パリのテロから一週間が経ちました。
フランス政府のISに対する空爆への報復と報道されていますが、世界の大多数の人はやり場のない怒りと憤りを感じていると思います。そして己の命を犠牲にしてまで、さらには自身の家族や恋人、友人の悲しみを封じ込んで自分の信じる神のため(たとえそれが狂信的な指導者のマインドコントールのせいであったとしても)自分と同じ多くの「人間」を自爆という行動をとって殺さなければならないのか?
ISだけでなく、アルカイダにしてもボコハラムにしても、日常宗教というものから離れた立場に身を置く我々日本人の多くからすれば、全く理解に苦しむ存在だと想います。
さて、私が今までの人生で最も衝撃を受けた書籍に「星を継ぐもの」という小説があります。英国のJPホーガンという、その後人気小説家となるコンピュータ会社のセールスエンジニアが1977年に発表したデビュー作のSF小説です。
いまやハードSF小説の傑作として世界的にとても高い評価を受けている「星を継ぐもの」を私が知ったのは、80年当時雑誌POPEYEに連載されていた書評コーナーでありました。
普段書評欄など全く興味がない自分ですが、そこにあった一言が衝撃だったのです。「月の裏側に人間の死体が発見された。調べるとそれは5万年前の遺体で・・・」
何故人類はある時代に爆発的に進化したのか? 何故月面の表と裏はあまりにも地形が違うのか?何故火星と木星の間にある小惑星帯はそこにあって、これだけが星としての形を持ってはいないか?等、様々な現実の疑問がこの小説の中で論理的に解き明かされていきます。
どんどんこの小説に引き込まれ、その後何回も読み直し、知り合い何人もに紹介し、更に続編、続々編も夢中で読みました。
それが、冒頭のISのフランス同時多発テロと「星を継ぐもの」がどう言う関係があるのか?
それはこの小説の最も重要な帰結のうちのひとつが「人間には2種類が存在する」だからなのです。
「この世の中には2種類の人間がいる。それはいい人と悪い人だ」とは映画「犬神家の一族」での名優 加藤武さんの名ゼリフですが、それ当たってると思うんですよね。
「よし、分かった!」は加藤武さんの決まり文句(笑)
で、「星を継ぐもの」では今の時代にもこの地球には2種類の人間がいることが明らかにされます。
そして、その2種類の片方が、もう一方である我々大多数の人間がその科学技術を高度に発展させることを快く思っていない勢力、もしくはその勢力に操られている人間達なのです。
そして彼らが、事件、事故、戦争、虐殺、暗殺を引き起こし、人類の発展に歯止めをかけているのです。原爆の発明もそうかも知れないし、原発の様な一度事故が起こったら制御不能なものを開発させてしまったのも彼らの仕業かも知れません。
つまり、人類がこれ以上発展されると困る誰かが、古代からこの宇宙のどこかにいる訳なんですね。
この小説ではもちろん具体的には言及されていませんが、作者のJPホーガンは特定の宗教開祖や大量虐殺を行った為政者、狂信的軍国主義者、さらに具体的にいえばJFK殺害の真犯人らを読者に想像させたかったのかも知れません。
そう言う事を考えると、ISを始めとするこの時代の狂信的な宗教集団もこの2種類の「もう一方の人間」達なのか?と思ってしまう訳なのです。
「星を継ぐもの」は単なる娯楽小説ですが、フランスを始め世界各国で頻発している事件に接するにあたり、この小説が訴えかけている人間の本質を考えたくなる今日この頃です。
http://www.amazon.co.jp/dp/448866301X
2015年11月22日
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