2018年02月26日
新聞で使うべきではない安易な表現
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本日は、新聞記者がついつい頼ってしまう安易な表現を一つ紹介します。
これまでも、「〜の方向で調整に入った」「〜の可能性がある」のような言い回しは、将来の見通しを書く上でよく使われるということを実例を挙げて書きました。
似たような表現に「〜が注目される」があります。
〜の部分には、「成り行き」「今後の展開」といった言葉が入ります。
新聞には世間で注目されていることが記事として掲載されますから、書かれていることがどのように進展するか「注目される」のは当然です。
当たり前のことをわざわざ書くのは紙面の無駄遣い。
ですから、この表現は本来使ってはならないはずです。
でも、出てくるのです。
分かっていても、あまりにも便利なので多用してしまうのが、この「成り行きが注目される」です。
便利である理由は明白です。
記者が方向性を示す必要がないからです。
例えば、消費税率引き上げの議論が与党内で始まった段階で、長文の記事を書くと仮定します。
そうなると、リードの締めとしては、「ただ、来年の参院選で与党に不利になることは確実。党内に引き上げ反対の声は根強く、議論は難航が予想される」というパターンが考えられます。
この「難航が(も)予想される」も安易な表現の一つではあるのですが、「難航」という言葉によって「引き上げは難しい」という方向性を出しています(この「難航が」を「難航も」に変えると一段階弱めることになります)。
しかし、実際に取材してみると、与党幹部はそろって「もう党内で大方の了解は取れている」と言ったりします。
「案外、引き上げに向けて議論が進むのかもしれない」という雰囲気が他社の記者と雑談していても感じられるかもしれません。
こうなると、「難航も予想される」ですら、躊躇せざるを得なくなり、記者は苦悩に陥ることになります。
そして、悩んだ挙句、「党内に財政規律を重んじる意見が広がる一方、反発の声も根強い。今後の議論の行方が注目される。」という両論併記に落ち着いてしまうわけです。
でも、これは取材不足の結果です。
私自身、「成り行きが注目される」を使っていたので、自戒を込めて言いますが、きっちりと取材していれば両論併記を回避し、正確な見通しの記事を書くことができるはずです。
私の実体験を基にした話を書きます。
反主流派の人たちは自分の意見を聞いてもらいたいし、支持者にアピールもしたいので、結構ペラペラと話してくれます。過激な表現をオンレコでしゃべったりします。こういうところは、野党議員も同様です。
一方で、党内の有力者に「〇〇議員は『絶対反対だ』と言って強硬な姿勢を変えていませんね」と聞くと、「へえ、あいつ、まだそんなこと言ってるのか」と余裕の表情で答えるかもしれません。
ここで、もしあなたがその党内有力者に信頼されているなら、「実は〇〇は次の選挙に出るつもりがない。体調が良くない。息子に継がせたいんだ」という一言を聞くことができるかもしれません。
こんな言葉を聞けば、もはや「成り行きが注目される」に頼る必要はありません。
なぜなら、「息子に継がせたい」とは、「執行部の方針に従わなければ、息子は次の選挙で党公認候補になれない」という意味だからです。
つまり、反対派の筆頭議員が裏では執行部と気脈を通じて落とし所を探っているということです。
ならば、「〇〇議員らは強く反対しているが、財政規律を重視する見方が広がっており、消費税率引き上げが優勢となっている」と自信を持って書けば良いのです。
こうすれば、反対派議員の表向きの言い分を紹介した上で、正確な見通しを読者に伝えることがとができます。
私が経験したのは、消費税率引き上げに関する取材ではありませんでしたが、この例え話と同じようなことがありました。
引き続き質問をお待ちしています。
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〜の部分には、「成り行き」「今後の展開」といった言葉が入ります。
新聞には世間で注目されていることが記事として掲載されますから、書かれていることがどのように進展するか「注目される」のは当然です。
当たり前のことをわざわざ書くのは紙面の無駄遣い。
ですから、この表現は本来使ってはならないはずです。
でも、出てくるのです。
分かっていても、あまりにも便利なので多用してしまうのが、この「成り行きが注目される」です。
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記者が方向性を示す必要がないからです。
例えば、消費税率引き上げの議論が与党内で始まった段階で、長文の記事を書くと仮定します。
そうなると、リードの締めとしては、「ただ、来年の参院選で与党に不利になることは確実。党内に引き上げ反対の声は根強く、議論は難航が予想される」というパターンが考えられます。
この「難航が(も)予想される」も安易な表現の一つではあるのですが、「難航」という言葉によって「引き上げは難しい」という方向性を出しています(この「難航が」を「難航も」に変えると一段階弱めることになります)。
しかし、実際に取材してみると、与党幹部はそろって「もう党内で大方の了解は取れている」と言ったりします。
「案外、引き上げに向けて議論が進むのかもしれない」という雰囲気が他社の記者と雑談していても感じられるかもしれません。
こうなると、「難航も予想される」ですら、躊躇せざるを得なくなり、記者は苦悩に陥ることになります。
そして、悩んだ挙句、「党内に財政規律を重んじる意見が広がる一方、反発の声も根強い。今後の議論の行方が注目される。」という両論併記に落ち着いてしまうわけです。
でも、これは取材不足の結果です。
私自身、「成り行きが注目される」を使っていたので、自戒を込めて言いますが、きっちりと取材していれば両論併記を回避し、正確な見通しの記事を書くことができるはずです。
私の実体験を基にした話を書きます。
反主流派の人たちは自分の意見を聞いてもらいたいし、支持者にアピールもしたいので、結構ペラペラと話してくれます。過激な表現をオンレコでしゃべったりします。こういうところは、野党議員も同様です。
一方で、党内の有力者に「〇〇議員は『絶対反対だ』と言って強硬な姿勢を変えていませんね」と聞くと、「へえ、あいつ、まだそんなこと言ってるのか」と余裕の表情で答えるかもしれません。
ここで、もしあなたがその党内有力者に信頼されているなら、「実は〇〇は次の選挙に出るつもりがない。体調が良くない。息子に継がせたいんだ」という一言を聞くことができるかもしれません。
こんな言葉を聞けば、もはや「成り行きが注目される」に頼る必要はありません。
なぜなら、「息子に継がせたい」とは、「執行部の方針に従わなければ、息子は次の選挙で党公認候補になれない」という意味だからです。
つまり、反対派の筆頭議員が裏では執行部と気脈を通じて落とし所を探っているということです。
ならば、「〇〇議員らは強く反対しているが、財政規律を重視する見方が広がっており、消費税率引き上げが優勢となっている」と自信を持って書けば良いのです。
こうすれば、反対派議員の表向きの言い分を紹介した上で、正確な見通しを読者に伝えることがとができます。
私が経験したのは、消費税率引き上げに関する取材ではありませんでしたが、この例え話と同じようなことがありました。
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