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2014年02月01日
月光と闇
常に強烈な熱気を放ち続ける大理石でできた剣。冷気を司る月神の加護を受ける者のみが熱に屈することなく剣を握ることができるという。
ある屈強な戦士がこの剣を手に戦場に向かった。雄叫びを上げ最前線へ向かう戦士。その目の前に幾百の弓兵部隊が…。彼の体を数百もの矢が貫く。
しかし!彼の体からは一滴の血も流れず、それどころか確実に心臓を貫いているのに、その力はいっこうに衰えない。戦いは彼の軍が勝利を収めた。
勝利を手に駐屯地に戻る戦士。そこで剣を置くと同時に彼は氷に包まれて絶命する。月神の強い魔力が彼の命を永遠に奪ってしまったのだ。
ある屈強な戦士がこの剣を手に戦場に向かった。雄叫びを上げ最前線へ向かう戦士。その目の前に幾百の弓兵部隊が…。彼の体を数百もの矢が貫く。
しかし!彼の体からは一滴の血も流れず、それどころか確実に心臓を貫いているのに、その力はいっこうに衰えない。戦いは彼の軍が勝利を収めた。
勝利を手に駐屯地に戻る戦士。そこで剣を置くと同時に彼は氷に包まれて絶命する。月神の強い魔力が彼の命を永遠に奪ってしまったのだ。
2014年02月02日
鉄塊
この世界で最も大きな剣。普通の人間では振るうどころか動かすことすらできず、今までこの剣を使おうと思う人間はいなかった。
この大剣を所持していた「バッカス将軍」は、弱者の命でさえも容赦なく奪う冷血漢で、自分の力を誇示するために殺した敵の鎧を溶かし作り上げた。
命を奪う度に重くなる大剣。次第に持ち運ぶのさえも困難になり、誰にも、当の本人さえも扱えなくなっていった。
ある朝、バッカス将軍の惨殺死体が見つかる。屍の傍らには血に染まり肉片の付いたこの鉄塊。いったい誰がこの剣を振るったのであろうか…
この大剣を所持していた「バッカス将軍」は、弱者の命でさえも容赦なく奪う冷血漢で、自分の力を誇示するために殺した敵の鎧を溶かし作り上げた。
命を奪う度に重くなる大剣。次第に持ち運ぶのさえも困難になり、誰にも、当の本人さえも扱えなくなっていった。
ある朝、バッカス将軍の惨殺死体が見つかる。屍の傍らには血に染まり肉片の付いたこの鉄塊。いったい誰がこの剣を振るったのであろうか…
2014年02月03日
焔の簧
「火炎」の意味を持つ剣。波状の刃は相手の傷口を広げ致命傷を負わせる。元々、この剣はどこにでもある普通の剣だったという。
太古の時代、竜との果たし合いに挑んだ者がいた。灼熱の炎に溶かされ続ける刀身。戦士は最後の力を振り絞り竜の舌を引き抜き刀身に巻きつける。
刀身は瞬く間に炎に包まれ、竜の炎と互角の力を持つようになる。しかし、その灼熱ゆえ最後には竜も兵士も灰となり、この剣だけが残った。
以来、この剣には竜の炎の力と強力な魔力が宿り、力のないものが振るおうとするとたちまち紅蓮の炎にその身が包まれてしまうという。
太古の時代、竜との果たし合いに挑んだ者がいた。灼熱の炎に溶かされ続ける刀身。戦士は最後の力を振り絞り竜の舌を引き抜き刀身に巻きつける。
刀身は瞬く間に炎に包まれ、竜の炎と互角の力を持つようになる。しかし、その灼熱ゆえ最後には竜も兵士も灰となり、この剣だけが残った。
以来、この剣には竜の炎の力と強力な魔力が宿り、力のないものが振るおうとするとたちまち紅蓮の炎にその身が包まれてしまうという。
2014年02月04日
信義
遥か東の国の都に歌を詠むことで生計を立てている歌人がいた。自分の才能に限界を感じ始めていた彼は、ある日妖怪と契約をしてしまう。
妖怪の力により、次々と新しい歌を発表する歌人。どの歌も素晴らしく、都中の評判となる。ついには将軍家のご指南役にまで昇進した。
ある日、妖怪が再びやってきて歌人に言った。「おまえの一生分の才能はもう使い果たした。おまえは二度と歌を詠むことはできないだろう。」
妖怪の言ったとおり、彼は一行の歌も詠めなくなってしまう。世を儚んだ彼は、自害してしまった。その剣は今でも彼の血で鈍く光っているという。
妖怪の力により、次々と新しい歌を発表する歌人。どの歌も素晴らしく、都中の評判となる。ついには将軍家のご指南役にまで昇進した。
ある日、妖怪が再びやってきて歌人に言った。「おまえの一生分の才能はもう使い果たした。おまえは二度と歌を詠むことはできないだろう。」
妖怪の言ったとおり、彼は一行の歌も詠めなくなってしまう。世を儚んだ彼は、自害してしまった。その剣は今でも彼の血で鈍く光っているという。
2014年02月05日
貴正
初めて彼に出会った時、鼻を突く異臭と苛立ちさえ覚えるみすぼらしい坊主姿からはとても名高い君主の下に仕えていた武士とは思えなかった。
脇に差した愛刀がかろうじて彼の話が本当なのかもしれないと思わせた。いったい何が彼をここまで落ちぶれさせたのであろうか。
彼の話によると、お家騒動に嫌気が差し自ら浪人になったのだという。しかし、見てくれに気を使い剣の修行を怠った武士に世の中は厳しかった…。
「あの時…掬鯖錆家とうまくやっていれば……。」そう言いながら彼はまた空をみつめる。今もどこかで彼は途方に暮れているのであろう…。
脇に差した愛刀がかろうじて彼の話が本当なのかもしれないと思わせた。いったい何が彼をここまで落ちぶれさせたのであろうか。
彼の話によると、お家騒動に嫌気が差し自ら浪人になったのだという。しかし、見てくれに気を使い剣の修行を怠った武士に世の中は厳しかった…。
「あの時…掬鯖錆家とうまくやっていれば……。」そう言いながら彼はまた空をみつめる。今もどこかで彼は途方に暮れているのであろう…。
2014年02月06日
カイムの剣
カイムの父の形見の剣。国王であった父は強く優しい存在で、幼い頃からこの剣を持ち闘う彼の姿にカイムは憧れていた。
しかし、平和だったカイムの国にも帝国の影が忍び寄る。帝国は日々勢力を拡大し、やがてカイムの城にブラックドラゴンの軍勢が襲い掛かる。
「カイム…フリアエを連れて逃げろ」襲撃された城の中で、父はカイムにそう告げる。カイムが返事をする間もなく、目の前で父と母が惨殺された。
「国を滅ぼし、父と母を殺した帝国とドラゴンを倒す!」 亡き父の形見を手にカイムは誓う。たとえそれが憎悪の炎で彼を焼き殺そうとも。
しかし、平和だったカイムの国にも帝国の影が忍び寄る。帝国は日々勢力を拡大し、やがてカイムの城にブラックドラゴンの軍勢が襲い掛かる。
「カイム…フリアエを連れて逃げろ」襲撃された城の中で、父はカイムにそう告げる。カイムが返事をする間もなく、目の前で父と母が惨殺された。
「国を滅ぼし、父と母を殺した帝国とドラゴンを倒す!」 亡き父の形見を手にカイムは誓う。たとえそれが憎悪の炎で彼を焼き殺そうとも。
2014年02月07日
人斬りの断末魔
人を切る快感に溺れ、毎夜罪もない者の命を奪い、その血でこの世のものとは思えぬ素晴らしい絵を描き続けた悲しき哀れな絵師の剣。
絵師には夢があった。「僕の絵で世の人々の気持ちが安らげばいい」そんな気持ちで絵を描き続けていたのだが…。
彼の芸術は認められず、そればかりか変人として街の人々から冷たい視線を受け続ける。絵師の繊細な心は次第に崩壊していった。
「赤!赤い色!!アガーッ!!」叫びながら人々を殺め続ける哀れな絵師。最後は自らに刃を刺し、笑顔で息絶えた…
絵師には夢があった。「僕の絵で世の人々の気持ちが安らげばいい」そんな気持ちで絵を描き続けていたのだが…。
彼の芸術は認められず、そればかりか変人として街の人々から冷たい視線を受け続ける。絵師の繊細な心は次第に崩壊していった。
「赤!赤い色!!アガーッ!!」叫びながら人々を殺め続ける哀れな絵師。最後は自らに刃を刺し、笑顔で息絶えた…
2014年02月08日
連合兵士の剣
ある一族が守り続けてきた特殊な製法で鍛え上げられた剣。その製法は決して他者が知ることはなく、一族のものだけに伝えられる術だった。
門外不出の剣の製法を奪いに、この一族に入門した敵国の兵士。兵士はその技法を習得し国へ帰る手筈を整えていた。
しかし、彼には大きな悩みがあった。一族の血を引く娘に恋してしまったのだ。一緒に駆け落ちしようとすすめる兵士。娘も共に歩むことにした…。
一族の元から立ち去る日全てを知った娘は秘術を守るため兵士を切り殺して自らの命を絶つ。そして今も、秘術は一族に伝えられている……。
門外不出の剣の製法を奪いに、この一族に入門した敵国の兵士。兵士はその技法を習得し国へ帰る手筈を整えていた。
しかし、彼には大きな悩みがあった。一族の血を引く娘に恋してしまったのだ。一緒に駆け落ちしようとすすめる兵士。娘も共に歩むことにした…。
一族の元から立ち去る日全てを知った娘は秘術を守るため兵士を切り殺して自らの命を絶つ。そして今も、秘術は一族に伝えられている……。
2014年02月09日
デボルポポル
姉妹の刀匠 「デボ」 と 「ポポ」 が叩き上げた剣。デボの剛力とポポの繊細さ。王国のどんな鍛冶屋が挑んでも、この二人に勝てるものはいなかった。
ある日、二人の評判を聞きつけ一人の吟遊詩人が現れる。詩人の天使のような美しい容姿とやさしい性格に二人は心を一瞬にして奪われた。
詩人の愛をその身に受けようと必死で剣を作る二人。だがお互いが詩人を求め醜く競いあったために出来上がるものはなまくらな刀ばかり。
それを見かねた詩人は二人を嫁に迎え入れる。深い愛情に満たされた姉妹は、更に腕に磨きをかけ、この銘刀 「デボルポポル」 を作り上げた。
ある日、二人の評判を聞きつけ一人の吟遊詩人が現れる。詩人の天使のような美しい容姿とやさしい性格に二人は心を一瞬にして奪われた。
詩人の愛をその身に受けようと必死で剣を作る二人。だがお互いが詩人を求め醜く競いあったために出来上がるものはなまくらな刀ばかり。
それを見かねた詩人は二人を嫁に迎え入れる。深い愛情に満たされた姉妹は、更に腕に磨きをかけ、この銘刀 「デボルポポル」 を作り上げた。
2014年02月10日
護衛隊士の誉
聖人の護衛隊士達が所持していた剣。飾りのない質素な造りで、幾度となく戦闘をくぐり抜けてきたにも関わらず折れることはなかった。
聖人を護衛するのは14人の少年少女達。いずれも親に捨てられた孤児ばかりである。そんな子らと家族同然として聖人は共に生きてきた。
あるとき数十人の山賊に襲われた一行は、聖人を守るために決死の戦闘を行う。傷ついても何度も立ち上がり、聖人の乗る馬車を守り続ける。
やがて山賊と共に護衛隊士は全滅。救われた聖人はその働きに涙し、この剣を持った者が救われるよう願いを込めて祝福儀礼を施したのである。
聖人を護衛するのは14人の少年少女達。いずれも親に捨てられた孤児ばかりである。そんな子らと家族同然として聖人は共に生きてきた。
あるとき数十人の山賊に襲われた一行は、聖人を守るために決死の戦闘を行う。傷ついても何度も立ち上がり、聖人の乗る馬車を守り続ける。
やがて山賊と共に護衛隊士は全滅。救われた聖人はその働きに涙し、この剣を持った者が救われるよう願いを込めて祝福儀礼を施したのである。
2014年02月11日
解放の剣
自由の象徴としてその時々の英雄が所持していた剣。正義を執行する者への祝福として教会より魔術である「神の槍」を使うことが許されていた。
最初の英雄は、攻め込んできた異国の軍隊を圧倒的な力でせじ伏せた指揮官だった。彼はその手で何人もの敵兵を血に沈めた。
次の英雄は、国王に歯向かう革命軍を打ち破った司令官だった。彼は革命軍のメンバーを次々と捕らえ、その場で処刑していった。
最後の英雄は、異国を侵攻し植民地とした功績をたたえられた将軍だった。占領後、彼は何万人もの罪なき人々を虐殺した。
最初の英雄は、攻め込んできた異国の軍隊を圧倒的な力でせじ伏せた指揮官だった。彼はその手で何人もの敵兵を血に沈めた。
次の英雄は、国王に歯向かう革命軍を打ち破った司令官だった。彼は革命軍のメンバーを次々と捕らえ、その場で処刑していった。
最後の英雄は、異国を侵攻し植民地とした功績をたたえられた将軍だった。占領後、彼は何万人もの罪なき人々を虐殺した。
2014年02月12日
南海の魔神
七つの海を股にかけ商売を行った大商人がいた。商人は新たな大陸を幾つも発見し、巨万の富を築いていった。
ある時商人は、南海の海の底、太古の昔に海中に没した失われし大陸に「闇を呼ぶ剣」と呼ばれる魔剣が埋もれている、という噂を聞きつける。
商人は珍しい剣でまたもや儲けようと、南海へと旅立つ。苦労の末見つけた剣は、魔神を模した石像の口に咥えられていた。
突如剣より無数の火の弾が発生、商人の船は海の藻屑と消えた、数日後商人の亡骸が海中に流れ着く。その手には湾曲した長剣が握られていた。
ある時商人は、南海の海の底、太古の昔に海中に没した失われし大陸に「闇を呼ぶ剣」と呼ばれる魔剣が埋もれている、という噂を聞きつける。
商人は珍しい剣でまたもや儲けようと、南海へと旅立つ。苦労の末見つけた剣は、魔神を模した石像の口に咥えられていた。
突如剣より無数の火の弾が発生、商人の船は海の藻屑と消えた、数日後商人の亡骸が海中に流れ着く。その手には湾曲した長剣が握られていた。
2014年02月13日
ゆりの葉の剣
美しく湾曲した刀身からは考えられない、おそろしい呪いが込められた剣。自らを裏切った恋人を我が身と共に貫いた少女の怨念が宿っている。
この剣に魅入られたものは、己の手が剣から離れなくなり、自らの意思とは関係なく人を殺める。この呪いを解くには自分の腕を切り落とすのみ。
自らの腕を切り落とし呪縛から逃れた者は、その剣に自分の精神が宿り、念じるだけで自由自在に操れるようになる。
腕を切り落とさなくてもすむ唯一の方法は、剣に宿りし少女の魂を魅了することらしいのだが、いまだかつて切り落とさずに済んだ者はいない。
この剣に魅入られたものは、己の手が剣から離れなくなり、自らの意思とは関係なく人を殺める。この呪いを解くには自分の腕を切り落とすのみ。
自らの腕を切り落とし呪縛から逃れた者は、その剣に自分の精神が宿り、念じるだけで自由自在に操れるようになる。
腕を切り落とさなくてもすむ唯一の方法は、剣に宿りし少女の魂を魅了することらしいのだが、いまだかつて切り落とさずに済んだ者はいない。
2014年02月14日
鬼を裂くもの
鬼に家族を惨殺された鍛冶屋が復讐のために鍛え上げた剣。斬りつけた者の魂を、また主の魂を吸い取り破壊の力へと転換する能力を持つ。
腕の良かった鍛冶屋は、王国より「鬼を斬る名剣を打て」との命を受ける。名剣を鍛えるべく苦心する鍛冶屋の家に、突如鬼が現れた。
鬼は「鬼を斬る剣は、怒りと憎しみを持つ者が打たねばならない」と告げ家族を惨殺して去った。鍛冶屋は家族の亡骸を抱き血の涙を流した。
鍛冶屋は家族の亡骸も葬らず、剣を打った。剣が打ち上がり、復讐に燃える鍛冶屋。しかし、その姿は、鬼を斬る剣を持つ新たな鬼の姿だった。
腕の良かった鍛冶屋は、王国より「鬼を斬る名剣を打て」との命を受ける。名剣を鍛えるべく苦心する鍛冶屋の家に、突如鬼が現れた。
鬼は「鬼を斬る剣は、怒りと憎しみを持つ者が打たねばならない」と告げ家族を惨殺して去った。鍛冶屋は家族の亡骸を抱き血の涙を流した。
鍛冶屋は家族の亡骸も葬らず、剣を打った。剣が打ち上がり、復讐に燃える鍛冶屋。しかし、その姿は、鬼を斬る剣を持つ新たな鬼の姿だった。