知ったのはコレが彼の作家デビュー作普通の生活でした。
その後そのBRUTUSに連載が開始された小説トラブルバスター、これが実に面白かった。
主人公の宇賀神邦彦はTBS(小説では「関東テレビ」だったけど誰が読んでも設定はTBS)のプロデューサー。低視聴率で担当番組をいくつも途中打ち切りにさせ、左遷された先がトラブル処理係。
料理番組でアイドルが作った料理で食中毒になった事実を揉み消す、誰が読んでもクイズダービーだと分かる番組の誰が読んでもはらたいらと分かる回答者が密かに番組スタッフから回答を事前に教えてもらっていた事を隠蔽する、などなど。本当にこんな事書いて大丈夫なの?と言うテレビ業界裏事情暴露小説で、毎号BRUTUSはまずトラブルバスターから読み始めました。
その後、処女長編小説虎口からの脱出は歴史冒険小説と言っていいのでしょうか?まるでインディージョーンズを見ているようなスピード感とハラハラ感は、ボクを一気に景山民夫の虜にしてくれました。
そして直木賞受賞作、恐らく一番有名な景山作品遠い海から来たCOO。
ご存じない方に簡単に説明すると、南太平洋の小島で日本人の少年が太古の恐竜の赤ん坊を見つけ育て、そこにフランスの核実験計画が絡んで・・・という「美しい自然と親子のふれあいを通して描かれる少年の成長記であり、同時に大国の核実験などが絡む冒険小説的な要素をも併せ持つ」ファンタジーノベルです。
景山民夫の作品に南の島が舞台の小説やエッセイが多いのは、彼がスキューバダイビングを愛好し、クジラやイルカを愛していたせい。日本でもヒットしたアメリカのテレビドラマ「わんぱくフリッパー」に影響を受けたと述べています。
自分も子供の頃から南の島、珊瑚礁、スキューバダイビングに憧れを抱いていて、オーストラリア〜グレートバリアリーフを世界地図で見ているとケアンズという街がある、ここに行って海に潜ってみたいなんて思ってたくらいですから、通ずるものがあったのでしょうか。
そのオーストラリアを舞台にした冒険小説がモンキー岬。この小説でストーリーは覚えていなくとも、主人公2人がクルマで走ってる時にカーステでかけてるのが、CCRことクリーデンス クリアウォーター リバイバルのTHE MIDNIGHT SPECIALであることで嬉しくなっちゃう。そして「TWILIGHT ZONEで」「ダン・エイクロイドが」って会話が出てくるんですよね。これって映画見てない人にはさっぱり分からない話ですが、分かる人だけ分かればいいんです。それが景山民夫なんです。
だから、景山民夫のどこが面白いのか分からないって人は少なからずいるけれど、それは理解できるんです。だって本人も分かる奴だけがニヤッとすれはいいと思って書いているから。
読んでる方も、分からない人がいるからこそ自分はもっと面白く感じるでしょう?
虎口からの脱出の続編とも言える遙かなる虎跡、ホラー小説ボルネオホテル、恋愛小説ティンカーベルメモリー、ナンセンス小説クジラがきた海、刑事物湘南ラプソディなどなど、その作品はバラエティに富んでいますが、どの作品にも貫かれているのは、彼自身の波長と合う人だけを相手にしていたのではないかと言う事。
エッセイにしてもそう。たとえば、彼一流の「ありそうなウソ」。コレをどう感じるかによって他の作家以上に好き嫌いがハッキリすると思います。そして誤解を恐れずに書くなら、彼の洒落を理解するにはある程度の都会的センスは必要でしょう。
グラミー賞授賞式へ取材に行く際、スティービーワンダーの楽屋を訪問して何かを拝借してくる約束を彼がレギュラー出演していたラジオ番組で聴取者としました。衣装ラックにかかっていたハンガーを音を立て無いよう一つにそっとバッグにしまい込んでいたところ、盲目の天才音楽家は景山民夫にこう言ったのでした「そんなものシアーズで5本1ドルで売ってるよ」って。
彼がニューヨーク グリニッジビレッジでフォークシンガーをやっていたのは事実の様ですが、ある時、郊外で大きな音楽イベントがあるらしいと言う噂を聞いて行って見たら1日前に終了していた、それがウッドストックだった。
国際線旅客機に搭乗して出発を待っていると、こんな機長のアナウンスが流れてきた。「当機のマヌケな副操縦士ががパスポートを忘れ自宅に取りに帰っております。なので出発が遅れる分、彼のおごりでファーストクラス用のシャンパンを皆さんに無料で振る舞います」
これらを端から信じるのか「本当?」と疑うのか、「ああ、またか」と思いつつもニヤッとするのか?
いずれにせよ景山民夫の波長は誰とでも合うものじゃないと思います。でも合っている人にとっては凄く嬉しいんですよね、これが。でも、本当のことかも知れませんね、いくつかは(笑)
ところで、80年代初頭一部で人気を博していた毎週月〜金10分のHITACHI SOUND BREAKと言うテレビ番組がありました。洒落た選曲の洋楽に海外の風景を中心とするオリジナル映像を被せて放映する、といった一見とても単純で安直に思われた番組でしたが、これが以外と面白かったのです。
その中でも印象深かったのがHENRY KAPONO/STAND IN THE LIGHT 柳ジョージ/テネシーワルツに乗せて映されていたのがホノルル空港に駐機されていたDC3とハワイ島ヒロのダウンタウンの映像でした。
で、エンドクレジットを見て納得。構成:景山民夫
やはり彼のセンスとは凄く波長が合いました。
そんな景山民夫の作品、実はアマゾンの中古か古本屋でしか入手できません。
角川書店、新潮社、文藝春秋を始めとした大手出版社を始めとして、調べる限り全ての書籍は廃刊になっているようです。その理由は幸福の科学絡みの問題なのでしょうか?それにしては、幸福の科学出版から出された作品も全て廃刊になっているようです。
ともかく、今回のブログを書いていて、また幾つかの作品を読み返してみたくなりました。
彼が亡くなって来年でもう20年。時が経つのは早いものです。
*今回書かれているエピソードは、その概略を自分の記憶だけに基づいて書かれています。なので細かい部分が不正確なことはお許し下さい。今後氏の作品を徐々に読み返して間違っている部分は随時訂正してまいります。
2017年10月07日
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