2020年05月10日
有望株選別に役立つ財務諸表の見方
今回から株式コラム2回にわたり、有望株の選別をするにあたって大事な財務分析の方法についてご紹介していきます
前編となる今回は「財務諸表の見方」をテーマに進めていこうと思います
(後編は財務諸表のデータを基に作られた重要な財務指標についてご紹介する予定です。)
財務諸表の中で、有望株選別に役立つものとして主に
「貸借対照表」(バランスシートといったり、B/Sと略すこともあります)
「損益計算書」(P/Lと略すこともあります)
「キャッシュ・フロー計算書」(C/Fと略すこともあります)
の3つが存在します。
これらの中に、有望株選別に役立つデータがいっぱい詰まっていますが、今回はその中から特に大事と思われるものに絞ってご紹介させていただこうと思います
貸借対照表の見方
貸借対照表は、主に企業の安定性を測るのに役立つ資料になります。
その中でも特に、「自己資本比率」と「流動比率」が大切であると考えます。
上図は、トヨタ自動車の2020年3月期第三四半期決算における貸借対照表です。
この中で、右下の赤丸で囲った「株主資本合計」(自己資本)を青丸で囲った「負債純資産合計」(総資産)で割ったものが「自己資本比率」になり、約40%以上であれば、借入金が多すぎず、安定した経営基盤があるということで優良と言えます
(今回のトヨタ自動車の場合、37.7%ですので、ほぼほぼ基準に近しい値ですね。)
ただ、自己資本比率が高すぎる場合は、将来の成長に向けた投資が出来ていないという可能性もあり、一概に高ければよい、というわけではありませんので要注意です
ところで、株主資本合計と負債純資産合計のちょうど間くらいに「純資産合計」という項目がありますが、こちらは自己資本(株主資本)と合わせて、次回の株式コラムでご説明する「財務指標に関わるデータ」であるということを覚えておいていただければと思います。
次に「流動比率」についてですが、
こちらは、上図の赤丸で囲った「流動資産」を青丸で囲った「流動負債」で割った値になります。
(ちなみに、流動資産とは「一年以内に現金に換えられる資産」のことであり、流動負債とは「一年以内に支払う必要がある負債」のことです。)
流動比率が100%を超えていれば、1年以内に支払うべき負債に対応することが出来るということを示しており、健全な資金繰りが出来ていることを示しています
流動比率の基準値については、業界に寄りけりですが、概ね200%以上であれば、優良であると言っていいでしょう。
損益計算書の見方
損益計算書は、企業の収益性を測るのに役立つ資料になります。
その中でも特に「売上高」「経常利益」「純利益」が大切であると考えます。
売上高は、本業の商品販売やサービス提供によって得た収入であり、そこから営業費用(売上原価や販売費、管理費、等)を差し引いたものが営業利益、そこに営業外損益(資産運用損益や為替損益、利息収支、等)を調整したものが経常利益となります。
経常利益は、その名の通り、継続的にその企業が得られると考えられる利益のため、重要視されることが多いです。
経常利益の金額から、臨時的に発生した特別利益、特別損失の調整を行った後、その利益にかかる税金も差し引いた後で残った、最終的な利益が純利益になります。
純利益は、純資産、自己資本と同じく、次回の株式コラムでご紹介する「財務指標に関わるデータ」になりますので覚えておいていただければと思います。
上図は、トヨタ自動車の2020年3月期第三四半期決算における損益計算書です。
この図の中で売上高は緑丸、経常利益は青丸、純利益は赤丸で囲ったものになります。
(厳密にはトヨタ自動車の場合、青丸が示しているのは、経常利益に特別損失、特別利益を加味した後の「税金等調整前純利益」ですが、今回は特別損失、特別利益がありませんでしたので、青丸が実質、経常利益となります。)
売上高、経常利益、純利益の過去からの推移を確認するとともに、経常利益を売上高で割った売上高経常利益率の高さを比較することで、企業の収益性、効率性、成長性などを測ることが出来ます
キャッシュ・フロー計算書の見方
キャッシュ・フロー計算書は、企業の投資意欲と資金流入の健全性を測るのに役立つ資料になります。
上図は、トヨタ自動車の2020年3月期第三四半期決算におけるキャッシュ・フロー計算書です。
この中で特に大事なのは、赤丸で囲った「営業活動からのキャッシュ・フロー」、青丸で囲った「投資活動からのキャッシュ・フロー」、緑色で囲った「財務活動からのキャッシュ・フロー」の3つになります。
(数字が記載されているだけのものは、企業への資金流入を示しており、数字の前に△がついているものは、企業からの資金流出を示しています。)
ここで、健全な企業であるための条件として
営業活動からのキャッシュ・フロー⇒資金流入している(数字に△がついていない)
投資活動からのキャッシュ・フロー⇒資金流出している(数字に△がついている)
財務活動からのキャッシュ・フロー⇒営業活動、投資活動の状況次第
ということが言えます。
「営業活動からのキャッシュ・フロー」は、仕入れや販売に伴うお金の流れを示しており、これが資金流出状態となっているのは典型的な赤字企業であるためNGであることはご理解いただけると思います
「投資活動からのキャッシュ・フロー」は、固定資産の売買によるお金の流れを示しており、これが資金流出状態となっているということは、その企業が将来の成長のために投資をする意欲があるということを示しており、今後の成長性が見込めると考えられます。
(ただし、営業活動からのキャッシュ・フローを大幅に上回る流出がなされているなど、企業の実力以上の投資をしすぎている場合は要注意です。)
「財務活動からのキャッシュ・フロー」は、借金やその返済に伴うお金の流れなどを示しており、これは、営業活動からのキャッシュ・フロー、投資活動からのキャッシュ・フローの状況によって、資金流出(借金返済)、資金流入(新規借入)のどちらがいいかは分かれてきます
一般に借金返済が出来ている資金流出の方がよいと思われるかもしれませんが、それで投資活動への資金が十分に割り振れていない場合は問題です
逆に、新規借入を示す資金流入があったとしても、営業活動のキャッシュ・フローが資金流出となっていた場合は、営業活動が上手くいかないためにした借金と思われるため非常に危険であることがわかります
このように「財務活動からのキャッシュ・フロー」については、他の状況と合わせて確認する必要があるため少し難しいかもしれません。
まとめ
財務諸表の中には、その企業の本質を示す様々なデータが記載されていますが、今回はその中から特に大事だと思われるものについてピックアップしてご紹介しました。
これらは、本来、企業のホームページに行ってIR情報などから調べる必要があるのですが、ネット証券のスクリーニング機能を使えば、条件に適合する銘柄を一発でピックアップしてくれるため、わざわざ財務諸表を探しに行く必要がなく、大変便利です
例えば、私が使用しているSBI証券やマネックス証券では、自己資本比率、流動比率、売上高、経常利益、当期利益(純利益)、前期比売上高、前期比経常利益、売上高経常利益率、株価キャッシュ・フロー倍率などについて、任意に入力した一定値の範囲を満たす銘柄だけをピックアップすることが出来ます
是非皆さんも、ネット証券に口座を開設して、スクリーニング機能で有望株をつかんでみてください
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