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posted by fanblog

2016年01月05日

食事のときの姿勢〜テーブルでの食事B〜

食事の場面でのテーブルとイスの重要性については、前回お伝えした通りです。


まだ読まれてない方はこちらから先に読むことをおすすめします。

食事のときの姿勢〜テーブルでの食事@〜

食事のときの姿勢〜テーブルでの食事A〜


今回は、「車イスに座った状態での食事について」お伝えしていきます。




車イスは食事用のイスに向かない

みなさんの職場にも、車イスに座ったまま食事をされている方はいらっしゃいませんか?


まず始めにお伝えしておきたいのは、テーブルの高さやイスの高さが合っていないのと同様に、車イスに座った状態で食事をしてはいけないということです。


車イスは基本的に、食事用のイスには向いていません。


その理由は以下の3点です。


@車イスのフットサポート(フットレスト)に足を乗せたまま食事をするにはいくつかデメリットがあること

A普通のイスとは違い、車イスの座面は安定しないものが多いこと

Bテーブルの高さと車いすの高さを合わせにくいこと




ひとつずつ解説していきましょう。


フットサポートに足を乗せた状態での食事について

そもそも、車イスのフットサポートはなんのためについているのかをご存知でしょうか?


フットサポートの本来の役割は、移動のときに足を巻き込んでケガをしないようにするためについている足乗せです。


車イスに座っている入居者は、その足乗せにただ足を乗せているというだけの状態です。


人間は本来、両足にしっかりと体重がかかるようにすることで、身体が目覚めると言われています。


しっかりと体重をかけるには、床に両足をつけて、自分の体重をその両足で支えるようにしなければなりません。


フットサポートに足を乗せただけでは体重がかかりませんから、覚醒を促すためにもフットサポートから足を下ろして、しっかりと床に足をつけることが大切です。


フットサポートは床の代わりにはならないということを、まずは理解しておきましょう。



施設でよく見かける光景として、車イスのフットサポートから片足だけ落ちたままの状態の方や、しっかりと両足は乗っていても姿勢が後方にのけ反った状態になっている方を見かけるときがあります。


フットサポートに足を乗せていると、重心は後方にかかりやすくなり、そのためのけ反ったような姿勢になってしまいます。


これは食事をするときの正しい姿勢には程遠いものです。


足がフットサポートから落ちていると姿勢が片側に崩れやすくなりますし、姿勢が後方にのけ反った状態というのは、飲み込みにくく、誤嚥の危険性が高くなるためです。



だったらフットサポートを上げて、床に足をつけた状態で食事をすればいいと考える方もいらっしゃるでしょう。


しかし、車イスの座面は普通のイスに比べると奥行きがあります。仮に、しっかりと車いすの奥のほうに座ってもらったとしたら、床に足がつかなくなる場合もあります。


きとんと床に両足がつくようにするためには、お尻の位置を座面の前のほうにずらさないといけないということになります。


そうなると今度は背中にサポートがないため、食べるときに身体が後方にのけ反りやすくなりますし、車イスからのずり落ちの危険性も高くなります。


つまり、フットサポートに足を乗せていようといまいと、食事をするのに車イスは向いていないと言えます。




車いすの座面が食事用のイスに向かない理由

車イスの座面と、普通のイスの座面とでは大きく違うところがあります。


それは、座面に天板があるかないかということです。


というのも、これには普通のイスと車イスとでは決定的に違う、ある理由が関係しています。


その理由というのが、「イスとしての機能の違い」です。


普通のイスは、座り心地を良くするために座面の下には天板があります。座ることを目的に作られているためです。


それに対して車イスは、折りたたんで持ち運べるという機能があるため、天板はついていません。


車イスを車に積みやすくしたり、普段使わないときにかさばらないようにするための機能で、車イス特有の機能と言えます。


そのため、座面も折りたためるようにやわらかい素材になっていることが多いのです。


そもそも車イスは足の不自由な方のための移動用として作られたものですので、座り心地を追及されてはいません。ですので、天板も当然必要ありませんでした。


自分の職場の車イスを想像していただくとイメージしやすいと思いますが、クッションなどが敷いてあっても硬い天板のある車イスはそうそうないと思います。


しかし、この天板があるかないかで、姿勢の安定性に大きく影響してくるということをご存知でしょうか?



人間の骨盤の形をイメージしてください。


人間の骨盤(座骨部分)は、ゆるいWの形になっていますので、基本的に座骨部分で身体のバランスを取ることになります。


天板があると座骨部分には均等に体重が乗り易くなりますが、天板がない車イスの座面は少し下にたわんでいますので、座る位置によってそのバランスは非常に不安定になりやすいということが想像できると思います。


つまり、車イスが食事用のイスに向かないのは、座位のバランスが取りにくいためというわけです。


車イスの高さ=テーブルの高さではない

車イスで食事をされる方は、テーブルが高すぎる傾向にあります。


その原因は、入居者の食べやすいテーブルの高さではなく、車イスに高さを合わせているためです。


というのも、車イスにはアームサポート(アームレスト)がついています。これが邪魔になります。


たとえば、車イスに座っている入居者が、自分に合った高さのテーブルで食事をするとします。ずり落ちないように車イスには深く腰かけてもらうと、入居者とテーブルとの距離が開き過ぎてしまいました。

ちょうど食べやすい距離になるようにするには、もっと近づけないといけませんが、アームレストが邪魔になりこれ以上テーブルには入りません。

そうなると、車イスにもっと浅く座ってもらうか、アームサポートが入る高さのテーブルに移ってもらうかということになります。

浅く座るとずり落ちのおそれがあるため、結局その入居者は車いすのアームサポートがあるばかりに、自分に合わない高さのテーブルで食事をすることになりました。




車イスで食事をすると、このようなことが起こり得るということです。



大切なのは、入居者に合ったテーブルの高さで食事をしていただくことです。


そして足が床にしっかりと着く高さのイスに座って、正しい姿勢で食事をしていただくことです。



以上の3点の理由から、車イスは食事用のイスには向かないということがお分かりいただけると思います。




しかし、認知症もなく、しっかりされている入居者の中には、どうしても車イスのほうがいいという方もいらっしゃいます。


そのような方には薄い天板の入ったクッションの使用を検討してみましょう。


ご本人も姿勢が安定しやすくなり、普段使いとしても使用していただくことができます。




テーブルの高さとイスの高さを調整して、車イスからイスに座り直していただくことは、介護士さんにとっては大変になるかもしれません。


それでも、しっかりと安定した姿勢で食事をしていただけるようにするためには必要なことです。


車イスからイスへの移乗を食事以外でも意識してやっていただくことは、入居者に身体が傾くクセをつけないようにする効果もあります。



美味しい食事を、安全に召し上がっていただくようにするためには、現場の介護士さんの食事に対する意識を高めていくしかありません。


食事を通して、現場の介護サービスの質をより良いものに変えていくためにも、もう一度「テーブル」「イス」「車イス」については考えていただきたいと思います。




食事形態について、こちらの記事にまとめています。合わせてお読みいただくと食事に対する理解がより深まります。
食事の種類(食事形態)について

食事形態の見直しについて



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介護福祉士、社会福祉士、ケアマネージャー、看護師の資格を持っています。現在はとある施設で職員教育の役職に就き、それを主な職務にしつつ、大好きな現場にもちょくちょく足を運んで、業務も手伝っています。日々、介護に対してのカンが鈍らないよう勉強中です。
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