2016年10月19日
ウォーラーステインの世界システム論‐通信教育部(史学概論リポート)
高松空襲と本土空襲ー市民から見た大東亜戦争とアメリカの戦争犯罪ー【電子書籍】[ 真田まさお ] |
世界規模で歴史を研究
ウォーラーステインの世界システム論‐法政大学通信教育部(史学概論リポート)
かつて、ヨーロッパ列強は世界各地に植民地をつくり世界の主導を握っていた。
アメリカのウッドロー・ウイルソン大統領 (1856〜1924)による14カ条の平和原則の中で植民地の民族自決を認めた。
民族自決の精神はその後、第2次世界大戦を経て戦後身を結び第3世界は独立を勝ち取っていった。
特に1960年代はアフリカで17の独立国が誕生し、1970年代にはほとんどの国が独立を勝ち取った。
しかし、独立を勝ち取った国々のほとんどは貧困に悩み経済的独立は非常に難しいというのが現在の状況である。
これは、現在の世界システムがヨーロッパ列強によって作られた先進資本主義国中心の世界システムのためであると新従属学派の人々は考えた。
新従属学派の人々は先進資本主義国主義の批判をするようになった。
そして、新従属学派の中心となったのはウォーラーステイン(1930〜 )である。
かれは世界システム論を展開していく。
ウォーラーステインの世界システム論は過去を分析し、未来を考えるという特徴を持っている。
そして、始めは、資本主義世界経済の分析として登場し、さらに、国家間システムに注目することで世界政治の分析まで考えていった。
ウォーラーステインによれば、長い16世紀をへて、ヨーロッパは世界に進出して植民地を作りそれを元に資本主義経済を展開させ、世界システムを作り上げていった。
これは、植民地のもつ力、消費力、安い労働力、資源を使い、高利潤の独占的な生産を行い、それによって生まれた資本を列強国家に集中的に独占させるシステムの事である。
このことは、ヨーロッパ列強は儲けて得をし、国家組織を強化して、逆に植民地諸国は損をするシステムでもある。
この状況は脱植民地時代をむかえたにもかかわらず、現在でも継続して、脱殖民地国家は貧困にあえいでいる。
ウォーラーステインの世界システム論は中核、半周辺、周辺という3つの部分に国を分け、この3つにより世界システムが構成されているとした。
大航海時代のスペイン時代に変わり北西ヨーロッパが中核に上がった。
これによりスペインと北イタリアが半周辺に落ちた。
1650年以後はイギリスが世界進出に成功し覇権をにぎり、唯一の中核へと成長する。
1730年〜1917年はイギリスが中核をキープし、半周辺にはフランス、ドイツ、ベルギー、そして、次の時代を予感させるべくアメリカ、ロシア、日本が半周辺へ、また、アジア、アフリカは周辺である。
1870年代ぐらいからイギリスの衰退が始まった。
次の覇権をめぐってドイツとアメリカが長期の抗争を始める。第一次世界大戦〜第二次世界大戦の枢軸列強の敗北により、長い戦いはアメリカの圧倒的な勝利に終わる。
2つの世界大戦の戦火を免れたアメリカは世界システムにおいてもっとも実力を兼ね備えた中核になった。
1960年代にはアメリカの衰退がはじまる。
1970年代にはアメリカが中核をキープ、戦争から完全に立ち直った、ヨーロッパ共同体、日本が中核に、独立後のアフリカは相変わらず周辺、一方ロシアは、ロシア革命後、立ち直り、社会主義の文化圏を作り上げ中核になった。
ここに世界システムはアメリカの資本主義とロシアの社会主義の戦いとなった。
1968年学生反乱の形をとった世界革命、その継続で1989年共産主義は崩壊し、資本主義の勝利に終わった。
しかし、資本主義の近代世界システムの永久的な勝利ではなく、むしろ共産主義崩壊が近代世界システムの崩壊へと向かう始まりになった。
世界システム論が歴史学に与えた影響として、例えば日本の歴史学の主流の一国史観や近代化論は、一国で歴史を考え、細かく細部まで研究することができる。
しかし、他国との繋がりや影響を研究するには難しいものがある。
また、一国史観や近代化論は、時代はかならず進歩する単線的な発展段階説になりやすく、そのため、うまく、説明できない歴史現象が存在する。
例を挙げると、16世紀の東欧で、時代はすでに近代になりつつあり、荘園制は解体しつつあったが、賦役労働を強化した結果、再び農奴制が発生した。(再版農奴制)この様に、実際に歴史は必ず進歩をくりかえしているとは言えず、後退することだってある。
例えば、再版農奴制を世界システム論で考えるとうまく説明することができる。
世界システム論の観点に立てば、西ヨーロッパが工業化したことで、農産物の供給地となった東欧が生産物の増大にともない採用したシステムが再版農奴制である。
再版農奴制の場合は、西欧と東欧を一つの経済圏と考えた時、西欧での不足農産物を東欧が補うといった、きわめて近代的な制度と言うことができるであろう。
歴史学を研究する上で、他の地域との関連性は重要で、世界システム論は歴史を世界全体のレベルで見ることができ、世界を一つとして捉えることに成功したので、歴史の関連性をうまく説明できた。
世界システム論は、世界を一つの経済圏と捉える歴史学である。
問題点として、一国の細部にわたって、研究するには不向きである。
しかし、一国史観は一国の細部にわたって研究するのには適しているので、世界システム論と一国史観をうまく使い分ければ非常によい歴史研究ができるのではないかと思われる。
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