アフィリエイト広告を利用しています

広告

posted by fanblog

2023年02月21日

【短編小説】『もう1度、負け組の僕を生きたいです』1

1.あなたは、人生の勝ち組になりたいですか?

僕の名前は有坂 桃羽(ありさか とわ)
社会人2年目の24歳、一人暮らしのフリーターだ。

大学を卒業後、そこそこ大手の会社に入ったが、
中身はけっこうなブラック企業だった。

残業が続き、日付が変わってから帰宅する毎日。
結局、僕は過労が原因でうつ病になり、3ヶ月で退職した。

半年ほど休養、今は何とか働けるようになり、
アルバイトで食いつなぐ毎日だ。

休養期間は正直しんどかったので、
家族に頼りたかった。

だが、僕の両親は昔から子どものことを
”自慢のためのアクセサリー”だと考えていた。

そのためか、
「成功しないお前は家に入れる価値がない」と言われ、
助けてもらえなかった。



何をやっても上手くいかない、熱中できる趣味もない。
毎月なんとか食いつないで、給料日前はモヤシで凌ぐ。
彼女いない歴=年齢も24まで延びた…。

僕はそんな毎日に鬱々としていた。
それでも、誰かとのつながりがほしかった。

こんなときに見てはいけないとわかっていても、
寂しさからSNSを覗いてしまった。

1分1秒ごとに流れてくるのは、
・自分よりもはるかにイケメンで成功している人
・美人できらびやかな生活を送っている人

イヤでも自分の生活と比べてしまい、
惨めさが募るだけだ。

「僕…何のために生きてるんだろう…。」

僕は人生に希望を持てないまま、惰性で生きていた。



ーーーーー



そんなある休日。
用事も、遊ぶお金もない僕は、街中をぶらぶらしていた。

華やかなショーウィンドウを見ても、
”やればできる”的な広告を見ても、僕は卑屈だった。

「どうせ買えないんだから…。」

僕は悔しさを押し殺し、その場を立ち去った。

「あーあ…僕の人生、負け組確定だ…。」
「一度でいいから、勝ち組に生まれてみたかったなぁ…。」


僕は投げやりに呟いた。



「街へ出てみたけど、惨めになるだけだ。もう帰ろう。」

そう思ったとき、
ふと、ある喫茶店が目に入った。

「あれ?こんなところに喫茶店なんてあったかな…?」

僕は不思議に思ったが、
レトロな雰囲気に惹かれ、お店に入ることにした。

「へぇ、少し寂れた感じが落ち着くなぁ。」

求めていた環境にピッタリはまった感覚。
同時に、なぜか既視感を覚えた。

「いいお店、見つけたな。通っちゃおうかな。」

僕は嬉しくなり、コーヒーを注文しようと店員さんを呼んだ。
すると、



『お帰りなさいませ。お待ちしておりました、坊っちゃん。』



燕尾服を着た初老の紳士が、僕にそう言った。

「…えっと…。あの、どちらさまでしょうか?」

『私はあなたの執事をしております。』
『坊っちゃんのお帰りをお待ちしておりました。』

「ぼ、僕の執事…?」
「僕はこの通り平民だし、執事を雇っていたなんて聞いたことないですよ?」

『はっはっはっ、信じられないのも無理ありませんな。』
『私がお仕えし始めたとき、坊っちゃんはまだ小さかったですから。』

「…?」

感情の整理が追いつかない。
実家にいたときも、僕はこの人に会ったことはなかった。
あのクソ親どもに、使用人を雇うような甲斐性があるとも思えない。



ーー



『お待たせしました。』

僕は困惑したまま、執事が運んでくれたコーヒーを口にした。

「美味しいです。それにお店の雰囲気もすごく気に入りました。」

『ありがとうございます。』

「あなたが僕の執事というのは信じられませんが、お店には通いたいです。」

『坊っちゃんに気に入っていただけて何よりです。』
『ところで…。』

刹那、紳士の目つきが変わった。



『もしも人生を3回、やり直せるとしたら、どうされますかな?』

「3回?ま、まぁ、やり直せるならしたいですよ。」
「でも、そんなことできるわけないです。」

『確かに信じられないでしょう。ですが坊っちゃん。』
『今、自分の人生に絶望しておられますね?』
『自分は負け組だ、と。』


「ど、どうしてそれを?!」

『長年お仕えしてきたのです。それくらいわかりますよ。』
『それよりも、こうは思いませんか?』

『もし、生まれる時代や境遇が違っていたら。』
『もし、自分が望む時代や家に生まれ変われるとしたら、と。』


「確かに思います、今がつらすぎるから…。」
「せめてリセットボタンが押せるなら、って考えちゃいますよ…。」

『わかりました。』
『坊っちゃんの願い、私が叶えて差し上げます。』

「どういうことです?」

『そのままの意味ですよ。』
『坊っちゃんが望むなら、お好きな時代と家柄を3つ、お選びください。』
『その時代に生まれ直して、人生をリセットするのです。』


「えぇ?!」
「そ、そんなことできるわけが…?!」

話がにわかにオカルトじみてきた。
僕は困惑し、怪しい商売を疑い始めた。

「できるとしても、代償は僕の命とか、魂とか、そういう話ですよね?!」
「それとも、すごく高額なツボを買わされるんですか…?!」

『お代なんて要りませんよ。』
『3回のうち、納得できる人生になれば、そこで楽しく生きてください。』
『もし3回やり直して気に入らなければ、現代へ帰ってこれます。』
『人生の勝ち組に…なりたいのでしょう?』

「…う…。なり、たいです…。」

どうせ将来の目標も、未来への希望もない人生だ。
現実に絶望して生きるくらいなら、騙されたって構わない。

僕は覚悟した。

「人生のリセット、させてください。」

『承知いたしました。』
『それでは1回目に生まれ直したい時代をお選びください。』

「わかりました。希望する時代は…。」



ーー



PART2へ続く

この記事へのトラックバックURL
https://fanblogs.jp/tb/11875221

※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック
検索
プロフィール
理琉(ワタル)さんの画像
理琉(ワタル)
自閉傾向の強い広汎性発達障害。鬱病から再起後、低収入セミリタイア生活をしながら好きなスポーツと創作活動に没頭中。バスケ・草野球・ブログ/小説執筆・MMD動画制作・Vroidstudioオリキャラデザインに熱中。左利き。 →YouTubeチャンネル
プロフィール
最新記事
カテゴリーアーカイブ
×

この広告は30日以上新しい記事の更新がないブログに表示されております。