アフィリエイト広告を利用しています

2024年09月16日

令和五年度修了考査 法適合確認(記述式)問題3

法適合確認(記述式)

問題3

鉄筋コンクリート造の3棟の建築物を対象として、耐震計算ルート3により静的荷重増分弾塑性解析(以下、「増分解析」という)を実施し、保有水平耐力を確認した。次の[ No.1 ]〜[ No.3 ]の設問について解答せよ。


[ No.1 ]
計算対象の建築物は、 5階建て鉄筋コンクリート造耐力壁付きラーメン構造である。以下の @〜Dの設問について解答せよ。なお、解答に用いる建築物の地震力算定用諸元を表1に、増分解析の条件及び解析結果を表2に示す。

R5-1_問題3_図1_架構とA柱・B柱.jpg
図1 架構とA柱•B柱(耐力壁は他の架構にある)

R5-1_問題3_図3_1階柱の曲げモーメント分布.jpg
図3 1階柱の曲げモーメント分布

R5-1_問題3_図2_A柱.jpgR5-1_問題3_図2_B柱.jpgR5-1_問題3_図2_(諸元)(凡例).jpg
図2 柱の軸方向力(N)と曲げモーメント(M)との関係

表1 対象建築物の地震力算定用諸元
R5-1_問題3_表1_対象建築物の地震力算定用諸元.jpg

表2 増分解析の条件及び解析結果
(a) 増分解析の水平力は、一次設計用地震力の分布として左側から載荷した(図1)。

(b) 増分解析では、柱の軸方向力N 曲げ終局モーメントMuとの相関関係(N-Mu関係)を考慮した。

1階におけるA柱及びB柱の N-Mu関係を図2に示す(圧縮軸方向力を正、引張軸方向力を負とする)。図2には、 A柱及ひB柱の柱脚について、増分解析の各ステップにおける軌跡をそれぞれ示す。なお、図中の括弧内の値は増分解析終了時における柱脚の曲げ終局モーメントである。


(c)増分解析終了時には、全体崩壊形を形成した。なお、1階柱脚は曲げ破壊したが、1階柱頭は曲げ破壊しなかった。


(d) 保有水平耐力は、増分解析終了時の水平耐力とした。

1 階の保有水平耐力は、 22,100kNであった。保有水平耐力時には、種別FAの柱が負担する水平耐力の合計が6,188kN、種別FBの柱が負担する水平耐力の合計が7,735kN、種別FCの柱が負担する水平耐力の合計が1,547kNであった。また、耐力壁群の種別はWAであり、耐力壁が負担する水平耐力の合計が6,630kNであった。

(e) 柱の破壊モードは、柱のせん断終局耐力Qsuが式(1)を満足する場合には曲げ破壊、満足しない場合にはせん断破壊とする。ここでは、1階柱の柱脚塑性ヒンジ発生時せん断力 QMは、式(2)による。その際、 1階柱の曲げモーメントの反曲点高さは 2/3ho(ho:柱の内法高さ)とする(図3)。

 Qsu ≧ 1.25 QM ・・・式(1)
 QM = 1.5Mu/ho ・・・式(2)



@ 5階の保有水平耐力Quを求めよ。 Quの単位はkNとし、小数第1位を四捨五入して表記せよ。



答え


[ 解答解説 ]
増分解析の水平力を一次設計用地震力の分布としているので、各階の保有水平耐力の比は 各階の一次設計用地震力の比と等しくなる。
一次設計用地震力は、表1の値を用いて、 Qi = Z・Rt・Ai・Co・ΣWi により求めるので、
1 階:Q1 =1.00×1.00×1.00×0.2×52,000=10,400 kN
5 階:Q5 =1.00×1.00×1.58×0.2×12,000= 3,792 kN
従って、 5階の保有水平耐力は、
Qu5 = Qu1・Q5/Q1 = 22,100 × 3,792/10,400 = 8058 kN




A 1階のA柱及びB柱の破壊モードを曲げ破壊とするために必要なせん断終局耐力の下限値 minQsuについて、下記の空欄に該当する数値を記入せよ。その際、柱のせん断終局耐力Qsuは軸方向力の変動に関わらず一定としてよい。

A柱のせん断終局耐力の下限値
 minQsu = [    ]Mo/ho

B柱のせん断終局耐力の下限値
 minQsu = [    ]Mo/ho


答え


[ 解答解説 ]
1階柱の柱脚塑性ヒンジ発生時のせん断力 QMは式(2)により与えられ、破壊モードは式(1) を満足する場合に曲げ破壊とするので、破壊モードを曲げ破壊とするために必要なせん断 終局耐力の下限値は、

minQsu = 1.25QM = 1.25×1.5Mu/ho =1.875Mu/ho

図2より A柱及びB柱の増分解析終了時の曲げ終局モーメントMuが与えられているので、
これを上式に代入し、
A柱のせん断終局耐力の下限値
 minQsu = 1.875×(0.72Mo)ho = 1.35 Mo/ho
B柱のせん断終局耐力の下限値
 minQsu =1.875×(0.80Mo)/ho = 1.50 Mo/ho




B 1階柱の部材群の種別を昭和55年建設省告示第1792号第4に従って判定し、その種別及び判定理由を簡潔に記述せよ。



答え


[ 解答解説 ]
部材群の種別の判定は昭和55年建設省告示第 1792号第4第三号の表による。 各種別毎の1階の柱が負担する水平力は表2(d)の文中で与えられているので、
 γA = 6,188/(6,188 + 7,735 + 1,547 ) =0.40
 γC = 1,547/(6,188 + 7,735 + 1,547 ) =0.10
従って、1階柱の部材群の種別は B である。

判定理由:
γA = 0.40 < 0.5 のため A とはならず、γC = 0.10 < 0.5 により 1階柱の部材群の種別はB と判断できる。




C 1階の構造特性係数Dsを昭和55年建設省告示第1792号第4に従って判定し、構造特性係数 Ds 及び判定理由を簡潔に記述せよ。



答え


[ 解答解説 ]
検討建物は鉄筋コンクリート造耐力壁付きラーメン構造のため、 Dsの判定は昭和55年建設省告示第1792号第4第四号ハの表による。

1階の保有水平耐力 22,100 kN、耐力壁が負担する水平耐力の合計6,630kN、及び耐力壁群の種別WAは表2(d)の文中で与えられおり、耐力壁の水平耐力の分担率βu
 βu = 6,630/22,100 = 0.30

1階柱の部材群の種別はBの解答より Bとなる。
従って、1階の構造特性係数はDs = 0.35 である。

判定理由:柱の部材群の種別はB、耐力壁の部材群の種別はWA、耐力壁の水平耐力の分担率 βu = 0.30 より D,=035 となる。




D 1階の必要保有水平耐力 Qunは、20,020kNであった。1階の形状係数Fesを求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
必要保有水平耐力は Qun = Ds・Fes・Qud で求められる。 ここで、Qun = 20,020kN
    Qud = 52,000 kN
    Ds = 0.35
従って、
 Fes = 20,020/(0.35 × 52,000) =1.10





[ No.2 ]
表3の文章は、全体崩壊形の形成を設計目標とした、 14階建て鉄筋コンクリート造ラーメ ン構造の建築物に対して、増分解析により保有水平耐力を確認したときの構造設計者の所見である。この文章中の二重下線部分について、この対応が適切か、不適切かを答えよ。なお、不適切とした場合には、最も適切と考えられる対応を簡潔に記述せよ。


表3 対象建築物の構造設計者の所見
14階建て鉄筋コンクリート造ラーメン構造を対象に増分解析を実施した。6階の最大層間変形角が1/20になった時点で増分解析を終了し、解析終了時には1階の柱脚や13階床以下の梁端に塑性ヒンジが生じ、変位増分に対して荷重増分は十分小さくなったが、13階以上の階では一部の梁端や柱頭には塑性ヒンジが生じておらず、崩壊形は形成されなかった。

13階以上の階については解析終了時点の応力をそのまま用いて、部材種別を判別し、各階の構造特性係数を算定した。




答え


[ 解答解説 ]
不適切

[最も適切と考えられる対応]
部材種別は、構造特性係数を算定しようとする階が崩壊形に達する場合の応力に基づき定めなけれぱならない。

本設問の建物のように増分解析において十分な変形まで至り、かつ変位増分に対して荷重増分が十分小さくなったが一部の部材に塑性ヒンジが生じず崩壊形が形成されない場合は、増分解析終了時の部材耐力に対する部材応力の比(部材応力/部材耐力)を用いて破壊形式を求め(余耐力法)、部材種別を判定し、構造特性係数を算定する。





[ No.3 ]
表4の文章は、直接基礎形式による 10階建て鉄筋コンクリート造連層耐力壁付きラーメン構造の建築物に対して、増分解析により保有水平耐力を確認したときの構造設計者の所見であ る。この文章中の二重下線部分について、この対応が適切か、不適切かを答えよ。なお、不適切とした場合には、最も適切と考えられる対応を簡潔に記述せよ。

表4 対象建築物の構造設計者の所見
10階建て鉄筋コンクリート造連層耐力壁付きラーメン構造の架構を対象に増分解析を実施した。

連層耐力壁は脚部の浮き上がりや沈み込みによる基礎回転形式の崩壊形として、部材種別を判別し、
各階の構造特性係数を算定した。




答え


[ 解答解説 ]
不適切

[最も適切と考えられる対応]
連層耐力壁脚部の浮き上がりや沈み込みを許容した解析モデル(バネ支点モデル等)による増分解析では各階の構造特性係数が実際より小さく評価されることがあり望ましくない。

基礎をピン支点として連層耐力壁脚部の浮き上がりや沈み込みを拘東して増分解析を行い、部材種別を判別し、各階の構造特性係数の算定を行う。なお、この場合は保有水平耐力も浮き上がりや沈み込みを拘東した同じモデルで計算することとなる。


2024年09月13日

令和四年度修了考査 構造設計(4肢択一式) No.1 〜 No.10

4-2構造設計

(1)考査問題

構造設計
(選択理由記述式4肢択ー問題)

[ No.1 ]
図1のように一様断面の完全弾塑性体の連続梁があり、A点は固定、B点はピンローラー支持されている。C点にαP、D点にPの鉛直下向きの荷重が作用している。Pを漸増させていくと、αの大きさによって、図2に示す機構a、または図3に示す機構bの崩壊機構が形成さる。これらの図中のPuは崩壊機構が形成されるときのPである。次の記述のうち、誤っているものを1つ選び、誤りとする理由を述べよ。なお、αは正(+)の係数、梁の全塑性モーメントはMpとする。

R4-2_No.1_図1_完全弾塑性体連続梁.jpg
図1

R4-2_No.1_図2_機構a.jpg
図2 機構a

 R4-2_No.1_図3_機構b.jpg
図3 機構b

1. 機構aのPuは、Mp/ℓである。

2. B点の曲げモーメントの値は、αに関係なくPℓである。

3. 機構bのPuは、3Mp/|(α - 1)ℓ|である。

4. α = 2 のときの崩壊機構は、機構bである。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
機構aのヒンジ発生点Bの曲げモーメントはPuで表すとMp=Pu × ℓから、Pu = Mp/ℓとなる。

2.記述の通り。
B−D間は片持ち梁であり、B点の曲げモーメントは必ずPℓとなる。
R4-2_No.1_B点の曲げモーメント.jpg

3.記述の通り。
せん断力の釣合いから方程式を求める。
機構bではA点とC点はヒンジであるので、AC間のせん断力はQu=2Mp/ℓ
BC間のせん断力は (Mp + Puℓ)/ℓ で、この合計がC点の外力と釣合うので

2Mp/ℓ + (Mp + Puℓ)/ℓ= αPu
よって、
Pu = 3Mp/{ (α-1) ℓ}
となる。

4.
α=2のときの機構bとなるPuは3Mp/ℓであり、機構aとなるPuのM/ℓより大きい。故に、破壊機構はaとなる。




[ No.2 ]
鉄筋コンクリート造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 床スラブの長期たわみは、両辺固定の場合、弾性計算によって得られる値のおよそ12〜18倍となる。


2. すべての層のDsが0.3となる鉄筋コンクリート造建築物の大地震時の最大応答層間変形角は、荷重増分解析における必要保有水平耐力時の層間変形角と同等である。


3. 連層耐力壁の地震時の変形は、低層建築物では曲げ変形よりせん断変形の占める割合が大きく、高層建築物では曲げ変形の占める割合が大きくなる。


4. 鉄筋コンクリート造の柱では、鉛直荷重によってコンクリートに圧縮クリープが生じ、コンクリートの圧縮応力が徐々に減少していく。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第II編第3章8-3たわみ 長期たわみP. 354)

2.Dsの値によらず(架構形式によらず)保有水平耐力計算における増分解析の結果は、保有水平耐力時、必要保有水平耐力時ともに架構の最大応答変形とは必ずしも一致しない。よって誤り。
(テキスト第II編第2章2-2耐震設計法P. 179)

3.記述の通り。

4.記述の通り。
テキストには鉄筋の圧縮のところに「コンクリートの収縮ひずみとクリープひずみ分を考慮しても降伏ひずみを超えないように設定されている」という記述があり、鉄筋の圧縮応力が増加することが示されている。
(テキスト第II編第3章3-2鉄筋の材料特性P.275)




[ No.3 ]
構造計画•構造解析に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. べた基礎の設計における基礎梁の設計用荷重は、建築物自重によって地盤に作用する接地圧から最下柱脚より下部の基礎躯体重最を差し引いた分を地反力とした上向きの鉛直荷重としてよい。


2. 鉄骨造の建築物において、1階を無柱空間とするために2階の設備階を1層分の鉄骨トラス梁として設計する場合には、建築物のすべての階の床を剛床と仮定して構造解析を行ってよい。


3. 構造計画にあたっては、建築物の建設地域や規模により使用できる施工技術が異なるため、施工性についても考慮する必要がある。


4. 大きなスパンに曲げ剛性が十分に大きい中空スラブを用いる場合、スラブの支持条件は、周辺固定とするのではなく周辺大梁のねじり剛性を考慮して設定し、スラブの応力計算を行う必要がある。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。

2.上下階の梁はトラスの弦材となるため軸変形を考慮しなければならない。剛床とした場合、軸変形が拘束され鉛直変位が過小評価となるため、不適当。
(テキスト第 T 編第4章3.2トラス梁のモデル化と剛床仮定P. 84)

3.記述の通り。
(テキスト第II編第1章3-2与条件の把握と整理P. 139)

4. 記述の通り。
(テキスト第II編第3章8-2床スラブP. 353)




[ No.4 ]
耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 限界耐力計算では、極めて稀に発生する地震による加速度によって建築物の各階に作用する地震力を計算し、当該地震力が保有水平耐力を超えないことを確かめる。


2. エネルギーの釣合いに基づく耐震計算では、極めて稀に発生する地震に対して各階の主架構の保有エネルギー吸収量と必要エネルギー吸収量を比較し、安全性を検討する。


3. 保有水平耐力計算では、保有水平耐力を計算する対象の崩壊形には、全体崩壊形や部分崩壊形のほかに、局部崩壊形がある。


4. 許容応力度計算では、作用荷重により部材に生じる応力を線形解析により算定して、部材の断面に生じる最大応力度が材料強度以下であることを確認する。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
限界耐力計算は、地震動の要求スペクトル(各階に生じる地震力)と構造物の耐カスペクトル(保有水平耐力)を比較して、耐震安全性を検討する方法で、地震力と保有水平耐力の定義は施行令第82条の5の五に記載されている。
(テキスト第II編第2章2-2耐震設計法P. 179)

2.記述の通り。
(テキスト第II編第2章2-2耐震設計法P. 184)

3.記述の通り。
(テキスト第II編第2章2-2耐震設計法P. 177)

4.最大応力度が許容応力度以下であることを確認する。
(テキスト第II編第2章2-2耐震設計法P. 176)




[ No.5 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 鋼材の応カーひずみ関係では、鋼材強度が高くなると、一様伸び(引張強さに対応するひずみ)と破断伸びは、ともに低下する。


2. 鋼材の強度は、一般に、ひずみ速度依存性があり、ひずみ速度が速くなると降伏点が低下する。


3. 構造部材の接合部を高カボルト接合と溶接接合の併用継手とする場合、高カボルトを締め付けた後に溶接を行う場合には、それぞれの許容耐力の和をその接合部の許容耐力とすることができる。


4. 伸び能力のあるアンカーボルトの降伏により終局耐力が決定される露出柱脚の履歴特性は、スリップ型の性状を示す。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第II編第3章2-1鋼材の特性P. 251)

2.ひずみ速度が速くなると強度は増大するため、不適当。
(テキスト第II編 第3章2-1鋼材の特性P. 252)

3.記述の通り。

4.記述の通り。




[ No.6 ]
鉄筋コンクリート造の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 柱部材の材端部の横補強筋量を増すと、圧縮側のコアコンクリートを拘束する効果があるので、曲げ破壊後の塑性変形性能が向上する。


2. コンクリートのヤング係数は、ほぼ圧縮強度の立方根に比例するので、構造解析における部材剛性の算定では、設計基準強度に対応したヤング係数を用いる。


3. 柱及び梁部材の付着割裂強度は、横補強筋の降伏点が大きいほど上昇する。


4. 圧縮軸力と曲げモーメントを同時に受ける柱において、中立軸が柱断面の外に出る場合は、曲げひび割れは発生しない。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P.287)

2.記述の通り。
(テキスト第II編第1章2-2鉄筋コンクリートP. 131)

3.テキストには直接的な記載はないが、日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準 同解説 2018」の付着応力度の検討に用いる横補強筋のパラメータは、全断面積と間隔のみで降伏点は関係がないため不適当。テキストには付着長さの減少に伴う付着割裂破壊の説明の記述がある。(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 286)


4.記述の通り。
中立軸が柱断面の外に出る場合は、全断面が圧縮領域にあるということである。




[ No.7 ]
木質構造の構造設計等に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 一般に、木材の圧縮、引張、曲げの基準強度は、圧縮が最も大きく、引張が最も小さい。

2. 面材耐力壁の許容せん断耐力は、@降伏耐力Py、A終局耐力と靭性を考慮した特性値、B最大耐力Pmaxの2/3、C1/200rad時等の特定変形角時の耐力、のうち最小値から求めることとしている。


3. 低層小規模建築物の偏心率の計算には、壁の剛性を評価する指標として、耐力の指標である壁倍率を用いることが多い。


4. 鋼材板挿入ドリフトピン接合の耐力算定で、木材の繊維の方向と力の方向が異なる場合には、ハンキンソン式により降伏耐力を求める。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.木材の基準強度は曲げが最大であり、不適当。
(テキスト第11編第1章2-3木材P. 135)

2.記述の通り。
記述の内容は耐力壁の許容せん断耐力の算定方法の内、実験による方法について記述したもの。その他に、大臣認定を受けた壁倍率を許容耐力に換算する方法と、面材とくぎのすべり特性の関係から算出する方法がある。
(テキスト第11編第3章1-3鉛直架構のモデル化と靭性P. 232)

3.記述の通り。
(テキスト第11編第3章1-4共通事項P. 243)

4.記述の通り。
(テキスト第11編第3章1-4共通事項P. 240、247)




[ No.8 ]
免震構造•制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 免震部材の機能には、支承機能、減衰機能、復元機能があり、弾性すべり支承は支承機能のほか減衰機能を有するが、転がり支承は摩擦係数が非常に小さいので減衰機能はほとんどない。


2. 弾塑性ダンパーを用いた免裳構造においては、ダンパーの数を増やすほど応答加速度の低減効果が高まるわけではない。


3. 弾塑性ダンパーを配置した制振構造においては、ダンパーを付加する前の水平剛性が大きい骨組より、水平剛性が小さい骨組のほうが、ダンパーによる応答加速度の低減効果は大きい。


4. 粘性ダンパーを配置した制振構造においては、ダンパーの数を増やすほど、応答変位及び応答加速度は小さくなる。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.テキストの転がり支承の記述には、一定の低摩擦係数の特性を有するとなっているが、実際の転がり支承の摩擦係数は非常に小さく、減衰機能はほとんどないため、記述の通り。
「(テキスト第II編第3章6-1免震構造 P.321)

2.記述の通り。テキストの免震構造の部分にはこのような記載はないが、4の制振構造の記述にもあるようにダンパーの付加によって固有周期が短くなり、応答化速度はかえって増加するという現象が免震構造でも起こるため。
(テキスト第II編第3章6-2制振構造P. 328)

3.記述の通り。
(テキスト第II編第3章6-2制振構造P. 325)

4.ダンパーを付加することでダンパー付加剛性により固有周期が短くなるため、付加するダンパー量が多すぎると、加速度応答はかえって増加してしまう。そのため最も不適当。(テキスト第II編第3章6-2制振構造P.328)




[ No.9 ]
地盤•基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 標準貫入試験を実施すると地盤のN値が求められるだけでなく、同時に採取した試料を分析して、液状化判定に必要な粒度分布などの物理特性を求めることができる。


2. 粘性土のせん断強さを求める室内試験のうち、サンプリングによる試料の乱れの影響を小さくするために行う3軸圧縮試験(非圧密非排水試験(UU試験))では、内部摩擦角(せん断抵抗角)と粘着力が得られるが、基本的には内部摩擦角は無視し粘着力のみを評価して設計に用いる。


3. 地盤改良工法の一つに振動締固め工法があるが、この工法は軟弱な粘性土を含む地盤に対して強度及び剛性を増大させる効果がある。


4. 一般に液状化の可能性を検討するのは、地表から20m以浅の飽和砂地盤で、細粒分含有率が35%以下、粘土分含有率が10%以下の沖積層または埋立て地盤である。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.記述の通り。
(テキスト第II編第3章7-3地盤調査P. 336)

2.記述の通り。
(テキスト第II編第3章7-2地盤に関する基礎知識P. 334)

3.締固めは、主に緩い砂質地盤に対して行うものであり、最も不適当。
(テキスト第II編第3章7-4基礎構造計画P.340)

4.テキストにあるように、液状化判定の対象とすべき地盤の条件には、「沖積層または埋め立て地盤」という言葉はなくなっているが、より不適当な記述があるのでそちらが回答と考える。
(テキスト第II編第3章7-2地盤に関する基礎知識P. 333)




[ No.10 ]
建築物の耐震診断・耐震補強に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準 同解説(2017年改訂版)」の第1次診断用靭性指標Fを求めるときの極脆性柱とは、柱内のり寸法(ho)と柱せい(D)の比(ho/D)が2以上の独立柱をいう。


2. 既存鉄筋コンクリート造建築物の現地調査によるコンクリートコアの圧縮強度の平均値が 13.5 N/mm2を下回り、かつ設計基準強度の3/4以下の場合は、材料や施工等に問題があると考えられるため、改築も視野に入れた総合的な検討が必要になる。


3. 体育館、公民館、工場など大スパン架構の既存鉄骨造建築物の耐震診断において、屋根面で十分に荷重伝達ができない場合には、適宜、平面骨組に分け、構面単位で構造耐震指標 Isi 及び保有水平耐力に係る指標 qiを評価するなど、荷重伝達と各部の挙動を考慮した検討が必要になる。

4. 木造住宅の精密診断法の一つである保有耐力診断法では、耐力要素の耐力を累加し、それに「剛性率による低減係数」及び「偏心率と床の仕様による低減係数」を乗じて、上部構造の保有する耐力を算定することとしている。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.不適当。
記載の定義は「極短柱」のことであり、「極脆性柱」はその中でもせん断破壊が曲げ破壊より先行するもののことである。

2.記述の通り。

3.記述の通り。
(テキスト第1I編第4章3-2耐震性の判定P. 387)

4.記述の通り。
(テキスト第1I編第4章4-3精密診断法P. 390)


2024年09月11日

令和四年度修了考査 構造設計(記述式)問題1

構造設計(記述式)

問題1

図1に示す筋かい付き鉄骨架構及び座屈補剛モデルについて、以下の[ No.1 ]〜[ No.3 ]の設問に解答せよ。なお、本架構の接合部は保有耐力接合されており、柱及び梁の耐力は十分に大きく、柱及び梁の座屈は生じないものとする。


R4-2_問題1_図1_筋かい付き鉄骨架構.jpg
図1 筋かい付き鉄骨架構

[ No.1 ]
図1に示す鉄骨架構の筋かい材はH形鋼で、断面積 A = 6,000 mm2、断面二次半径 ix = 100mm、iy = 40mmであり、構面内が弱軸曲げになるよう、フランジ面と紙面が平行に配置されている。鋼材はSN400材(F値235 N/mm2)であり、圧縮材の座屈の長期許容応力度 fcは式(1)で得られるものとする。座屈補剛材は筋かいの中央に取り付き十分な強度と剛性を有しているものとして、筋かいの短期許容圧縮耐力Ncを求めよ。


R4-2_問題1_No.1_式(1).jpg


答え


[ 解答解説 ]
(筋かいの強軸側)
筋かい強軸に対する座屈補剛はないので、筋かいの圧縮座屈長さℓは、
 ℓ= 3√2 × √2 = 6m
圧縮筋かいの両端部は面内並びに面外方向にも材軸直行方向の移動が拘束されたピン固定とすると、筋かい強軸側の細長比λは
λ = ℓ /ix = 6,000mm/100mm = 60

(筋かいの弱軸側)
筋かい弱軸に対して、十分な剛性と耐力を有する補剛材により、座屈補剛されていることから、筋かいの圧縮座屈長さℓは、
 ℓ = 3√2 / √2 = 3m
座屈補剛区間内の圧縮筋かいの端部は面内並びに面外方向にも材軸直行方向の移動が拘束されたピン固定とすると、筋かい弱軸側の細長比λは
 λ = ℓ/iy = 3,000mm/40mm=75

以上より細長比は弱軸側の方が大きいため、弱軸側の座屈性能で決まる。

限界細長比Λは問題文の式よりΛ = 1,500/ √ (235N/mm2 /1.5) = 120
となる。

以上より
λ = 75 ≦ Λ =120
であるため、fcは式(1)の上段に示された式を用いて

fc = {1 - (2/5)(75/120)2 / (3/2+ (2/3)(75/120)2)} × 235N/mm2
 = 112.6 →113 N/mm2

Nc = 1.5 × A × fc
  = 1.5 × 6000mm2 × 113 N/mm2
  = 1,017,000N = 1,017kN →1,020kN





[ No.2 ]
日本建築学会「鋼構造許容応力度設計規準(2019年版)」では、必要補剛力は圧縮力の2 %、補剛材の剛性は実験と解析に基づき、4N/ℓk以上としている。

これを本問題の記号で示すと以下のようになる。

Fr = 0.02Nc (kN)
K ≧ 4Nc/ℓ (kN/m)

この式を用いて図1に示す座屈補剛材に要求される必要補剛力Fr 及び必要補剛材剛性 K を求めよ。ここで、ℓとは補剛間長さである。



答え


[ 解答解説 ]
必要補剛力Fr及び必要補剛材剛性Kは問題文中の式より、

Fr = 0.02 Nc = 0.02 × 1,020 = 20.4 kN

K = 4Nc/ℓ = 4 x 1,020 / 3 = 1,360 kN/m




[ No.3 ]
図2は、元たわみがある場合の座屈補剛材に要求される剛性と補剛力を求めるための簡単なモデルである。以下の問いに答えよ。

R4-2_問題1_No.3_図2_元たわみがある場合の座屈補剛モデル.jpg
図2 元たわみがある場合の座屈補剛モデル


@ 元たわみがある場合の座屈補剛モデルについて、必要補剛力及び必要補剛材剛性の関係を誘導した以下の文中の空欄[ ア ]〜[ ウ ]に入る記号、数式または数値を解答欄に記入せよ。

図2に示すように、座屈する部材と補剛材を、部材中央で剛性Kのばねで補剛され、両端と中央でピン接合された剛棒でモデル化している。元たわみをaとすると、中央点の鉛直方向のカのつり合い式は、式(2)となる。

2Ncθ = Fr = K( δ − a ) = K( [ ア ]•θ − a )    式(2)

式(2)よりθを消去して、必要補剛力比 Fr/ Nc と必要補剛材剛性比Kℓ/(2Nc)の関係を求めると式(3)となる。

Fr / Nc = 4Kℓ / (2Nc)/{ Kℓ/(2Nc) − [ イ ] } ・ [ ウ ] 式(3)



答え


[ 解答解説 ]
θが微小の場合、δ ≒ ℓ・θ ・・・ ア:ℓ

式(2)よりθについて解くと、
θ = Ka/(Kℓ − 2Nc)    ・・・ 式(2-a)
とする。
一方、同じく式(2)の左側から、
Fr/Nc = 2θ       ・・・ 式(2-b)
とする。

式(2-a)を式(2-b)に代入し、分母と分子を2Ncで除すと、
Fr/Nc = 2Ka / (Kℓ− 2Nc)
   =2Ka / (2Nc)/(Kℓ/(2Nc)−1)

右辺について、式(3)の分子である4Kℓ/(2Nc)を出して整理すると、
Fr/Nc = {4Kℓ/(2Nc)/(Kℓ/(2Nc)−1)} ・a/2ℓ

以上より、イ:1ウ:a/2ℓ




A 式(3)より、元たわみaが ℓ/250の場合(aが全長の1/500の場合)の必要補剛材剛性比 Fr/ Ncと必要補剛力比 Kℓ/(2 Nc)との関係曲線を答案用紙に描け。また、[ No.2 ]で示した必要補剛力、必要補剛材剛性に相当する点をその図中に黒丸(●)で示せ。



答え


[ 解答解説 ]
式(3)において、Kℓ/2Nc=X、a=ℓ/250とすると、
Fr / Nc = 4X/(X −1) × (ℓ/250)/2ℓ = (4/500)X/(X-1)

Xを横軸、Fr/Ncを縦軸として、グラフを下記に示す。

問題No.2の必要補剛力、必要補剛材剛性に関する諸数値は以下の通りである。
X = Kℓ/2Nc = 2
Fr/Nc = 0.02

R4-2_問題1_No.3_必要補剛材剛性に関する数値.jpg





B 日本建築学会「鋼構造限界状態設計指針•同解説」では、必要補剛力 Fr = 0.03 Nc 及び必要補剛剛性 K=4Nc/ℓが与えられている。この場合、どの程度の元たわみまで耐えうるかを、補剛区間長さℓに対する比で解答せよ。



答え


[ 解答解説 ]
式(3)において、左辺=Fr/Ne= 0.03
またK = 4Nc/ℓより、Kℓ/2Nc = 2
以上を式(3)に代入すると、
 0.03 = 4 × 2 / (2 − 1) × (a/2ℓ)
 a = (3/400) •ℓ
以上より、耐えうる元たわみaの補剛区間長さℓに対する比は3/400である。


2024年09月10日

令和四年度修了考査 構造設計(記述式)問題2

構造設計(記述式)

問題2

鉄筋コンクリート造連層耐力壁に関する次の[ No.1 ]及び[ No.2 ]の設問に解答せよ。

[ No.1 ]
図1に示すスパンℓw、各階高さHの3層の連層耐力壁の各階に水平力が作用している。水平力の大きさは、2階床で P、3階床で2P及び屋上階で3Pである。

耐力壁の水平断面は図2に示すような I形断面で、柱中心間距離はℓwである。各階の引張側柱と圧縮側柱の断面と配筋は同一で、1階耐力壁には圧縮軸力Nが作用している。基礎と基礎梁は剛強とし、諸性能の算定を簡略に行えるよう基礎梁の効果は無視して、1階柱脚部をピン支持(図1の△印)とする。

この架構の耐力を求めるための以下の記述の空欄[ @ ]〜[ E ]に入る数式を、また、[ F ]〜[ H ]に入る数値を解答欄に記入せよ。

R4-2_問題2_No.1_図1_水平力を受ける連層耐力壁の曲げモーメント図.jpg
図1 水平力を受ける連層耐力壁の曲げモーメント図
R4-2_問題2_No.1_本問題の記号一覧1.jpgR4-2_問題2_No.1_本問題の記号一覧2.jpg

R4-2_問題2_No.1_図2_耐力壁の断面と柱中心間距離.jpg
図2 耐力壁の断面と柱中心間距離

  R4-2_問題2_No.1_図3_曲げ終局強度Mu時の各断面力の大きさと向き.jpg
 図3 曲げ終局強度Mu時の各断面力の大きさと向き

連層耐力壁の曲げモーメント分布が図1に示すようになり、1階壁脚部で曲げ終局強度Muとなるときを考え、このMuの算定式を導く。曲げ終局強度Mu時の断面力は図3に示すように、引張側柱の全主筋が引張降伏したときの引張力Ts、耐力壁の全縦筋が引張降伏したときの引張力Tw、圧縮側柱の全主筋が圧縮降伏したときの圧縮力Cs、及び圧縮側柱のコンクリートの圧縮合力Ccからなるものとする。 Ts、 Cs、及びCcは柱中心に作用し、 Twは壁板中心に作用するものとする。

断面に下向きに作用する軸力Nは、 Ts、 Tw、 Cs、及びCcを用いて、N =[ @ ]と表される。

また、両柱の断面寸法及び配筋は等しいためCs =[ A ]となる。よって、軸力Nは、コンクリートの圧縮合力Cc及びTwだけを用いて、N=[ B ]と表せる。これらの関係から、曲げ終局時強度Muは、図3に示す断面力による壁の断面中心に対するモーメントとして計算でき、 Ts、 Tw、N、及び ℓwだけを用いて、Mu = [ C ]と表せる。

一方、図1に示すような水平力が作用しているときに、連層耐力壁の脚部に発生するモーメントMの大きさは、水平力の基準値P及び各階の階高 Hを用いて、M =[ D ]と表せる。また、そのときに1階に作用しているせん断力QBはPを用いて、 QB=[ E ]と表せる。

ここで、ℓw = 6,000 mm、H =3m、N = 2,100 kN、ag = 4,900 mm2、aw= 4,200 mm2、σy = σwy = 350 N/mm2とすると、曲げ終局強度 Muは[ F ]kN•m、Pの大きさは[ G ]kN、1階に作用しているせん断力QBは[ H ]kNとなる。



答え


[ 解答解説 ]
Ts、Tw、Cs、Ccは図の矢印の方向を正とする 曲げは壁脚部において時計回りを正とする。
計算は有効数字3桁で行い、結果も有交数字3桁で示す。処理は、四捨五入とする。

@Ts、Tw、Cs、Ccの合力は軸力Nとなるため、
N = −Ts −Tw + Cs + Cc
となる。

A配筋量が同じであり、全主筋が圧縮降伏したときの圧縮力Csと引張縮降伏したときの引張力圧縮力Tsは大きさが同じため、
Cs = Ts
となる。

B Aより−Ts + Cs = 0となるため、@の式よりTsとCsが消え、
N = −Tw + Cc
となる。

C曲げ終局強度Muは、壁脚部中心位置でTs、Tw、Cs、Ccにより算定すると、
Mu = Ts × 0.5 ℓw + Tw × 0.0 ℓw + Cs × 0.5 ℓw + Cc × 0.5 ℓw
となるが、AよりCs = Ts、
BよりN = −Tw + Ccのため、Cc = Tw + Nにより、
Mu = Ts × ℓw + Tw × 0.5 ℓw + N × 0.5 ℓw
となる。

D連層耐震壁の脚部に発生するモーメントMは、
M = 3P × 3 × H + 2P × 2 × H + P × Hより、
M =14 × P × H
となる。

E 1階に作用しているせん断力 QEは、
QE = 3P + 2P + Pより、
QE = 6 × P
となる。

F曲げ強度Muは、
耐力壁の柱中心間距離 ℓw = 6,000mm = 6.0m
各階の高さH = 3m
1階の耐震壁に作用する圧縮軸力 N = 2,100kN
柱1本の主筋の断面積の合計 ag = 4,900 mm2
壁縦筋の断面積の合計 aw = 4,200mm2
柱主筋の降伏強度σy = 壁縦筋の降伏強度 σwy = 350N/mm2
より、
Ts = ag × σy
 = 4,900 mm2 × 350N/mm2/1,000
 = 1,715kN→1,720kN
Tw = aw × σwy
 = 4,200mm2 × 350N/mm2/1,000
 = 1,470kN
を用いて、Cの式より、
Mu = 1,720kN × 6.0m+ 1,470kN × 0.5 × 6.0m +2,100kN × 0.5 × 6.0m
 =21,030 kN•m→ 21,000 kN•m
となる。

G Pの大きさはDの式より、
P = M/(14 × H)となるため、
P = 21,000kN•m/(14 × 3.0m)
 = 500 kN
となる。


H 1階に作用しているせん断力QEは、Eの式QE = 6 ×Pより
QE = 6 × 500kN
 = 3,000 kN
となる。





[ No.2 ]
[ No.1 ] のような応力状態で、1階の耐力壁がせん断破壊を生じないようにするためには、Hで求めた曲げ終局強度時のせん断力に対して、せん断終局強度は1.25倍以上の余裕度を有することが求められている。一方、梁部材の両端でヒンジが形成される場合は、両端ヒンジ状態でのせん断力に対して、1.1倍以上の余裕度を有することが求められている。連層耐力壁が両端ヒンジ状態の梁よりも、大きなせん断余裕度が求められている主たる理由を1つ述べよ。



答え


[ 解答解説 ]
く主たる理由>
保証設計において、梁の両端ヒンジ状態のせん断破壊に対する余裕度は材料強度のばらつきを考慮したものであるが、連層耐震壁では曲げ終局状態時のせん断力に対して、材料強度のばらつきと、外力分布のばらつきにより連層耐震壁に生じる曲げモーメントとせん断力の関係が変化する分も加えた余裕度を用いてせん断破壊を生じないようにする必要があるため。


2024年09月09日

令和四年度修了考査 構造設計(記述式)問題3

構造設計(記述式)

問題3

場所打ち鉄筋コンクリート拡底杭の設計に関する次の [ No.1 ]〜[ No.3 ] の設問に解答せよ。地盤構成と杭の寸法等の諸元は図1のとおりである。

R4-2_問題3_図1_地層構成と杭の諸元.jpg
図1 地層構成と杭の諸元

[ No.1 ]
杭頭をGL–3m、杭先端深さをGL–16 mとした場所打ちコンクリート拡底杭(軸径:2m、杭先端有効径:3m)の極限先端抵抗力 Rp及び極限周面抵抗力Rfを下記のそれぞれの式により算定し、それらの結果を用いて式(1)により長期許容支持力 RαLを算定せよ。

ただし、GL–25〜27mの硬質粘土層は一軸圧縮強さが十分にあり、杭の支持力はその上の砂層で決まるものとする。また、拡径部の周面抵抗力は考慮しないものとする。

R4-2_問題3_No.1_式(1).jpg


答え


[ 解答解説 ]
計算は有効数字3桁で行い、結果も有効数字3桁で示す。処理は、四捨五入とする。

RαL = 1/3 × ( Rp + Rf )  式(1)

杭先端有効径 = 3mより、GL−13m〜GL−19m間の平均N値は、
N = (30 + 30 + 60 + 60 + 60 + 60)/6 = 50
極限先端抵抗力Rpは、
Rp = 100 × N•Ap
  =100•50•(3.0/2)2×π
  = 35,325→35,300 (kN)
Rfs = 3.3Ns•Ls•ψ
拡底部の周面抵抗力は考慮しないため、
Ls = 0 → Rfs = 0 (kN)
Rfc = 0.5qu•Lc•ψ
  = 0.5•100•10•2.0π
  = 3,140 → 3,140 (kN)
極限先端抵抗力Rfは、
Rf =Rfs + Rfc = 0 + 3,140 = 3,140 (kN)

したがって、長期許容支持力RαLは、

RαL =1/3 × (35,300 + 3,140)
  = 12,813→12,800 (kN)





[ No.2 ]
長期軸力が図1の [ No.1 ]の杭頭に作用するとき、GL–25〜27mの位置の硬質粘土層の圧密沈下の可能性を以下の手順で検討せよ。

@ 原地盤の硬質粘土層上面位置(GL–25 m)の鉛直有効応力σo’を求めよ。ただし、地下水位以深の土の単位体積重量は水中単位体積重量を用い、水の単位体積重量は10 kN/m3とする。



答え


[ 解答解説 ]
鉛直有効応力σ'oは、地表面(GL±0m)から硬質粘土層上面位置(GL−25m)の各地盤の単位体積重量γ × 層厚 t の和である。
ここで、地下水位以深となるシルト質粘土層、砂質土層の単位体積重量は水中単位体積重量を用いる。

σ’o = 15 × 3  (埋土)
  + (16 − 10) × (13 − 3)  シルト質粘土層(GL−3〜−13m)
  + (18 − 10) × (15 − 13)  砂質土層(GL−13〜−15m)
  + (20 − 10) × (25 − 15)  砂質土層(GL−15〜−25m)   
 = 221 (kN/m2)




A 杭先端面に長期軸力12,000 kNが等分布に作用し、さらに深さ方向に1:2(幅:高さ)で荷重が分散されると仮定した場合の硬質粘土層上面位置の増加応力Δpを求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
杭先端〜硬質粘土層上面までの深さd = 25−16 = 9m
荷重の分散を考慮したとき、硬質粘士層上面において長期軸力が作用する面積AP'は、
A’p = {( 9/2 + 3 + 9/2)/2}2•π
  = 113.04 →113 (m2)
増加応力Δp=12,000/113 = 106.2→106 (kN/m2)




B @及びAより、杭の長期軸力を考慮した硬質粘土層上面位置の鉛直有効応力σ’を求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
σ’ = σ’o + Δp
 = 221+106 = 327 (kN/m2)




C σ‘と硬質粘土層の圧密降伏応力 pcを比較し、圧密沈下の可能性の有無を判定し、その根拠を簡潔に記述せよ。



答え


[ 解答解説 ]
σ’ = 327 < pc= 400 (kN/m2)より、圧密沈下は生じない。

理由:杭の長期軸力を考慮した硬質粘土層上面位置における鉛直有効応力は圧密降伏応力以下であるため。




[ No.3 ]
杭頭は [ No.1 ]と同じGL–3mのままとし、杭先端深さをGL–16.2m、軸径を2.2m、杭先端有効径dpを3.2mにそれぞれ[ No.1 ]から変更した結果、極限先端抵抗力Rpは40,600 kN、極限周面抵抗力Rf は3,450 kNと算定された。

この杭頭に長期軸力14,000 kNが作用するときの杭の沈下量等に関する設問@〜Bに解答せよ。ただし、杭体は十分に軸剛性が大きく、その圧縮量を無視することができ、かつ杭周面抵抗力と沈下量の関係は図2に示すようなバイリニアに、杭先端荷重Pbと杭先端沈下量Sbの関係は図3に示す曲線、式(2)で表されるものとする。

また、粘土層の周面抵抗力の折れ点Sfは6mmと仮定する。

R4-2_問題3_No.3_式(2).jpg

R4-2_問題3_No.3_図2_荷重-沈下量関係.jpg
図2 荷重–沈下量関係(模式図)

  R4-2_問題3_No.3_図3_杭先端荷重-杭先端沈下量の関係.jpg
  図3 杭先端荷重–杭先端沈下量関係
  (a = 0.23、n = 2.7)


@ 杭先端沈下量がSf(= 6mm)を超え、杭周面抵抗力が極限周面抵抗力Rfに達していると仮定したときの杭先端荷重Pbを求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
長期軸力 = 杭周面抵抗力 + 杭先端荷重
である。
ここで、杭周面抵抗力が極限周面抵抗力Rrに達していることから、長期軸力 NL = Rf + Pb
したがって、
杭先端荷重 Pb = 14,000 − 3,450
       = 10,550→10,600 (kN)




A 式(2)にdp, Pb. Rp, a, nを代入して、杭先端沈下量Sbを求めよ。



答え


[ 解答解説 ]
(Sb/dp)/0.1 = αPb/Rp +(1ーα)(Pb/Rp)n 式(2)

dp = 3.2 (m), Pb = 10,550 (kN), Rp = 40,600 (kN), α= 0.23, n = 2.7を代入してSbを求めると、
Sb = 0.1•3.2 (0.23 × 10,600/40,600 + (1- 0.23)(10,600/40,600)2.7) = 0.0258 (m)
よって、
Sb = 25.8 (mm)




B Aで求めた杭先端沈下量SbとSf(= 6mm)とを比較して、@で杭周面抵抗力が極限周面抵抗力Rfに達していると仮定したことが、妥当であるか否かを判断し、その根拠を簡潔に記述せよ。



答え


[ 解答解説 ]
Sb = 25.8 > Sf =6.0 (mm)より、
@で杭周面抵抗力が極限周面抵抗力Rfに達していると仮定したことは妥当である。

理由:算出したSbの値は、仮定条件(Sb>6.0mm)と整合するため。


2024年09月06日

令和四年度修了考査 法適合確認 No.1 - 10

令和4年度構造設計ー級建築士講習

修了考査(法適合確認)

法適合確認
(選択理由記述式4肢択ー問題)

[ No. 1 ]
構造設計者としての倫理等に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 構造設計の高度化が進み、ー級建築士全体の中から構造を専門とする技術者を特定する必要が生じ、構造設計ー級建築士制度が制定された。


2. 構造設計者は、建築基準法では担保できないもろもろの要件を精査し、設計に反映させなければならない。


3. 構造設計者がその職務を全うするためには、新しい技術や学術的知見に基づく継続的職能開発(CPD)を自ら行っていくことが不可欠である。


4. 現在の高度に発達したコンピュータソフトウェアは、構造工学の知識習得や構造的センスの醸成が不足している技術者が使っても誤用のおそれがなく、妥当な結果が得られるほどに進化したものとなっている。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(テキストP. 9)

2. 記述の通り。

3. 記述の通り。

4. コンピューターソフトウェアの利用者には、構造工学の知識習得と構造的センスの醸成が必要。構造設計者にとって解析プログラムを使用することは、あくまで構造設計のための手段であることを強く認識し、解析後には結果の評価を必ず行って解析内容が妥当かどうかを確認しなければならない。(テキストP. 12)




[ No. 2 ]
建築基準法及び建築士法における構造関係規定の位置づけに関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 既存不適格建築物の所有者•管理者などには、その建築物を常時適法な状態に維持するための努力義務が課せられている。


2. 構造計算適合性判定の要否及び構造設計ー級建築士の関与の要否は、共に構造設計で採用した構造計算方法により決定される。


3. 「一の建築物」として扱われる場合であっても、エキスパンションジョイントにより構造力学的に独立したものと判断される場合については、それぞれの部分を別の建築物とみなし、構造計算などの構造関係規定への適合を判断する。


4. 耐久性等関係規定は、構造計算の有無や方法にかかわらず適用される。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(法第8第1項)

2. 構造計算適合性判定の要否は計算方法によるが(法第20条第二号イ又は第三号イ)、構造設計ー級建築士の関与は建築物の規模による(士法第20条の2第2項)。

3. 記述の通り。
(法第20条第2項及び令第36条の4)

4. 記述の通り。
(令第36条第1項)




[ No. 3 ]
建築基準法における地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 高さが60mを超える超高層建築物については、建築物の供用期間中稀に発生する地震動(数度は経験することが予想されるレベル)及び極めて稀に発生する地震動(安全上検討が必要な最大級レベル)に対して検討する。


2. 建築基準法第20条第1項第二号の建築物の屋上から突出する水槽で、取り付け部からの高さが2m以下の場合、地震力に対する検討は不要である。


3. 建築物の地震力について、地震層せん断力係数を乗じる荷重の算定にあたり、特定行政庁が指定する多雪区域内においては、固定荷重及び積載荷重のほか、積雪荷重を加えるものとする。


4. 限界耐力計算を採用した建築物の屋根ふき材は、風圧力に加え、地旋力に対する検討も必要である。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
検討には時刻歴応答解析が用いられることが多い。(法第20条第1項第一号)

2. 屋上から突出する水槽、煙突その他これらに類するものにあっては、高さに関係なく検討する必要がある。(技術基準解説書P.269、平12国交告第1389号)

3. 記述の通り。
地震力算定用重量には短期積雪荷重の35%を見込む。(技術基準解説書P. 249、令第82条第一号〜第三号、第82条の5第一号)

4. 記述の通り。
屋根ふき材、特定天井に対しても耐震計算も含んでいる。
(技術基準解説書P.456、令82条の5第七号)




[ No. 4 ]
建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 積載荷重を建築物の実況によらない方法で設定し、基礎の垂直荷重による圧縮力を計算する場合、教室に連絡する廊下で、基礎のささえる床の数が3のときは、当該廊下の床の積載荷重として採用する数値を2,000 N/m2まで減らすことができる。


2. 雪下ろしを行う慣習のある地方で、雪下ろしを行い、これによる積雪量の軽減の実況等を表示する場合、積雪荷重の計算にあたって考慮すべき最低限の積雪量は1mである。


3. 建築物に近接して、風の方向に対してその建築物を有効に遮る他の建築物がある場合、その方向における設計用風圧力を限度に減らすことができる。


4. 沖積粘性土の下層面が地盤面下15m以深の地域で、杭周面に圧密沈下のおそれのある軟弱な粘性土が存在している場合、杭周面に下向きに作用する摩擦力を考慮して杭耐力の安全性を検討する必要がある。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1. 教室につながる廊下なので基礎用は3,200N/m2で、支える床の数が3なので0.90倍してよいので2,880N/m2までの低減となる。 (技術基準解説書P.273、令85条) (技術基準解説書P.273、令85条)

2. 記述の通り。
(技術基準解説書P.274、令86条第6, 7項)

3. 記述の通り。
但し、遮蔽物が建築の供用期間中存在することが絶対条件。また、どの程度低減できるのかは風洞実験等により確認する必要がある。(令87条第3項、技術基準解説書P. 281)

4. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 309)




[ No. 5 ]
建築基準法における鉄骨造の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 許容応力度計算(耐震計算ルート1-1及びルート1-2)においては、崩壊形の検討を行わないため、柱に板厚が6mm以上の冷間成形角形鋼管を使う場合は、柱の降伏が先行する可能性があることを前提として、柱の必要耐力を割り増す必要がある。


2. 許容応力度等計算(耐震計算ルート2)においては、曲げを受ける柱及び梁部材が必要に応じた塑性変形を生じるまでに局部座屈が生じないことを確かめなければならないが、その検討は部材の塑性化が想定される領域についてのみ行えばよい。


3. 保有水平耐力計算(耐震計算ルート3)においては、露出柱脚に伸び能力がないアンカーボルトを使う場合は、柱脚で保有耐力接合の条件が満たされていても、保有水平耐力の確認では1階の比値を0.05割り増すなどの措置をとる必要がある。


4. 保有水平耐力計算(耐震計算ルート3)においては、保有水平耐力の算定には接合部のパネル降伏を考慮しなくてよいこととしているが、これはパネル部及び近傍接合部が早期に破断しないという条件下でのみ可能である。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(技術基準解説書P.355、平19国交告示第593号第一号イ(3))

2. 記述の通り。
局部座屈の検討は、部材の塑性化が想定される領域について行う。(技術基準解説書P.363)

3. 伸び能力のないアンカーボルトを使用した場合であっても、柱脚の保有耐力接合を満足する場合は、Dsを割り増す必要はない。(技術基準解説書P.636、642)

4. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 375、376)




[ No. 6 ]

鉄筋コンクリート造建築物の耐震計算ルート3において、構造特性係数Dsを算出するために、柱の種別を定める指標が規定されている。これらの指標が柱の塑性変形能力に影響するどのような脆性破壊に係るものなのか、次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. h0/D(内のり高さ/せい)は主として、せん断破壊に係る指標である。


2.σ0/Fc(軸方向応力度/コンクリートの設計基準強度)は主として、圧縮破壊に係る指標である。


3. τu/Fc(平均せん断応力度/コンクリートの設計基準強度)は主として、せん断破壊に係る指標である。


4. pt(引張鉄筋比)は主として、斜め引張破壊に係る指標である。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 395)

2. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 396)

3. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 395)

4. ptは付着割裂破壊に係る係数である。
(技術基準解説書P. 396)




[ No. 7 ]
木質材料及び木質構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 燃え代設計に用いることのできる製材は、日本農林規格(JAS)に適合したものに限られ、無等級材を用いることはできない。


2. 集成材等建築物は部材の断面寸法を大きくし、燃え代設計を行えば準耐火構造とすることが可能であるが、層間変形角は1/150 rad以下に制限される。


3. 耐震計算ルート1の場合、筋かいが負担する水平力の割合に応じて、地震力を割り増す必要がある。


4. CLTパネルエ法の建築物は耐展計算ルート1で設計することができるが、一体型架構の大版パネル架構は耐震計算ルート1で設計することはできない。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(技術基準解説書P.420、昭62建告第1902号)

2. 記述の通り。
(技術基準解説書P.420、令第109条の2の2)

3. ルート2の場合に筋交いが負担する水平力の割合(B)による割増が必要になる。(技術基準解説書P.422、昭55建告第1791号第1)。

4. 記述の通り。
(平28国交告示第611号、テキストP.240)




[ No. 8 ]
建築基準法における耐風設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 平成12年建設省告示第1454号に定める基準風速V0は、平坦で開けた田園地帯などにおける高さ10mでの、再現期間50年の暴風の最大瞬間風速に相当する値である。


2. 超高層建築物等では、風方向のバフェティングの他に、建築物の後流に周期的に発生するカルマン渦による風直交方向振動を考慮する必要がある。


3. 日本建築学会の「建築物荷重指針 同解説」では、風向係数が取り入れられて、風向別の設計風速が算定できることになっているが、法令ではこれを認めていないので注意が必要である。


4. 風によって生じる振動に対する居住性については法令上の規定はないが、建築物の用途によっては重要な課題であり、再現期間1年の風速による最大応答加速度により評価することができる。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1. 最大瞬間風速ではなく、10分間平均風速である。(テキストP. 106)

2. 記述の通り。
直交方向振動や捩れ振動についても考慮しなければならない(平12建告1461号第3、技術基準解説書P. 488、テキストP. 110)

3. 記述の通り。
告示で定める風力係数、風圧係数および速度圧などの定義と異なる場合はそのまま使用できない。(テキストP. 116)

4. 記述の通り。
(テキストP.209)




[ No.9 ]
建築基準法における保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 必要保有水平耐力の計算においては、大地震動時における一質点系構造物の弾性応答1G(G:重力加速度)の水平力をもとに、標準せん断力係数C0を1.0以上と定めている。


2. 建築物全体の浮き上りによる転倒崩壊形となる場合、浮き上がりを考慮して保有水平耐力を計算する必要がある。


3. 脆性的な破壊をする部材を持つ建築物等の保有水平耐力は、一般に、それらが破壊するときの変形状態において各部材が負担する水平せん断力の和として求めてよい。


4. 鉄筋コンクリート造建築物の耐力壁直下の基礎については、通常の場合、基礎固定とした保有水平耐力の計算を行う。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 341)

2. 転倒崩壊形となる場合でも浮上りは生じないものとして計算する。
(技術基準解説書P. 346)

3. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 347)

4. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 347)




[ No. 10 ]
建築基準法における保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. Ds算出時に部分崩壊形、局部崩壊形となり、崩壊形を形成していない階が存在する場合、その階にさらに水平力が作用したと仮定した場合の崩壊形を別途適切に求め、そのときの応力を用いて部材種別の判定を行う。


2. Dsは、建築物の振動に関する減衰性及び各階の靱性に応じて、建築物に求められる必要保有水平耐力を低減する係数である。


3. 鉄筋コンクリート造耐力壁の基礎回転系の破壊形式は、脆性的な破壊ではないとして、Ds算出時に用いる耐力壁の種別の判定に係る要因としては除外されている。


4. 保有水平耐力の計算にあたり、転倒に対する基礎の検討が要求されているのは、塔状比が6を超える建築物に限られている。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 397)

2. 記述の通り。
(技術基準解説書P. 342、394等)

3. 記述の通り。
回転系の崩壊形では部材種別を決めることが出来ないため固定としている。
(技術基準解説書P. 402)

4. 転倒に対する検討は塔状比が4を超える場合である。(技術基準解説書P. 343)


2024年09月04日

令和四年度修了考査 法適合確認(記述式)問題1

法適合確認(記述式)

問題1

一貫構造計算プログラムを用いた鉄骨造床組みの荷重計算に関する設問[ No.1 ]、一貫構造計算プログラムを用いた鉄筋コンクリート造ラーメン架構の保有水平耐力計算に関する設問[ No.2 ]及び木造2階建て建築物の1階柱の引抜き力の計算に関する設問[ No.3 ]に解答せよ。

[ No.1 ]
図1に示すような鉄骨造片持小梁をもつ床組みを、一貫構造計算プログラムで形状どおりに入力した。一貫構造計算プログラム内では、床組みの一様分布荷重は亀甲分割して計算され、大梁に作用する支配荷重分の部材荷重(分布荷重や集中荷重)として計算される。なお、本一貫構造計算プログラムでは、応力計算と断面検定は柱及び大梁についてのみ行い、小梁の応力計算と断面検定は別途行っている。

R04-1_問題1_No.1_図1_片持小梁をもつ床伏図1.jpg
R04-1_問題1_No.1_図1_片持小梁をもつ床伏図.jpg
図1 片持小梁をもつ床伏図

この構造計算における注意点を述べた下記の記述の空欄@〜Dに入る適切な語句を次頁の選択肢 (ア)〜(ト) の中から選び、文章を完成させよ。なお、同じ記号を複数回選択してもよい。


この床組みにおいて、片持小梁Csb40は、控え小梁sb40と連梁になっており、大梁G1と小梁sb50の2点で支持されている。このとき、片持小梁Csb40の出の長さに対して、控え小梁sb40の長さが短いため、[ @ ]の影響で、G1支持点の反力は、片持小梁Csb40に作用する支配荷重[ A ]なる。

そのため、小梁、大梁に作用する床荷重が実況に応じて計算されたとしても、大梁G1に作用する部材荷重が[ B ]評価される。この不具合を解消するために、この床組み内の小梁をすべて大梁としてモデル化する方法もあるが、入力が煩雑となる。そこで、入力の煩雑化を避け、小梁を小梁のままモデル化する場合は、[ @ ]による[ C ]分を大梁G1への追加荷重として入力する必要がある。

片持小梁Csb40のたわみは、通常の元端固定条件下の計算では[ D ]評価されることから、控え小梁sb40及び支持大梁G1、支持小梁sb50も含めた解析モデルで計算する必要がある。



【 選択肢 】

(ア) 作用反作用 (イ) 支点反力 (ウ) 力のつり合い 
(エ) てこ反カ  (オ) 計算誤差 (カ) と等価に 
(キ) の2倍に   (ク) より大きく (ケ) より小さく 
(コ) とつり合わなく(サ) 適切に  (シ) 過小
(ス) 過大    (セ) 重複   (ソ) 2倍に  
(タ) 支配荷重  (チ) 荷重増大 (ツ) 誤差荷重 
(テ) 重複荷重  (ト) 不つり合い力



答え

 
[ 解答解説 ]
@ (エ) てこ反カ
A (ク) より大きく
C (チ) 荷重増大
D (シ) 過小

この床組みにおいて、片持小梁Csb40は、控え小梁sb40と連梁になっており、大梁G1と小梁sb50の2点で支持されている。このとき、片持小梁Csb40の出の長さに対して、控え小梁sb40の長さが短いため、てこ反カの影響で、G1支持点の反力は、片持小梁Csb40に作用する支配荷重より大きくなる。

そのため、小梁、大梁に作用する床荷重が実況に応じて計算されたとしても、大梁G1に作用する部材荷重が過小評価される。この不具合を解消するために、この床組み内の小梁をすべて大梁としてモデル化する方法もあるが、入力が煩雑となる。そこで、入力の煩雑化を避け、小梁を小梁のままモデル化する場合は、てこ反カによる荷重増大分を大梁G1への追加荷重として入力する必要がある。

片持小梁Csb40のたわみは、通常の元端固定条件下の計算では過小評価されることから、控え小梁sb40及び支持大梁G1、支持小梁sb50も含めた解析モデルで計算する必要がある。





[ No.2 ]
図2に示すような鉄筋コンクリート造ラーメン架構(直交方向もラーメン架構)の保有水平耐力を計算するために、一貫構造計算プログラムを用いて静的弾塑性荷重増分解析(以下、「増分解析」という)を行った。その結果、図2(a)に示すように、各階梁のヒンジ発生に先行して早期にせん断破壊する柱があった。そこで、「脆性部材がないものとして計算する方法」を採用するために、図2(b)のようにこの柱を両端ピンとしてモデル化し、あらためて増分解析を行い、保有水平耐力を求めた。

R04-1_問題1_No.2_図2_せん断破壊状況.jpgR04-1_問題1_No.2_図2_せん断破壊する部材のモデル化.jpg
図2 鉄筋コンクリート造ラーメン架構の保有水平耐力計算

この構造計算における問題点と対処法を述べた下記の記述の空欄@及びAに入る適切な語句を解答欄に記入し、文章を完成させよ

脆性部材がないものとして計算する方法」は、脆性部材を取り除いたとしても周辺の部材で[ @ ]できる場合を想定したものである。せん断破壊する柱の両端をピンとすることは、せん断破壊した後も、その柱が[ @ ]できると仮定していることになるので、このモデル化は別途詳細な検討をしない限り不適切である。柱のせん断破壊モードを許容し、強度抵抗型の架構(Ds = 0.55)として設計する場合で、この架構の保有水平耐力を増分解析で計算する場合、[ A ]で増分解析を打ち切り、その時点を保有水平耐力とする必要がある。




答え


[ 解答解説 ]
@ 鉛直力を支持
A せん断破壊する時点の手前

脆性部材がないものとして計算する方法」は、脆性部材を取り除いたとしても周辺の部材で鉛直力を支持できる場合を想定したものである。せん断破壊する柱の両端をピンとすることは、せん断破壊した後も、その柱が鉛直力を支持できると仮定していることになるので、このモデル化は別途詳細な検討をしない限り不適切である。柱のせん断破壊モードを許容し、強度抵抗型の架構(Ds = 0.55)として設計する場合で、この架構の保有水平耐力を増分解析で計算する場合、せん断破壊する時点の手前で増分解析を打ち切り、その時点を保有水平耐力とする必要がある。




[ No.3 ]
図3は、木造2階建て建築物の南側の鉛直構面の軸組を示している。この軸組に耐力壁の許容せん断耐力に見合う右向きの水平力が作用したときの、図中の左端の1階柱(ア) の柱脚接合部に生じる引抜き力T1を式(1)により算定する場合の以下の(問1)及び(問2)に解答せよ。ただし、1階柱(ア) には、鉛直荷重による押え込み力 7.30 kNがかかっているものとする。

R04-1_問題1_No.3_図3_南側鉛直構面軸組図.jpg
図3 南側鉛直構面軸組図


R04-1_問題1_No.3_式(1)_1回柱の引抜き力.jpg

(問1)
この軸組の柱脚接合部に生じる引抜き力T1を求めた下記の記述の空欄@〜Fに入る数値を解答欄に記入せよ。

壁倍率1.0は、許容せん断耐力で[ @ ]kN/mに相当することから、1階柱(ア) の右側耐力壁(ウ) の許容せん断耐力は、[ A ]kNである。2階柱(イ) の右側耐力壁(エ) の許容せん断耐力は、[ B ]kNである。

したがって、式(1)に1階と2階のそれぞれの値を代入すると、以下のようになる。

T1 = {[ A ] × (3.0 /1.0) × 0.8 +[ B ]×( [ C ]/ 1.0) × [ D ] } − [ E ]
 =[ F ] kN



答え


[ 解答解説 ]
 @ 1.96
 A 4 × 1.96 × 1.0 = 7.84
 B 3 × 1.96 × 1.0 = 5.88
 C 2.80
 D 0.80
 E 7.30
 F 24.69

壁倍率1.0は、許容せん断耐力で1.96kN/mに相当することから、1階柱(ア) の右側耐力壁(ウ) の許容せん断耐力は、4 × 1.96 × 1.0 = 7.84kNである。2階柱(イ) の右側耐力壁(エ) の許容せん断耐力は、3 × 1.96 × 1.0 = 5.88kNである。

したがって、式(1)に1階と2階のそれぞれの値を代入すると、以下のようになる。

T1 = {7.84× (3.0 /1.0) × 0.8 +5.88 ×( 2.80/1.0) × 0.80 } − 7.30
 =24.69 kN




(問2)
現在の標準的な計算法では、柱脚の接合金物の選択にあたっては、式(1)で引抜き力を算定し、それを上回る引抜き耐力を有する接合金物を選択することとしている。この方法に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、解答欄にその番号を記入せよ

1. この方法は、水平力によって耐力壁に生じる存在応力から引抜き力を求めるものである。

2. この方法は、内装下地石膏ボードや垂れ壁•腰壁などの、いわゆる雑壁の耐力が考慮されていないことから、安全側とはならない場合がある。

3. 下階の柱にかかる鉛直荷重による押え込み力の算定では、上階からの鉛直荷重を考慮する。



答え

 1
[ 解答解説 ]
耐力壁に生じる存在応力 → 耐力壁の許容せん断耐力


2024年09月03日

令和四年度修了考査 法適合確認(記述式)問題2

法適合確認(記述式)

問題2

耐震計算ルート3により、異なる3つの鉄筋コンクリート造建築物を対象に静的弾塑性荷重増分解析(以下、「増分解析」という)を実施して、保有水平耐力を確認した。
次の [ No.1 ]〜[ No.3 ] の設問に解答せよ。なお、各層の層間変形角の最大値をRmaxと呼ぶ。

[ No.1 ]
計算対象の建築物は、5階建て鉄筋コンクリート耐力壁付きラーメン構造である。増分解析による保有水平耐力の計算に用いた条件及び計算結果等を以下に示す。

く増分解析による保有水平耐力の計算に用いた条件及び計算結果等>
・架構は増分解析時に脆性破壊することなく、Rmaxが1/60時点において全体崩壊形を形成した。

・架構の水平耐力はRmaxが1/100時点において必要保有水平耐力を上回っていた。

・Rmaxが 1/100時点及び 1/60時点における1階の柱•耐力壁の種別ごとの負担水平力の和及び層せん断力を表1に示す。なお、表1に示す柱及び耐力壁の種別は、Rmaxが 1/100時点、あるいは 1/60時点における応力等によりそれぞれ求めた。表1に示す以外の種別の柱及び耐力壁はなかった。

表1 1階の柱•耐力壁の種別ごとの負担水平力の和及び層せん断力
R04-1_問題2_No.1_表1_1階の柱•耐力壁の種別ごとの負担水平力の和及び層せん断力.jpg


以上の条件及び計算結果を基に、必要保有水平耐力を算定するための次の@及びAの設問に解答せよ。

@ 1階の構造特性係数Dsの算出に用いる柱の部材群としての種別を告示に従って判定し、その判定理由を簡潔に記述せよ。



答え

 
[ 解答解説 ]
全体崩壊形を形成したRmax=1/60時を崩壊形とし、各部材の負担水平力から柱の部材群としての種別を判定する。
・部材の耐力の割合の算定
 γA = 5,445/(5,445 + 6,655) = 0.45
 γC = 0/(5,445 + 6,655) = 0.00

・部材群の種別の判定
 次の表により判定する
R04-1_問題2_No.1_部材の耐力の割合と種別.jpg

γAく0.5であることから部材群としての種別はAではない。
γC < 0.5であり、部材群としての種別はAでないことから、部材群としての種別はBの条件にあてはまる。
→ 部材群としての種別はB




A 1階の構造特性係数Dsを告示に従って算出し、その算出理由を簡潔に記述せよ。



答え

 
[ 解答解説 ]
全体崩壊形を形成したRmax=1/60時を崩壊形とし、各部材の負担水平力から柱の部材群としての種別を判定する。
・βuの算定
 βu = 9,900 / 22,000 = 0.45
・Dsの判定
 次の表により判定する。
R04-1_問題2_柱及びはりの部材軍としての種別.jpg

 柱の部材群としての種別:B
 耐力壁の部材群としての種別:A
 βu = 0.45
であることから、Ds = 0.40となる




[ No.2 ]
計算対象の建築物は6階建て鉄筋コンクリート連層耐力壁付きラーメン構造である。次の枠内の文章は、増分解析に用いた条件及び増分解析結果の経過を述べたものである。

く増分解析に用いた条件及び必要保有水平耐力等>

・せん断破壊した耐力壁は負担水平力を保持するとみなして、増分解析を行う。

・2階の構造特性係数Dsは鉄筋コンクリート構造の最大値である0.55として、必要保有水平耐力を計算する。

く増分解析結果の経過>
・Rmaxが 1/250時点において、2階の連層耐力壁の一つが最初にせん断破壊した。

・Rmaxが 1/200時点において、2階の連層耐力壁の過半(耐力壁の負担せん断力の合計が層せん断力の50%以上)がせん断破壊した。

・Rmaxが 1/170時点において、2階の連層耐力壁の過半(耐力壁の負担せん断力の合計が層せん断力の70%以上)がせん断破壊した。

・Rmaxが 1/100時点において解析を終了した。解析終了時には、全ての連層耐力壁がせん断破壊、あるいは曲げ破壊した。


以上の経過を基に、2階の保有水平耐力として、Rmaxがどの時点の層せん断力を採用するのが適切か、その理由も含めて簡潔に記述せよ。



答え


[ 解答解説 ]
Rmaxが1/250時点の層せん断力を採用するのが適切。
理由は以下の通り。
・耐力壁はせん断破壊後に構造耐力上支障のある急激な耐力低下を起こすことから、Rmax=1/250時点より変形が進むと、架構は耐力を維持できる状態でなくなっている。

・上記より、以降のそれ以降の解析で得られた層せん断力は実際の架構の耐力を反映できていない。




[ No.3 ]
計算対象の建築物は8階建て鉄筋コンクリートラーメン構造である。増分解析に用いた条件・仮定及び計算結果を以下に示す。

く増分解析に用いた条件・仮定>

・使用した増分解析プログラムでは、N ≧ 0.4bDFc のときの1階外柱の曲げ終局モーメント(Mu)の算定式として、式(1)が用いられている。

R04-1_問題2_No.3_式(1)1階外壁柱の曲げ終局モーメントMu.jpg

く計算結果>
・荷重の増大にともない1階外柱の柱脚に塑性ヒンジが発生し、その後、柱脚の曲げ終局モーメントが最大になり、脆性破壊することなく、Rmaxが 1/40時点において全体崩壊形を形成した。

・全体崩壊形が形成されるまで、柱脚には塑性ヒンジが生じた状態が継続され、柱頭には塑性ヒンジは生じなかった。

・1階外柱の曲げ終局モーメントが最大になった時点(ステップA)及び全体崩壊形の形成時点(ステップB)における1階外柱のモーメントを図1及び表2に示す。図1及び表2中の記号は式(1)と同じである。

・ここでは、柱頭の曲げモーメントは、柱脚に塑性ヒンジが発生した後は一定としている。

R04-1_問題2_No.3_図1_1階外柱の曲げモーメント.jpg
図1 1階外柱の曲げモーメント

表2 ステップA及びステップBの1階外柱の応力表
R04-1_問題2_No.3_表2_ステップA及びステップBの1階外柱の応力表.jpg


以上の条件・仮定及び計算結果を基に、1階外柱に関する以下の@〜Bの設問に解答せよ。


@ ステップBにおける柱のせん断力(QB)を、M0及び h0を用いて表記せよ。



答え


[ 解答解説 ]

BMuの算定
 BMu = Mo × (bDFc − 0.52bDFc)/(bDFc − 0.4bDFc) = 0.8 Mo
・QBの算定
 QB= (0.2Mo + BMu) /ho = (0.2Mo + 0.8Mo)/ho= Mo/ho




A 柱の破壊モードを、せん断終局耐力(Qsu)が式(2)を満足する場合は曲げ破壊、満足しない場合はせん断破壊とする。

Qsu ≧ 1.25 QM   式(2)
ここに、QM:柱脚に塑性ヒンジ発生以後の柱の最大せん断力

式(2)の条件より、当該柱の破壊モードを曲げ破壊とするために必要なせん断終局耐力(Qsu)の下限値(minQsu)を、M0及び h0を用いて表記せよ。柱のせん断終局耐力(Qsu)は軸方向力やシアスパンの変動にかかわらず一定とする。


答え


[ 解答解説 ]
・QMの算定
ステップAの時の柱せん断力 QAを算定する。
AMu = Mo × (bDFc − 0.4bDFc) / (bDFc − 0.4bDFc) = Mo
QA = (0.2Mo + AMu)/ho = (0.2Mo + Mo) /ho= 1.2Mo / ho
QA > QBにつき、柱脚に塑性ヒンジが発生以後の柱の最大せん断力QMは下記となる。
QM = QA= 1.2Mo / ho

minQsuの算定
破壊モードを曲げ破壊とするためには式(2)を満足する必要があることから、minQsuは以下となる。

minQsu = 1.25QM = 1.50 Mo/ho




B 当該柱について、構造特性係数Dsの算出に用いる種別を告示に従って判定せよ。なお、当該柱は下記の条件によるものとし、取り付く梁の種別は考慮しなくてよい。

・上記AのminQsu以上のせん断終局耐力(Qsu)が得られる帯筋が配筋されている。

・柱のせい(D)に対する内のり高さ(h0)の比は2.8である。

・主筋の引張鉄筋比(pt)は1.0%である。

・増分解析におけるコンクリートの設計基準強度(Fc)に対する柱の平均せん断応力度(τu)の比の最大値は0.125である。



答え


[ 解答解説 ]
これまでの回答及び、問題文中の値から、下表に従って判定する。

R04-1_問題2_No.3_柱及び梁の区分.jpg

問題文の条件では、せん断破壊、圧縮破壊以外の構造耐力上支障のある急激な耐力の低下のおそれのある破壊の有無は確認できないが、そのような破壊が生じない条件においては、上記より当該柱の種別はFCと判定される。


2024年09月02日

令和四年度修了考査 法適合確認(記述式)問題3

法適合確認(記述式)

問題3

図1に示す1層2スパンの鉄骨造筋かい付きラーメン架構に関する次の[ No.1 ]〜[ No.4 ]の設問に解答せよ。図2に筋かい端部接合部の詳細を、図3に筋かい端部接合部の断面を、表1に山形鋼の突出脚の無効長さを、表2及び表3に筋かい及び高カボルトの諸元を示す。なお、柱は冷間成形角形鋼管、梁はH形鋼、筋かいは山形鋼とし、柱の鋼種はBCR295、梁及び筋かいの鋼種はSN400Bとする。

R04-1_問題3_ 図1_架構の解析モデル図.jpg
図1 架構の解析モデル図(単位:mm)

R04-1_問題3_図2_筋階の端部接合部詳細.jpg
図2 筋かいの端部接合部詳細

R04-1_問題3_ 図3_筋かいの端部接合部断面.jpg
図3 筋かいの端部接合部断面(A-A)

表1 山形鋼の突出脚の無効長さhnの値
R04-1_問題3_ 表1_山形鋼の突出脚の無効長さの値.jpg

表2 筋かいの諸元
R04-1_問題3_表2_筋かいの諸元.jpg

表3 高力ボルトの諸元
R04-1_問題3_ 表3_高力ボルトの諸元.jpg


[ No.1 ]
本建築物に耐震計算ルート1-1を採用する場合、建築物の規模に関する条件以外で、構造計算上満足する必要がある条件を2つ述べよ。



答え


[ 解答解説 ]
1) 一次設計における許容応力度計算を行うに当たり、地震力の算定に用いる標準せん断力係数をCo ≧ 0.3とすること。その際、図2より本建物の柱は冷間成形角形鋼管(BCR295)を用いた通しダイアフラム形式(内ダイアフラム形式以外の形式)の柱はり接合部となっているので、柱の地震時応力は1.3倍に割り増して許容応力度の検定を行うこと。

2) 水平力を負担する筋かいの端部及び接合部を保有耐力接合とすること。




[ No.2 ]
本建築物に耐震計算ルート1-1を採用する場合、令第82条に規定される許容応力度計算において、令第88条第1項に規定する地震力に対する筋かいの短期軸応力Nを求めよ。

R階の地震時重量は1,000 kNとし、地震力の算定において、地震地域係数Zは1.0、地盤種別は第二種地盤とし、標準せん断力係数C0は用いうる最小の値とする。

また、建築物の地震時層せん断力に対する筋かいのせん断力負担率は80%とし、筋かいに長期軸力は生じず、筋かいは圧縮力を負担しないものとする。



答え


[ 解答解説 ]
地震層せん断力Q1を求める。
 Z=1.0
 第二種地盤で Tc= 0.6 > T= 0.03 × 3m=0.09sec.
より、Rt = 1.0
 平屋建てにより A1 = 1.0
 R階の地震時重量は1,000kNなので、W1 = 1,000kN
 耐震計算ルート1-1を採用する場合の標準せん断力係数Coの最小値はCo=0.3
よって、
Q1 = Z•Rt •A1•Co •W1
  = 1.0 × 1.0 × 1.0 × 0.3 × 1000
  = 300kN

筋かいは圧縮力を負担しないので、筋かいが負担する全体の80%の層せん断力は全て引張側の筋かいが負担する。筋かいの軸力は材軸方向の成分となるので、負担する層せん断カの5/4倍となる。

従って、筋かいの短期軸応力Nは、
N = Q1 × 0.8 × 5/4= 300kN
となる。




[ No.3 ]
筋かいの保有耐力接合では、筋かい軸部の全断面が降伏するまで破断しないことを確認する必要がある。図2及び図3に示す筋かい端部接合部について、次の@〜Cの設問に解答し、保有耐力接合を満足しているか判定せよ。ただし、「筋かい母材端部の破断」及び「高カボルトの破断」以外の破断形式については式(1)を満足しているものとする。

R04-1_問題3_ No3_式(1)保有耐力接合の判定.jpg

@ 筋かいの軸部降伏耐力Nyを式(2)により求めよ。

 Ny = Ag × F   式(2)



答え


[ 解答解説 ]
筋かい材の全断面積 Ag及び基準強度Fは表2より、
Ag = 1,505 (mm2)
F = 235 (N/mm2)
よって、筋かいの軸部降伏耐力Nyは式(2)より、
 Ny = Ag × F
   = 1,505 × 235
   = 353,675N = 353.7kN




A 筋かい母材端部の破断耐力bNuを式(3)により求めよ。

R04-1_問題3_ No3_式(3)筋かい母材端部の破壊耐力bNu.jpg


答え


[ 解答解説 ]
ボルト穴による断面欠損の総和ΣAdは、表3及び図2より、孔径18mm、山形鋼板厚6mm、高カボルトは1列配置なので、
ΣAd = 18 × 6 × 2 =216 (mm2)

山形鋼の突出脚の無効長さ分の断面積の総和Σhn•tは、表1、図2及び図3より、
Σhn•t = 0.33 × 65 × 6 × 2 = 257 (mm2)
筋かい材端部の有効断面積bAeは、
bAe = Ag − ΣAd − Σhn•t
  = 1,505 − 216 − 257
  = 1,032 (mm2)
筋かい材の破断応力度bσuは、表2より
bσu = 400 (N/mm2)
よって、筋かい母材端部の破断耐力bNuは式(3)より、
bNu = bAe × bσu
  = 1,032 × 400
  = 412,800N = 412.8kN




B 高カボルトの破断耐力fNuを式(4)により求めよ。

R04-1_問題3_ No3_式(4)高力ボルトの破断耐力fNu.jpg


答え


[ 解答解説 ]
図2、図3及び表3より、
 ボルトの本数 n=4
 ボルトがせん断を受ける面数 m=2
 高力ボルトの1本の軸断面積 fA=201 (mm2)
高カボルト破断の有効断面積fAは、
 tAe = 0.75 × n × m × fA
   = 0.75 × 4X 2X201= 1,206 (mm2)
表3より、ボルトの破断応力度fσuは
 fσu = 1,000 (N/mm2)
よって、高カボルトの破断耐力fNuは式(4)より
 fNu = fAe × fσu = 1,206 × 1,000
   = 1,206,000N= 1,206kN




C 以上の@〜Bの結果を式(1)の判定式に代入し、筋かい端部接合部が保有耐力接合を満足しているか否かを判定せよ。



答え


[ 解答解説 ]
式(1)の右辺 α•Ag•Fは@の結果より、
 α•Ag•F = 1.2•Nγ = 1.2 × 353.7
      = 424.4kN

「筋かい母材端部の破断」形式の場合の式(1)の左辺 Aj•σuはAの結果より、
 Aj•σu = bNu = bAe × bσu
       = 412.8kN < α•Ag•F = 424.4kN
これは式(1)を満足していない。

「高カボルトの破断」形式の場合の式(1)の左辺 Aj•σuはBの結果より、
 Aj•σu = fNu = fAe × fσu = 1,206kN > α•Ag•F = 424.4kN
これは式(1)を満足している。

保有耐力接合を満足するためには、全ての破断形式において式(1)を満足しなければならない。しかし、この筋かいの接合部は「筋かい母材端部の破断」形式の場合に式(1)を満足していないため、保有耐力接合を満足していない。




[ No.4 ]
一般に、耐震計算ルート1-1を採用する場合、筋かいの保有耐力接合の確認において、「筋かい母材端部の破断」及び「高カボルト(接合ファスナー)の破断」以外に検討の対象となる筋かい端部接合部の破断形式を3つ述べよ。



答え


[ 解答解説 ]
1) 「筋かい又はガセットプレートのはしあき部分の破断」形式

2) 「ガセットプレートの破断」形式

3) 「ガセットプレート溶接部の破断」形式


2024年08月30日

令和三年度修了考査 構造設計(4肢択一式) No.1 〜 No.10


構造設計(選択理由記述式4肢択ー問題)

[ No.1 ]
図のように、鋼管の中にPC鋼棒が挿入されており、このPC鋼棒に初期導入張力Niが与えられている。なお、初期導入張力Niは、PC鋼棒の降伏軸力に比べて十分小さく、鋼管も降伏しない範囲の理想的なモデルを考える。また、セットロス及びリラクセーションは生じないものとする。この両端のナット部分をつかんで引張力を与える場合、次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

R3-2_No.1_鋼管の中にPC鋼棒が挿入されたもの.jpg

1. 初期軸剛性の理論値は
 ( Eb・Ab+Ep・Ap )/ L
 である。


2. 鋼管が剛体(Ep = ∞ )であると見なせる場合、ナットがエンドプレートから離間するときの引張力は、Ni よりも小さくなる。


3. 鋼管が剛体と見なせない場合、ナットがエンドプレートから離間するときの引張力は、Niよりも大きくなる。


4. ナットがエンドプレートから離間した後の軸剛性の理論値はEb・Ab/Lである。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.◯
初期は鋼管とPC鋼棒ともに張力の導入に伴う応力が生じているため、軸剛性は鋼管とPC鋼棒の累加となる。記述の通り。

2.×
鋼管が剛体であると見なせる場合、鋼管の変形は0であるため離間するときの引張力はNiと等しくなる。よって不適当。

3.◯
初期状態での鋼管の縮み量は (L・Ni)/(Ep・Ap)
離間するまでの剛性は鋼管とPC鋼棒が両方とも有効なため、
(Eb•Ab+Ep•Ap)/L
よって、離間するのに必要な軸力は、
(Eb•Ab+Ep•Ap)/L × (L•Ni)/ (Ep•Ap)
= (Eb•Ab+Ep•Ap)/ (Ep•Ap) × Ni

Eb•Ab > 0より
(Eb•Ab+Ep•Ap)/ (Ep•Ap) > 1
よって、記述の通り。
(平成30年度4肢択ー式No.2)

4.◯
離間後は鋼管の軸力はなくなり、PC鋼棒のみの剛性となる。記述の通り。





[ No. 2 ]
コンクリートの特性及び鉄筋コンクリート造の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 圧縮力を受ける鉄筋コンクリート造柱のコンクリートは、時間経過に伴い乾燥収縮ひずみや圧縮クリープひずみが生じ、コンクリートの負担する圧縮応力が徐々に増大する。


2. 骨材の種類が同じ場合、強度の高いコンクリートほど、同じ応カレベルのひずみが小さく、圧縮強度時のひずみは0.0015〜0.003程度である。


3. 鉄筋コンクリート造の柱及び梁のせん断補強筋比は 0.2%以上と規定されているが、高強度コンクリートを用いる場合には、コンクリートの設計基準強度に応じてせん断補強筋量を増やす必要がある。


4. 鉄筋コンクリート部材の許容応力度計算に用いるコンクリートに対する鉄筋のヤング係数比は、コンクリートの種類、荷重の長期•短期にかかわらず同一とし、コンクリートの設計基準強度に応じて定められた値が用いられる。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.×
クリープひずみが生じることでコンクリートの剛性は下がるため、圧縮応力は対的に剛性が上がる鉄筋側に集まる。よって、不適当。
(令和2年度4肢択ー式No. 15)

2.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第1章2-2鉄筋コンクリートP. 131)

3.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第3章3-6部材の強度と剛性P. 283)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第3章3-1コンクリートの材料特性P. 273)




[ No. 3 ]
構造計画 構造解析に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 鉄筋コンクリートの構造物で、耐震壁の偏在によりX方向加力時の偏心量が大きくなる場合には、直交するY方向の建築物の両サイドに耐震壁を設け、建築物のねじれ剛性を大きくすることも、偏心の影響を小さくするのに有効である。


2. 鉄骨大梁の設計においては、鉛直荷重による梁のたわみや振動障害の低減策として「梁の断面を大きくする」、「使用上問題にならない位置を選び、鉄骨間柱を上下階の梁に接合する」、「格子梁として二方向に負担荷重を分散させる」などが有効である。


3. 建築計画は建築設計者と建築主の間で綿密な打ち合わせによりできあがっていくものであり、建築計画ができあがってから構造計画を行い、構造方式等を決めていくことが合理的かつ経済的である。


4. 剛強な地下壁で囲われた建築物の上層階の地震力は、1階のスラブを介して外周の地下壁に流れるが、地下階の柱には地震力の作用方向とは正反対のせん断力、すなわち逆せん断力が作用する。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第1章3-4主体構造の計画P. 145)

2.◯
記述のとおり。

3.×
設計の初期の段階から、建築家と構造設計者の協働が重要であるため、不適当。
(テキスト第1編第1章1構造設計者の役割と責任P. 6)

4.◯
壁の量やスパン数によっては、逆せん断力が必ず発生するわけではないが、一般的には逆せん断力が発生することもあると考えられるので3よりは適当であると考えられる。 (テキスト第II編第1章4-2構造解析とモデル化P. 158)




[ No.4 ]
耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 静的荷重増分解析により算定される保有水平耐力は、架構により一義的に決まる値ではなく、水平力の高さ方向の分布形状に影響される。


2. 静的荷重増分解析を用いた保有水平耐力計算における必要保有水平耐力に達する時点の変形は、極めて稀に発生する地震動に対する架構の最大応答変形と同じと見なすことができる。


3. エネルギーの釣合いに基づく耐震設計法は、鋼構造のように靭性が大きく、繰返し力に対してエネルギー消費が安定している構造物には有用である。


4. 時刻歴応答解析による耐震設計において、地震動に与える表層地盤の影響は、工学的基盤より上部の地盤による入力地震動の増幅を評価することで考慮される。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 178)
2.×
漸増載荷解析では一定の水平力部分布を仮定するなど、保有水平耐力の計算は地震時の応答変形を求めるものではないため、必要保有水平耐力が発揮される時点の変形は、極めて稀に発生する地震動に対する架構の最大応答変形とは必ずしも一致しないため、不適当。(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 179)

3.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-2耐震設計法P. 184)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第Il編第2章2-3時刻歴応答解析による耐震設計P. 185)




[ No.5 ]
木質構造の構造設計等に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. ボルトやドリフトピンなどの接合具を用いた接合部の降伏せん断強度は、複数の降伏モードを仮定して計算するが、いずれの降伏モードも脆性的な破壊モードである。


2. 小屋裏にロフトを設ける場合には、ロフトの床面積に所定の係数を乗じた面積を、直下階の床面積に加算して、必要壁量を決定する。


3. 木質ラーメン構造の変形を求める場合、機械的な接合部は半剛節を考慮して計算する必要がある。


4. 木材の繊維直角方向のヤング係数は、繊維平行方向のヤング係数の1/50から1/25程度である。



答え

 1
[ 解答解説 ]
1.×
ボルト等の曲げ降伏など脆性的な破壊でない降伏モードもあるため不適当。

2.◯
記述のとおり。
(平成12年建設省告示第1351号)

3.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章1-3鉛直架構のモデル化と靭性P. 237)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章1-2材料 許容応力度P.225))




[ No.6 ]
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 衝撃試験において、シャルピー吸収エネルギーが高いほど脆性破面率は小さい。


2. JISに規定される建築構造用圧延鋼材のSN490材にはB種、C種の2種類があり、柱梁接合部の通しダイアフラム等、板厚方向に力を受ける箇所にはC種を使用することが望ましい。


3. H形鋼梁の横座屈を防止するには、梁の両面に鋼板を溶接し、日の字断面などの閉断面にして、ねじり剛性を高めることも効果的である。


4. 細長比が限界細長比を超える圧縮材の座屈耐力を向上させるためには、より降伏強度の高い鋼材を使用することが有効である。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章2-1鋼材の特性P. 252)

2.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第1章2-1鋼材P. 124)

3.◯
日の字断面のような閉断面とすることで、ねじり剛性だけでなく弱軸剛性の増加が図られ横座屈防止には有効である。
記述のとおり。

4.×
細長比が限界細長比を超えた領域での座屈耐力は弾性座屈となり、ヤング率と長さが影響し、鋼材の降伏強度は影響しない。したがって、降伏強度の高い鋼材を使用しても座屈耐力は向上しないため、不適当。




[ No.7 ]
鉄筋コンクリート造部材の変形性能に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 梁の変形性能の確保では、柱に比べて軸力が小さいため曲げ降伏後のせん断破壊が早期に生じないようヒンジ領域のせん断設計に配慮すればよいが、引張鉄筋比が大きい短スパン梁では、それに加えて付着割裂破壊の防止に対する配慮が必要である。


2. 曲げ破壊する耐震壁の変形性能には、圧縮側柱の軸力比やコンクリートの圧縮特性が大きく影響するため、圧縮側柱の軸圧縮強度の増大や、柱脚部への拘束筋の配筋が耐震壁の変形性能の改善に有効である。


3. 曲げ破壊する柱の変形性能の確保には、コンクリートの拘束が重要であるため、降伏強度及び帯筋比が同じであれば、中子筋を用いずに外周筋のみで拘束するほうが有効である。


4. 柱の変形性能の確保では、降伏ヒンジの塑性回転量に応じたせん断強度の低下やヒンジ領域の拡大に伴う付着長さの減少を考慮し、せん断破壊や付着破壊に対する余裕度を大きくすることが重要である。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 290)

2.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P.291)

3.×
中子筋の採用は主筋の座屈防止にも有効であり変形性能の改善に大きな効果があるため、不適当。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 287)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第3章3-8部材の変形性能P. 287)




[ No. 8 ]
免震構造・制振構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 免震材料の種類は機能別に支承材、減衰材、復元材の3種類からなっており、いずれも国土交通大臣認定材料となっているが、免震戸建て住宅や超高層免震建築物等に用いられる台風により建築物が水平方向に移動するのを止めるための拘束装置は大臣認定材料ではない。


2. 免震構造の点検には、竣工時検査、通常点検、定期点検、応急点検、詳細点検等があるが、竣工時検査を行っていれば、定期点検では省略できる項目もある。


3. 制振ダンパーには、変位に依存する鋼材ダンパーと速度に依存する粘性ダンパーがあるが、鉄骨造の超高層建築物に制振ダンパー設置を計画する場合、性状の違う鋼材ダンパーと粘性ダンパーとを組み合わせて使用したほうが、応答低減効果がよくなる場合が多い。


4. 超高層建築物にせん断型制振装置を配置する場合、地震時の柱の軸変形の小さいスパン内に配置するより、柱の軸変形の大きいスパン内に設置したほうが制振装置の地震エネルギーの吸収性がよくなる。



答え

 4
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。

2.◯
記述のとおり。
(テキスト第11編第3章6-1免震構造P. 323)

3.◯
性状の違う鋼材ダンパーと粘性ダンパーを組み合わせることは、最大変位と最大速度の位相差を利用することになる。その結果、応答低減効果が向上することがある。
記述のとおり。

4.×
一般に柱の軸変形の大きいスパンでは全体変形の中における曲げ変形成分の影響が大きいと考えられることから、せん断変形が相対的に小さいと考えられる。そのため、せん断型制振装置の場合にはエネルギーの吸収性は下がると考えられるため、不適当。




[ No. 9 ]
地盤・基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 標準貰入試験を実施すると対象地盤のN値が求められるが、試験時にサンプラーにより採取した試料を分析して、液状化判定に必要な粒度分布などの物理特性を求めることができる。


2. 液状化判定の対象とすべき地盤は、一般に、地表から20m以浅の飽和砂地盤で、細粒分含有率が35%以下、粘土分含有率が10%以下の沖積層または埋立て地盤である。


3. 杭の鉛直方向の抵抗要素として先端抵抗と周面摩擦抵抗があり、杭頭部に鉛直力が作用したときに沈下の発生により先端抵抗が先行して発揮され、沈下が増加するとともに周面摩擦抵抗が発揮される。


4. 超高層建築物において、地下部分が深く基礎底直下の地盤の支持性能が比較的高い場合などに、杭基礎と直接基礎を併用したパイルド・ラフト基礎が合理的な基礎として設計できる可能性がある。



答え

 3
[ 解答解説 ]
1.◯
記述のとおり。
(テキスト第1I編第3章7-3地盤調査P. 338)

2.◯
テキストにあるように、液状化判定の対象とすべき地盤の条件には、「沖積層または埋め立て地盤」という言葉はなくなっているが、注意が必要と記載されており内容的にはほぼ適当と考えられる。(テキスト第1I編第3章7-2地盤に関する基礎知識P. 333)

3.×
杭頭部の変形の発生とともに周面摩擦抵抗が先行し、その後に先端抵抗が発生するのが通常の杭基礎の抵抗であるので、不適当。(テキスト第1I編第3章7-5基礎の設計P. 347)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第1I編第3章7-5基礎の設計P. 350)




[ No. 10 ]
建築物の耐震診断•耐震補強に関する次の記述のうち、最も不適当なものを選び、不適当とする理由を述べよ

1. 平成7(1995)年に発生した兵庫県南部地震を契機として制定された建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)は、その後、より一層の耐震改修促進のため一部の特定建築物に対する耐震診断の義務化等を内容とする改正が行われている。


2. 鉄筋コンクリート造建築物の「下階壁抜け柱」では、地震時に大きな変動軸力が作用するため、第2次診断手法を適用することはできない。


3. 鉄骨造建築物の耐震診断における構造耐震指標 lsiは、保有水平耐力Quiを有する構造物が完全弾塑性応答をすると仮定したときの等価な弾性応答層せん断力をQui × Fi(Fi:層の靭性指標)として、二次設計レベルの地震入力による弾性応答層せん断力に対してどの程度上回っているかを表したものである。


4. 木造住宅の「一般診断法」において、保有する耐力と必要耐力の比で求められる上部構造評点が1.0未満の場合、上部構造は倒壊する可能性がある。



答え

 2
[ 解答解説 ]
1.◯
(テキスト第II編第4章1-2既存建築物に対する耐震化対策P.375)

2.×
下階壁抜け柱の検討の際には、2次診断であっても、フレーム解析の概念を用いて変動軸カレベルの検討を行うなど有効であることから、適用できないわけではないので不適当。(テキスト第II編第4章2-2耐震性の判定P. 381)

3.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第4章3-2耐震性の判定P. 386)

4.◯
記述のとおり。
(テキスト第II編第4章4-2一般診断法P. 389)


検索
構造設計一級建築士
スケジュール
・講習日程
 札幌市 9/25・26
 仙台市 9/10・11
 東京都 9/26・27
 名古屋 9/19・20
 大阪府 9/12・13
 広島市 9/19・20
 福岡市 9/30・10/1

 オンライン 9/11〜10/1

・合格発表 1/24(金)まで
     
重要ポイント
構造コメンタール
 1.1 力とつり合い
 1,2 静定構造物
 1.3 断面の性質と応力度
 1.4 部材の変形
 1.5 不静定構造物
 1.6 座 屈
 1.7 振 動
 1.8 骨組の塑性解析

 2.1 構造設計の基礎
 2.2 構造計画等
 2.3 鉄骨構造
 2.4 鉄筋コンクリート構造
 2.5 鉄骨鉄筋コンクリート構造
 2.6 壁構造
 2.7 木構造
 2.8 基礎構造
 2.9 その他の構造等

建築材料
 1. 木 材
 2. コンクリート
 3. 鋼 材
 4. アルミニウム
 5. その他の材料
カテゴリーアーカイブ