今回の書評は言わずと知れた石原慎太郎氏の「天才」にスポットを当てて
みたいと思います。平たく言えば、総理大臣田中角栄の人物伝です。田中
角栄という人は私にとっても大変興味尽きない人で、今までにも各種の田
中角栄伝を読みましたが、鄙には稀な宰相だと思います。
今この時代に彼が生きていたらら、北朝鮮問題、中国問題、或いは日米関
係等どのように進めて行ったのかと、つい思いを馳せてしまいます。この
小説でも生い立ちから死ぬまで、比較的時系列に沿って書かれております
が、何せ中身のそうとう濃い人物だけに、1冊の本で全てを語るという風に
は参りません。紙数などの関係で深堀出来ない部分は仕方ないと思います。
私がこの本を読んで素直に良いなあと思ったのは、一人称の文体で書かれ
ている事です。一人称にする事でその時その時の彼の心情が、臨場感を持
って蘇って来ます。田中角栄という政界の大物を表現するには、ピッタリ
と言えるでしょう。
物語は幼少の頃どもりでいじめられた事、苦労して自分の建設会社を作っ
た事、仕事の関係から立候補の機会を得、政治家になった事、とてつもな
い人生勉強をして郵政、大蔵大臣、幹事長、通産大臣と要職を歴任し、54
歳の若さで内閣総理大臣となった経緯がリアルに描かれています。
彼はよく尋常小学校しか出ていない努力の人と言われるが、私は学びの人
と言い直したい。彼はどもり、戦争、経営、そして魑魅魍魎の政治の世界
を克服していく度に、お金や人の使い方、根回しの仕方や場の空気の読み
方等を学んで行ったのだ。今流に言えば大変な人たらしの人と言えそうだ。
彼の偉大な功績と言えば大きく2つで、1つは「日本列島改造」もう1つは
「日中国交回復」だろうと思う。日本列島改造は今でも新幹線網、県空港
、全国の幹線道路網という形で、我々に恩恵を施している。金権政治家、
闇将軍等と叩かれ放題だったが、やるべき事はやっていたという事だろう。
今の政治家に、彼のように熱い情熱を持った政治家がいるだろうか。
最後は日米関係改善を強力に推し進めてしまった結果、米国に睨まれ、
ロッキード事件で嵌められしまったという下りになっているが、真相は
私には判らない。只、彼だったら米国を相手に丁々発止とやりあったで
あろう事は、今までの彼の行動を見ても十分あり得る事だと思う。
最晩年の病気や家庭生活では、やや不幸な事もあったようだが、こんな中味
の濃い人生を75年間もやって来た事が、私には信じられない。
一読をお薦めする。それでは又。
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