意外に思われるでしょうが、
実は科学者の多くが、
神の存在を信じています。
これについて、
素粒子物理学の専門家で、
名古屋大学名誉教授の
三田一郎博士は、著書
『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』
(講談社)
の中で、
こう述べています。
(3頁)
「実は科学者のなかには、神の存在を信じている人が少なくありません。
みなさんも名前をご存じの高名な科学者の多くが、神や信仰について熱い思いを語ってきています。
最も神の領域を侵食しているかに思える宇宙論や素粒子論を扱う理論物理学者でさえ、そうなのです。
国連のある調査では、過去300年間に大きな業績をあげた世界中の科学者300人のうち、8割ないし9割が神を信じていたそうです。」
では、
アインシュタインは神について、
どのように考えていたのでしょうか?
三田博士は、同書の中で、
こう述べています。
(171頁〜172頁)
「『真に宗教的な天才は、こうした宇宙的宗教の感覚を身につけており、教義も聖職者も人格化した神も必要ない。
だから異端とみなされてきたんだ。
いいかね、民族と宗教の垣根を取り払えるのは、これまでそれにしくじってきた宗教指導者たちではない。
現代の科学者ならできるかもしれないんだ。』
(中略)
『宇宙的宗教では、宇宙が自然法則に従って合理的であり、人はその法則を使ってともに創造すること以外に教義はない。
私にとって神とは、ほかのすべての原因の根底にある、第一原因なんだ。
何でも知るだけの力はあるがいまは何もわかっていないと悟ったとき、自分が無限の知恵の海岸の一粒の砂にすぎないと思ったとき、それが宗教者になったときだ。
その意味で、私は熱心な修道士の一人だといえる。』
アインシュタインは、間違いなく神を信じていました。
その神とは人間の姿をして教えを垂れるものではなく、自然法則を創り、それに沿って世界と人間を導くものでした。
幼い頃に聖書と教会に絶望した彼はそれに代わる神を見いだし、その忠実な信奉者になったのです。
チベット仏教の指導者ダライ・ラマは、このような教えを述べています。
〈キリスト教の創造や神の概念は、仏教とは違う。
その違う面を理屈の上でなんとか一緒にしようという努力がすべて無駄であるとは言えないが、
それよりも、
違いにこだわらずに棚上げして、
合致するところを尊重して世界の苦しんでいる人々のために前進していくべきだ〉
アインシュタインの『宗教』は、既存の宗教とは違うものでした。
しかし、それは間違いなく、宗教といえるものでした。
狭量な神学者たちが口を合わせてアインシュタインの『宗教』を非難し、
そのためアインシュタインは無神論者だという誤解を人々に与えているのは、
間違っていると私は思います。」
アインシュタインは、
同胞意識と人類への奉仕を道徳的な基盤とした、
宇宙的宗教を提唱していました。
ところで、三田博士はなぜ、
神を信じるようになったのでしょうか?
その理由が、同書の256頁〜259頁にかかれています。
「私が神を信じるようになったのは、直接的には、第6章の最後に述べたように物質と反物質の研究を通して宇宙のはじまりを見つめたことがあると思います。
初期宇宙にごくわずかだけ物質のほうが多く存在していたからこそ、いまの私たちがあるのです。
もしも完全に同数であれば、この宇宙はエネルギーの塊にすぎませんでした。
私はそこに、神の意志を感じるのです。
(中略)
この宇宙には科学法則があることは確かです。
この法則によって惑星は楕円軌道を描き、電磁気力は距離の2乗に反比例します。
科学法則は『もの』ではないので偶然にはできません。
宇宙創造の前には必然的に科学法則が存在したはずなのです。
では、科学法則は誰が創造したのでしょうか。
(中略)
私自身は、科学法則の創造者を『神』と定義しています。
ルールが存在するということは、その創造者である神が存在するということだ、と考えるのです。」
確かに、
科学法則は『もの』ではないので、
偶然にはできません。
科学法則を創造した、
人知の及ぶところではない偉大な知性が存在していることは、
明らかです。
科学者が神を持ち出すことは、
思考停止であるという批判がありますが、
これに対して、三田博士は、同書の中で、こう反論しています。(262頁〜264頁)
「神を信じている者は、自然現象に対して疑問を持ち、説明しようとすることを放棄して、すべてを神にゆだねてしまっている、それは人間の進歩を止めてしまう思考停止である、ということでしょう。
おそらく、神を信じる科学者に対して最も多くの人が感じる疑問も、ここにあるのではないかと思われます。
では、科学者が神を持ち出すことは本当に思考停止なのでしょうか。
(中略)
私が考える『神業』とは、永遠に来ない『終わり』と言うことができます。
人間には神をすべて理解することは永遠にできません。
しかし、一歩でも神により近づこうとすることは可能です。
近づけばまた新たな疑問が湧き、人間は己の無力と無知を思い知らされます。
だからまた一歩、神に近づこうという意欲を駆り立てられます。
『もう神は必要ない』としてこの無限のいたちごっこをやめてしまうことこそが、思考停止なのであり、傲慢な態度なのではないでしょうか。
科学者とは、自然に対して最も謙虚な者であるべきであり、そのことと神を信じる姿勢とは、まったく矛盾しないのです。」
科学者が神を持ち出すことは、
決して思考停止ではありません。
科学と神は矛盾しません。
アインシュタインが述べる神、
則ち、自然法則を創り、それに沿って世界と人間を導く存在を信仰し、
『世界平和』と『人類全体の幸福』を実現させるべく、お互い精進しましょう
『科学を真剣に追究する人は誰でも、人間の意志よりも優れているある意志が、はっきりと宇宙の法則を示していると確信するようになる』
『私が知りたいのは神の考えだ。
それ以外はすべて些細なことでしかない』――アルベルト・アインシュタイン
『科学者はなぜ神を信じるのか コペルニクスからホーキングまで』
(著者 三田一郎 講談社)
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