アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2023年04月27日

【短編小説】『彩、凜として空、彩(かざ)る』2

【MMD】Novel Sai Sora Kazaru SamuneSmall1.png

PART1からの続き

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
<登場人物>

水月 彩凜空(みなづき ありあ)
 主人公
 大企業の社長令嬢
 会社の跡継ぎとして厳しく教育されるが
 親友の影響でモデルになる夢を抱く

姫川 理愛(ひめかわ りあん)
 主人公の幼なじみで親友
 両親に内緒でモデルを目指す主人公を支える、唯一の理解者
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【第2話. 二人三脚のスカウト】



2人で練習する日々が続いて5年目。
私と理愛(りあん)は同じ高校に入った。
幸い、練習のことは両親にバレていないようだ。

私の身長は175センチまで伸びていた。
体型にも気を使い、来たるべき日に備えた。

この頃から、私は”ある計画”のため、
オーディション情報も調べるようになった。

そのために、表向きは地味な生活を送った。

学校の成績は上位を維持し、
親の敷いたレールに乗るフリを続けた。

秘密の練習を終えて、帰宅するときが1番つらかった。
私を愛していない人間が待つ”鳥カゴ”へ帰るんだから。



ーーーーー



彩凜空(ありあ)
「えぇ?!スカウト?!」


社長
『うん。ぜひウチのモデル事務所に入ってほしい。』


いつものように、理愛(りあん)と河川敷で練習していると、
長身の男性から声をかけられた。

男性が差し出した名刺に、事務所の名前が書かれていた。

私たちがいつも読んでいるファッション雑誌のモデルさんが、
多く所属している事務所だった。


彩凜空(ありあ)
「ど、どうして私を…?」
「私、オーディションを受けた経験もないですよ?!」


社長
『訳ありなのは察してたよ。』
『きみたちがここで練習しているのを、たまに見てたんだ。』
『スタジオで練習できない理由があるのはすぐわかった。』


理愛(りあん)
『それだけでわかるんですか?!』


社長
『芸能界には訳ありの人が多いからね。』
『たとえば金銭面や、親の反対で練習環境が確保できないとか。』


ギクリ。

社長
『5年前のファッションショーを観に来てくれたよね?』


彩凜空(ありあ)
「は、はい。私のこと、覚えてくれたんですか?」


社長
『もちろん。そのときに一目惚れしたんだから。』
『この子は化ける!って思った。』
『すぐにスカウトしたかったけど、事情を察して見守ってたんだ。』


彩凜空(ありあ)
「ありがとうございます、光栄です…。」
「少し、私の家庭事情をお話してもいいですか…?」


実は、私は以前にも
複数のモデル事務所からスカウトを受けていた。

けど、私の家庭事情を話すと、
どこも面倒ごとを嫌って離れていった。


本当は今すぐに承諾したい。
今すぐ、モデル活動がしたい。
けど、今回も、きっと…。

彩凜空(ありあ)
「私が18歳になるまで、待ってもらうことはできますか?」
「成人して、自分で進路を決められる18歳まで…。」


事務所から、次の人材を探す時間を奪うわけにはいかない。
未成年の私を所属させて、親とのいざこざに巻き込みたくない。

私は、断られる覚悟を決めた。
ところが…。


ーー


社長
『もちろん待つよ。』


彩凜空(ありあ)
「え…?!」


社長
『こっちは5年もきみに惚れてるんだ。』
『あと1、2年くらいなんでもないよ。』
『どうしても、きみはウチでトップモデルに育てたい。』


彩凜空(ありあ)
「で、でも私、他の事務所からは断られて…。」


社長
『確かにトラブルを避けたい他社の気持ちもわかる。』
『けど、それ以上にメリットを感じたら、親の説得なんていくらでもする。』
『というのが企業の代表としての本音。』


彩凜空(ありあ)
「社長さん…。」


社長
『それに、せっかくの才能を本人以外の邪魔で潰されるところを見たくない。』
『目指すものがあるなら、本人が諦めない限り応援したい。』
『というのが個人的な本音。だから待ってるよ。』


彩凜空(ありあ)
「ほ、本当にいいんですか…?」


社長
『うん。成人したら、きみの判断で来てくれたら嬉しい。』
『ウチには親との揉め事を抱えたモデルさんが他にもいる。』
『もし住むところがないなら社員寮もある。もちろん女子寮だよ。』


理愛(りあん)
『よかったね!彩凜空(ありあ)!』


彩凜空(ありあ)
「うぅ…(泣)あり、ありがとうございます…!!」


社長
『それから、理愛(りあん)さん。』


理愛(りあん)
『は、はい!』


社長
『高校卒業後の進路は決まってる?』


理愛(りあん)
「就職しようと思ってます。」


社長
『それなら、もしよかったらウチでマネージャーをやってくれないか?』
『もちろん、彩凜空(ありあ)さんの。』


理愛(りあん)
『わ、私がマネージャーを?!』


社長
『きみはずっと、彩凜空(ありあ)さんを支えてきたんだろう?』
『小学生の頃からずっと。』


理愛(りあん)
『見てて…くれたんですか…!』


社長
『見てたよ。きみたちは最高のコンビだから。』


理愛(りあん)
『あ、ありがとうございます!』
『私、これからも親友を支えたいです!』


社長の熱烈なラブコールを受け、
私たちは夢へのスタートラインに立った。



ーーーーー



それからの日々は、もどかしさとの戦いだった。

私は今すぐモデルとして活動したい気持ちを抑え、
18歳の誕生日を待った。

成人すれば、親の許可なんて関係ない。
親が強硬手段に出てきても戦えると信じて。

そして迎えた高校3年生の冬、
私はついに18歳になった。

年が明け、親が決めた大学を受験する直前、
私はついに”ある計画”を決行した。

塾通いを装って家を抜け出し、
モデル事務所が用意してくれた社員寮へ引っ越した。

GPS情報で居場所が把握された自分の携帯は、
電源を切って自宅に置き去りにした。


しばらくは社用の携帯を貸してもらい、
稼ぎながら自分用の携帯を契約することにした。



これが、私の計画。
大学受験をすっぽかし、
家出するようにモデル事務所へ就職するという。

そして、私の復讐。
親の鳥カゴとレールをぶち壊し、自由を勝ち取るための。




これは後から知ったことだけど、
娘が突然消えて、両親が最初に言った言葉は、

「もうすぐ受験の日なのに。」

だそうだ。

親が心配したのは、私のことではなく、
「親が決めた大学に私を入れること」だった。

(どこまでも…救えない人たちね…。)

私は両親への軽蔑を胸の奥へしまい込み、
レッスンに励んだ。

4月になり、
高校を卒業した理愛(りあん)が入社してきた。

彼女は一人暮らしすると思いきや、あえて社員寮へ入寮した。
2人部屋で、1人分が空いていた、私の部屋へ。

理愛(りあん)
『へへ、よろしくね先輩!』


彩凜空(ありあ)
「先輩って、3ヶ月だけじゃん(笑)」


彼女とのたわいない冗談が愛しい。
社長の厚意には、本当に感謝しかない。



PART3へ続く

⇒この小説のPV

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11959763

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
検索
プロフィール
理琉(ワタル)さんの画像
理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
プロフィール
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。