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2021年04月20日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part81 延長戦前
神奈川 92
秋田 92
第4Qの激戦をもってしても、決着はつかなかった。
弥生「ふーっ、最後のプレーは見ごたえがあったわ。仙道君もイカシてたし。」
中村「僕の記者人生で、山王VS湘北戦に勝るとも劣らない名勝負です!」
(ポカッ)← 弥生が、ぶった。
弥生「あんたの記者人生って、そんなにないやないの。
しかし、最後の牧君の顔は不満そうだったわね。」
そのころ、神奈川ベンチは揉めていた。
牧「神、なぜゴールを狙わなかった!!お前なら、打てたはずだ。」
神「・・・。」
三井「何を怒ってんだ。とりあえず確実な方法を取っただけだろう!?」
牧「三井はすっこんでろ」
三井「!?なんだと」
三井が怒り狂う前に、赤木が制した。
赤木「牧よ。あの場面、仙道へのパスで間違いなかったと思うが。
高頭監督も難しいようなら仙道へのパスでという作戦だったはずだ。」
牧「甘いな、赤木。あの形は、海南では何千、何万回と練習してきた必勝の形だ。
あのくらいのマークで打てなくなるようなやわな鍛え方をしていない。
神、答えろ!」
神「確かに、打てたタイミングだと思います。ただ、打てなかった。
気づいたら仙道にパスをしていた。」
神は正直に答えた。
牧は神を責めたいわけではなかった。ただ、来年、海南を引っ張るのは間違いなく神なのだ。
来年の神は、チームを引っ張る立場だ。他者に頼らず、自分で切り開くくらいの気概が欲しかったのだ。
たとえ外しても勝負に行ける場面では勝負にいってほしかった。そういう思いが強く、強い口調で責めたのだ。
同学年の仙道がプレッシャーを感じずむしろ楽しんでプレーをしているところも牧を苛立たせた。
高頭「牧、神。今は、海南のことより神奈川のチームのことを考えるべきだ。
確かに、神には、勝負に行くという気持ちが三年生のお前たちに比べると薄いのかもしれない。
ただ、逆に三年生の試合を自分で壊せないという思いは強いのは感じてやれ。
神よ、これから考えるより先に動けるように帰ったら猛特訓だ。」
神「は、はいっ。」
高頭「さて、延長戦だ。なーんもかんがえておらん。が、ここまで来たら気持ちの問題だ。
牧、赤木、藤真、三井、仙道。お前たちで勝負を決めてこい。」
高頭は、今考えられる調子が良い5名の名を告げた。
一方、秋田ベンチは、
堂本「やられたな。まさかシュートでなく、パスでくるとはな。」
深津「やられたらやり返すだけピョン。まだ負けてないピョン。」
河田「ふー、本当に面白れぇな。神奈川は。赤坊主や流川がいなくても仙道みてぇな沢北に似たやつもいる。」
堂本「延長戦は体力の限り走れ。跳べ。それだけだ。
お前らは体力では負けん。
河田、深津、野辺、松本、美紀男。お前ら、インターハイの悔しさは忘れてないな!
全力で勝負を決めてこい。あいつらは疲れてシュートの精度も落ちる。
リバウンドを河田、野辺、美紀男で制空権を支配しろ。」
両監督は、最後の作戦タイムを終了した。
(続く)
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2021年04月19日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part80 ホイッスル
神奈川 90
秋田 92
牧は、ずっと考えていた。
日本一になるにはどうすればよいかを。2年のインターハイでベスト4になってからずっとだ。
それには、自分がインサイドでかき乱し、アウトサイドで強力な3Pシューターが射貫くという
ゲームプランが必要だと。
3Pが決まれば守備が広がり、自分自身が活動しやすくなるし、自分にマークが集まれば
3Pシューターは、マークが薄くなり、高確率でシュートを決められる。
その牧が描いた戦略を実行するには、神の成長が不可欠であり、その期待に答えたのも
神だった。
三井、藤真、仙道と強力なシューターがそろった神奈川を代表するメンバーが揃っていても
その信頼は薄れるものではなかった。
牧から、矢のようなパスが神へ放たれた。
一ノ倉がそれに反応し、素早く神へ体を寄せる。
神は、会場の熱気とは裏腹に恐ろしいまでに静かにシュート体制に入った。
一ノ倉は必死に、ゴールと神の間の直線をふさいだ。
しかし、神は、躊躇することなくシュートを放った。
一ノ倉「なに、このコースでは入らないはず・・・。」
瞬間(とき)がとまろうとしていた。
しかし、その静寂は、一瞬でかき消された。
それはシュートではなく、パスだったのだ。
空中にあるボールに一本の手が伸びてきた。
仙道の右手だ!
ゴール前に駆け寄った仙道が神のはなったパスをそのままリングに叩き込んだ!!
仙道「よっしゃ!」
神奈川 92
秋田 92
彦一「ア、アンビリーバブルや」
三井「や、やりやがった」
藤真「ふー、ギリギリだな。」
そう、高頭は何重にも作戦を立てていたのだ。
3Pシュータが多くはいることで、外に警戒がいく。
そこで牧が決められるようなら切り込んで決める。
牧にマークが集中するようなら、神の3Pで勝負をかける。
最後に、神にもマークがくれば、守備が外に向いている状態なので
インサイドはマークが薄くなるので、仙道が決める。
こういったプランを立てていたのだ。
しかし、どれも紙一重の作戦だ。まして、相手は王者。
1回こっきりのチャンスでうまくいくかハッキリ言って100%の自信があったわけではなかった。
結果的にも考えていたシナリオの最終段階まで追い詰められた。
が、選手たちを信じて送り出したのだ。
桜木「戻れーーーーーー。ヤマオーは狙ってくるぞ。」
桜木は、学習していた。
残り5秒。秋田は、守りを固めた神奈川を崩すことができず、ホイッスルが鳴った。
牧「延長か・・・。」
河田「仙道か。沢北みてーな奴だな。延長では俺が相手してやる。」
思った以上に、秋田に落ち込みはなかった。
むしろ、まだ試合を楽しめるという高揚感もあったのだ。
彼らは常勝軍団であり、大学生と試合をしても勝ってしまうため、
こういった緊迫した試合は楽しくて仕方がないのだ。
長き戦いは延長戦へともつれ込んだ・・・。
(続く)
2021年04月17日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part79 作戦2
神奈川 90
秋田 92
高頭監督は最後のタイムアウトを取った。
あと残り35秒。
攻撃のチャンスは1回切りだ。
正直迷っていた。体力勝負になると分が悪いことが目に見えていたからだ。
あれだけの練習をこなしているメンバーにもかかわらず、体力の限界が目に見えていた。
それに対して、秋田の連中は、まだまだ体力に余力があるように見えた。
3点を取りに行くべきか?それとも・・・。
そう考えていると応援席から大きな劇が飛んできた。
「高頭ーーーー!選手たちを信じろ!」
その声は、田岡だった。田岡の方を見上げると力強くこぶしを突き出していた。
見渡すと安西もうなずいていた。
牧「延長になっても大丈夫ですよ。こいつら、諦めだけは悪いですから。」
三井「諦めたらそこで試合終了だからな!!」
高頭は、決心した。
高頭「よし、最後の作戦を伝える。」
一方、堂本は、
堂本「よくやった。この一本は大きい!ただ、ここで油断をするな。
インターハイで高い授業料を払っただろ。しっかり勝ちきれ!」
堂本は続けた。
堂本「最後は、牧だ。いくら仙道、三井の調子が良くても、神奈川は、
牧のチームだ。牧さえ止めれば勝てる。」
しかし、フィールドに立っているメンバーは、仙道、三井の勢いが凄いことを
肌で感じていた。残り時間と点差も考えると本当に牧で2点を取りに来るか?
ということが頭によぎっていたのだ。
河田「ここまで来たら、頭で考えても仕方がねぇ。各々が自分がすることをしっかりするだけだ。」
深津「そうだピョン。しっかりとやるべきことをやるピョン。延長にはならないピョン。」
そして、試合が再開されようとした際に、神奈川のメンバーを見て、驚愕した。
赤木と花形を下げて、神と藤真を投入していたのだ。
堂本「何!?逆転を狙いに来たのか?」
そしてフエがなった。
藤真「行くぞ!!」
藤真がボールを入れた。
この陣営では、リバウンドが取れないことは明らかだ。
スピードで秋田を混乱させるしかない。
しかし、最後の最後で秋田も全力で走って、マークを外さない。
牧「よこせ!!」
牧は、神の横を通り抜けて、ボールをもらった。
残り15秒。
牧にボールが渡り、緊張感がマックスとなった。
牧の集中力も研ぎ澄まされていた。
牧の前に立ちはだかったのは、深津。
深津「最後は抜かせないピョン。」
牧は、深津を背にし、中へ切れ込もうとしたが、深津も懸命に守っている。
それだけではない。
深津は、牧をうまく河田の方へ誘導していったのだ。
河田、深津のダブルチームで牧をマークした。
牧「これを待っていたんだ。」
牧以外全員が3Pシュートを打てるメンバーだった。
牧が最後に選択したのは・・・。
(続く)
2017年11月12日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part78 作戦
神奈川 90
秋田 90
堂本は、怒鳴った。
堂本「何をしている。インターハイの悔しさを忘れたのかっ!!」
これが堂本の持ち味だった。
常勝山王工業を率いているため落ち着いた名将ととらえられているが、実際は、選手たちに年齢も近く、熱血漢である。
堂本の心は熱く煮えたぎっていた。山王の歴史の中でも最強と考えているこのチームで2回も敗北などは許されないのだ。
選手たちもそんな堂本を尊敬していた。堂本の期待に応えるべく、何をすべきかを考えていた。
松本「三井の奴が調子に乗ってやがる。アイツを調子の乗せすぎると夏の二の舞になってしまうぞ。」
一ノ倉「・・・。必ず止めてやる。ここまできて、ひっくり返されてたまるか。」
深津「落ち着くピョン。まだ同点だピョン。」
河田「面白れぇ試合になってきた。ここまで楽しい試合は、インターハイ以来だな。」
次の瞬間、堂本は落ち着いていた。この切り替えの早さが堂本のすごいところだ。
堂本「残り時間1分。同点に追いついたから、マンツーマンで来ないと思うか?
アイツらは攻めてくる。もう一度マンツーマンを仕掛けてくるぞ。
そこでだ・・・。」
堂本は、声を潜めて、メンバーに作戦を伝えた。
一方、神奈川ベンチは、盛り上がっていた。
三井「行ける。行けるぞ。」
清田「さすが、牧さんっス。あそこで深津を止めて流れを呼び込んだー。」
彦一「さすがやー。仙道さん、イカすわー。あのパスカットは天才やわー。」
仙道「ふぅーー。さすがにしんどい。」
三井「ナイスパスカットだ。もうひと踏ん張りしてくれよ。
そして最後にオレを輝かせてくれ。」
牧「最後に三井が輝くかどうかは置いといて、ここまで来たら負けるわけにはいかないな。」
高頭「当たり前だ。ここからは一つのミスも許されんぞ。(しかし、この状況でヒーローになろうとしているのは無神経なのか頼もしいのかわからんな。)。」
桜木も声をからしていた。
桜木「ゴリーーー!勝つんだろう!ヤマオウに勝つんだろうっ!」
赤木「ふっ!アイツめ。」
流川もこぶしを握り締めていた。自分がでれないことが何より悔しかったが、それ以上に勝ってほしい気持ちが強かった。
バラバラだった神奈川のチームが今やっと一丸になっていた。
高頭は一つの作戦を選手に伝えた。
弥生「そろそろ時間ね。」
中村「どっちが勝ちますかね?」
弥生「決まっているわ。気持ちが強い方よ。勝ちたい気持ちが。」
中村「(だからそれがどっちかって聞いているのに・・・。)」
弥生「なにっ!心の声が聞こえたわよ。しかし、ここからは作戦も重要ね。」
試合が再開された。
神奈川がマンツーマンを仕掛けようとしたが、ボールを入れるのがなんと野辺。
野辺「いくぞーーーーー。」
その声を聴いて自コート手前にいた河田が一気に神奈川ゴールに向けて凄まじいスピードで走り出した。
虚を突かれて、赤木のスタートが遅れた。
花形も一瞬、野辺のマークが遅れた。
その隙をついて、野辺がロングスローを河田に入れた。
河田のスタミナ・スピードいずれも限界知らずだった。
試合終盤のセンターのスピードではなかった。
懸命に走る赤木を尻目に無情にもボールはものすごいスピードで河田へ渡った。
河田「悪いな。走りっこなら負けねぇ。」
そういいながらシュート体制に入った。そこへ懸命に仙道が戻ってきた。
しかし、それでも、松本のマークをしていた仙道が追いつくには無理があった。
マンツーマンは破られるともろいのだ。
あっという間に秋田がゴールを決めた。
堂本は、赤木の瞬発力より河田の瞬発力の方が優れていると考えたのだ。
マンツーマンは局地戦。勝てるところで確実に勝つという堂本の作戦勝ちだった。
神奈川 90
秋田 92
(続く)
2017年01月14日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part77 最後の賭け
神奈川 88
秋田 90
弥生「残り1分20秒。神奈川はここを決められたら厳しいわ。
(しかし、沢北君を抜いたメンバーでここまで強いとは・・・。)」
中村「そうですね。しかし、それは神奈川メンバーもわかっていますよ。」
ここで、神奈川のメンバーがフルコートのマンツーマンを選択した。
この選択は、高頭の指示ではない。皆の意思がこれしかないとシンクロしたのだ。
堂本「まさか。急造チームができるはずがない。深津、振り切れー」
しかし、深津の前に立ちはだかったのは帝王牧。
牧も深津も一言も言葉を発せない。それほどの緊張感で向かい合っていた。
中山「深津さん、早くフロントへ!!」
ベンチの中山も懸命に応援をしていた。
清田「牧さん、がんばれ!」
神奈川ベンチも心は一つになっていた。
フロントコートに入れさせない懸命の牧のディフェンス。
フロントコートへ向かうために必死で揺さぶりをかける深津。
二人は集中しすぎていて、まわりが見えていなかった。
その間隙をぬって、不意に三井がダブルチームに行った。
この一本を止めるために、最後の賭けに出たのだ。
三井「ここで止めるしかねぇ。」
河田「三井がいったぞーーー」
その声に反応してフリーの松本へパスが放たれた。
誰もが三井の策が外れたと思った瞬間、右手が伸びてきた。
仙道だ。
仙道が松本へのパスを読んでいたのだ。
そして、すぐさま牧、深津から距離をとってレフトサイドへ展開していた三井へノールックでパスがでた。
三井「でかしたっ、仙道!」
そう、三井は深津からボールを直接奪おうとしたのではなく、あえて松本をフリーにすることで松本へパスがでるだろうとそして、そのパスを仙道がとってくれるだろうと思っていたのだ。
そして、仙道も三井が深津へ向かった瞬間、一ノ倉のマークを外し、松本へ向かった。
ただ、これはあくまで賭けだった。一瞬でもタイミングがずれていれば、深津は一ノ倉へパスしていたかもしれないし、河田を選択していたかもしれないのだ。
しかし、何の打ち合わせもなくこの作戦を選択した二人には迷いがなかった。
そして、三井がスリーを放とうとした瞬間、今度は一ノ倉が懸命に手を伸ばしてきた。
秋田もここまできて負けたくないのだ。
全選手のコンセントレーションがマックスになっていた。
三井「ちっ。」
そういいながら冷静に、ワンドリブルを入れて、一ノ倉を交わし、レイアップを決めた。
神奈川 90
秋田 90
桜木「うぉおおおー、ミッチーの奴やりやがった。」
宮城「花道っ。追いついたぞ。」
流川「・・・。」
流川も三井、仙道のプレーには度肝を抜かれていた。
ただ、悔しさではなく、追いついた喜びの方が大きかった。
チームを離脱しているがチームの勝利を願っていたからだ。
弥生「残り1分ね。このままいくとちょうど1回ずつのオフェンスね。」
ここで堂本がタイムアウトを取った。
(続く)
2016年11月20日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part76 一進一退
神奈川 86
秋田 87
弥生「6点差であきらめるかと思ったけれどまったくあきらめる気配を見せず、そしてまた1点差。この試合どっちに転ぶかわからないわね。」
中村「三井君もすごかったが、その前の牧君のシュートはすごかった。」
弥生「意地ね。深津君に3Pを決められたことが悔しくて仕方がなかったのよ。
しかし、牧君のシュートはすごかったけど、得点的には三井君の3Pはおおきかったわ。」
堂本「まだリードしているぞ。負けるな!!」
堂本も内心は焦っていたが、それを選手に悟られないように落ち着かせようとしていた。
しかし、秋田の選手たちは、意外と落ち着いていた。
深津「ここで一本しっかり返すピョン。」
そういいながら、深津は、河田とアイコンタクトを交わした。
河田がハイポストに立った。
赤木はどうしたらよいか悩んでいた。あの距離では、河田を防げないと考え、ローポストあたりで陣取ろうと考えた。
しかし、その一瞬の判断が、河田をフリーにした。
気づいた時には、花形がフォローに入ったが、河田にボールが渡った後だった。
花形に気づきワンフェイクで花形を交わし、一気にゴール下へ切れ込んだ。
赤木が慌てて河田の前へ出たが、構わず河田がダンクに行き、赤木を弾き飛ばした。
「ピピーーー、ディフェンスチャージ」
神奈川 86
秋田 89
赤木「くそっ!」
花形「ハァハァ」
三井「(神奈川の柔と剛の両センターをそれぞれの得意分野で上回りやがった。)」
河田「まだまだ譲る気はないぞ。」
河田はあっさりとフリースローを決めた。
神奈川 86
秋田 90
高頭「4点差。残り時間が1分45秒か。外せないな。」
高頭はうっかり心のつぶやきが声に出てしまった。
選手に動揺を与えまいとマイナスの発言は控えようとしていたが、つい言葉がでたのだ。
しかし、
彦一「まだやー。ここからが神奈川は強いんやー。」
清田「そうだ。俺たちはまだ負けない。牧さん、ファイトー。」
ベンチも必死だった。それは秋田も同じだった。ベンチから大きな声が飛び交い、コートへ声が届きにくくなっていた。
仙道「牧さんっ。」
仙道が牧へ素早く入れた。これはフルコートのゾーンプレスを防ぐために、相手の準備が整う前に、試合を再開した仙道のファインプレーだった。
牧はその意図に気づきあっという間にフロントコートへもっていった。
疲労困憊の花形、赤木も懸命に走った。しかし、秋田も戻りが早い。
どちらのチームも懸命にプレーをしていた。
三井と仙道も懸命に秋田のディフェンスを惑わす動きをした。
スタミナ不足だった三井の姿はそこにはなかった。
仙道と三井がミドルポストあたりですれ違った。どちらもスリーがあるため、秋田は警戒した。仙道と三井がポジションチェンジで外へ広がった瞬間にど真ん中にスペースが空いた。
あっという間にそこを牧がカットインした。
河田はあとは牧をたたけば勝利できると思っていた。河田だけは牧を警戒し、牧の前に立ちはだかった。
先程同様、牧が河田に向かってジャンプし、背中を向けた。
河田はシュートが来ると思っていたが、牧はボールを足元に落とした。
そこへ赤木が走りこんで、豪快にダンクを決めた。
赤木「河田よ、悪いな。俺もまだまだあきらめん。」
神奈川 88
秋田 90
河田「はっ、面白れぇ。」
残り1分20秒。
(続く)
2016年10月16日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part75 あきらめない心
神奈川 81
秋田 84
観客「おおーーっ。中山を外してきてる。山王単独チームだ。」
観客「神奈川はインサイドを固めてきたな。」
それぞれのメンバー交代を見て、観客はざわめいていた。
赤木「いくぞっ!気合で負けるな。」
そういいながら赤木がボールを入れた。
三井から牧へボールを渡した。
ハイポストの位置に花形が展開した。
藤真「これで攻撃の幅が広がる。花形は、インサイドだけでなくいろんなプレーができる。」
しかし、意外にも牧は花形にボールを入れなかった。
牧と藤真の差がここにあった。
藤真は周りを活かすプレーでチームを盛り立てていくが、牧はここぞという場面では自ら切れ込んで、自分で決めることでゲームの流れを持ってくるのだ。
なので、ハイポストに花形がいると逆に違和感があり、プレーしにくく感じていたのだ。
それを感じ取ったのが、仙道。
仙道が牧の後ろに回り込んだ。
牧は仙道へボールを渡すと右へ流れた。
松本「仙道、お前の好きにさせん。」
松本は仙道のマークにしっかりついていた。が、仙道は意に介していなかった。
仙道は、ノールックで鋭いパスを入れた。
松本「なにっ。このタイミングか?」
仙道の鋭いパスが赤木に渡った。
三井「赤木、勝負だ。」
赤木に迷いはなかった。振り向きざまにシュートを放とうとした。
が、現実は厳しかった。河田のブロックショットに阻まれた。
そのボールを拾ったのは、一ノ倉。
牧「戻れっ。」
ここで5点差になるとさすがに厳しくなるのは神奈川のメンバーはみんな感じ取っていた。
懸命に戻った神奈川のメンバーで、速攻を食い止めた。
ように見えたが、なんとここで深津。
宮城「まずいっ、深津のスリーだ。」
牧「なにっ。」
スリーポイントラインよりかなり後ろでボールをついていた深津がいきなりのスリーを放った。
(パスッ)
観客「おおーーっ。決まったーーーーーー。」
深津「今まで、さんざんやられたお返しピョン。」
この3点は大きかった。残り時間が少なくなっていることと、牧が深津に決められたことによって、チームのメンタルに与える影響が大きかった。
神奈川 81
秋田 87
高頭「6点差か・・・。残り2分53秒か・・・。」
高頭も打つ手がなくなってきていた。インサイドの赤木が完全に止められている以上、外に頼らざるを得ない。
三井「まだだぞ。まだだ。ここまできてあきらめんじゃねーぞ。」
三井は、まだあきらめてなかった。そして、すぐにボールを入れた。
そしてまだあきらめてなかった選手がここにもいた。牧だ。
牧がものすごいスピードで敵陣へ切れ込んだ。
河田「牧か。面白ぇ。」
そういって河田は牧がジャンプシュートの体制で突っ込んできたところへブロックショットの体制で食い止めようとしていた。完全に止められる体制だったが、牧が空中で体を反転させ河田の横からシュートをねじ込んだ。
神奈川 83
秋田 87
牧「うらぁあああーーーーー。」
彦一「な、なんじゃーーー、今のプレーは。完全に止められるタイミングやったで。す、すごすぎる。」
清田「ま、牧さんがあんなにムキになってプレーをしている・・・。」
河田「な、なんだ。今のは。牧にあんなプレーができるのか。沢北のようだった。」
河田は驚いてはいたが、すぐに次のプレーに切り替えていた。
そしていつものように野辺から深津へボールを入れようとしたそのタイミングで陰からこそーっと三井が河田の後ろから現れた。
三井のパスカットだ。
桜木「き、きたねぇ。」
三井は、すぐにシュート体制に入った。
が一ノ倉が追いついてきた。
ワンドリブルを入れて、交わしにかかったタイミングで、なんと後ろにバックステップをした。
これには秋田のメンバーも虚を突かれた。
三井「こんなチャンスは滅多にねぇ。」
そういいながら放たれたシュートは、今までより高くキレイな弧を描いてリングへ吸い込まれた。
神奈川 86
秋田 87
残り2分10秒・・・。
(続く)
2016年10月10日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part74 ベンチワーク
神奈川 81
秋田 82
1点差に迫られたが秋田は動揺していなかった。
淡々と作業をこなすように、深津がフロントへボールを運んだ。
赤木「ここだ。ここを止めるぞーー!」
赤木が吠えた。残り時間を考えるとそろそろ追いついておきたいのだ。
河田「ドンドンボールを入れろっ!決めてやる。」
河田も気合を入れてきた。
しかし、深津が選択したのは、一ノ倉だった。
三井は、一ノ倉はシュートはないと踏んで、少し離れてマークをしていた。
深津「イチノ、打つピョン!!」
一ノ倉は、言われるまでもなくシュート体制に入っていた。
三井「くそっーー」
桜木「スクリーンアウトだーーー。」
応援席から桜木の声が響いた。
しかし、その声むなしく一ノ倉のシュートがリングに吸い込まれた。
神奈川 81
秋田 84
桜木もうずうずが止まらない感じだった。この試合、神奈川はリバウンドがあまりとれていなかった。自分がいればという気持ちで声が自然に出るようになっていたのだ。
また、神奈川ベンチもいつもなら桜木の声に対して清田あたりが
清田「けけーっ。入るシュートかどうかも分かんないのか?ドシロートが。」
などと冷やかすのだが、誰もそんな声を発することはなかった。
ベンチも一体となって勝利を目指していたのだ。
三井「このタイミングでアイツにシュートがあるとは。油断した。」
藤真「ここからは一本も落とせないぞ。」
三井「ふっ、プレッシャーをかけやがって。」
しかし、三井に慌てるそぶりは全くなかった。それどころかこの大舞台を楽しんでいた。
不良時代を考えると夢のような時間なのだ。
三井は安西先生の方を見た。安西はグッとこぶしを差し出した。
安西も三井がこの試合のキーマンになりそうだという予感を感じていた。
ここで、高頭はタイムアウトを取った。
高頭は、3点差だが、ここで一気に追いつこうと考えるのは危険だと思ったのだ。
一度冷静にさせようとタイムアウトを取った。
高頭「中々簡単に追いつかせてくれないな。」
高頭にしては珍しく笑顔で選手に話しかけた。
切り出したのは藤真だった。
藤真「監督っ。ここからは確実なシュートが求められます。そうなるとインサイドを強化したほうが良いと思います。」
三井はドキッとした。
三井「(ひょっとして今のミスでオレを変えようっていうのでは・・・。)」
しかし、その後の言葉に三井は驚いた。
藤真「今、仙道、三井、牧の3人がノッテいます。この3人をサポートするために、花形と私を変えてください。インサイドの高さが必要です。」
高頭は花形投入のプランも考えていた。しかし、三井、藤真の調子が良かったので少し悩んでいたのだ。
藤真「花形!体力の限界まで勝負して来い。お前の力が必要だ。」
高頭「花形。行けるか?」
花形は即答した。
花形「行けます!!」
一方、秋田ベンチもあわただしかった。
堂本「ここからだぞ。インターハイの悔しさを忘れるな。お前たちはあれからさらに地獄のような練習をしたんだ。負けるはずがない。」
堂本の声はいつになく大きく、神奈川ベンチまで聞こえるくらいの声だった。
堂本は続けた。
堂本「ここからは気持ちだ。ここで負けたら冬の選手権でもなめられるぞ。徹底的に叩けっ!」
堂本は、沢北不在でのここ一番での攻撃力の弱さを感じていた。中山ががんばっているとはいえ、まだ2年生で全国の舞台は初めてなのだ。
松本「監督っ。行かせてください。俺が決めてきます。」
堂本は驚いた。いつもクールにしている松本が感情をむき出しにしていた。
中山「僕も行きたいですが、ここは3年生に任せるべきです。」
中山も自分が成長できている自覚もあり、どんどん試合をしたかったが、自分でもまだ松本には遠く及んでいないことはわかっていたのだ。
堂本「よしっ。お前たち3年で勝利をつかんで来い。」
そして試合は再開された。
(続く)
2016年09月11日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part73 最後の夏
神奈川 78
秋田 82
宮城、流川、神、福田と来年を担う選手たちがベンチで一様に悔しがっていたが、肩で息をしていた花形も同様に悔しがっていた。
インターハイ予選で無名の湘北に敗れ、最後の夏が予想外に早い結末を迎えたのだ。
しかし、今年は神奈川が単独チームではなく選抜チームということでチャンスが回ってきた。
そして出番をもらって活躍したが、最後には全国の壁を感じる結果となったのだ。
高頭「まだ、最後に出番があるぞ。最後まで緊張の糸を切らすな。」
高砂「花形よ。俺は出番が今のところないが、俺にできることをする。」
そういって高砂はひたすら応援をし始めた。
同様に高砂も悔しい思いを募らせていることは容易に想像できた。
県NO1 の海南大付属のセンターでありながら、赤木、魚住の両センターに話題をかっさわれ、魚住が引退して選ばれなくても花形がメンバー入りし、結局国体では出番がない状況だ。
しかし、それでもウォーミングアップを欠かさなかったし、チームの勝利にできることを優先していた。
花形は高砂とはあまり会話をしたことがなかったが、少し尊敬した。
花形「よしっ、俺も応援するぞ。」
彦一「最高やっ。このチームの雰囲気は最高やっ。必ず逆転できるで。」
しかし、王者である山王工業のメンバーはみじんも焦っていなかった。
河田「イチノッ。三井に代わったんだ。神と同じタイミングではだめだぞ。アイツは何するかわからんぞ。」
一ノ倉「わかってる。しかし、スリーポイントは決めさせん。」
一ノ倉から深津へボールを入れた。
深津は指を2本立てた。
宮城「あれはっ!」
宮城は夏のインターハイの試合の際に、同様のサインプレーがあったことを思い出した。
宮城「ダンナ、右に河田が入ってくるがおとりで野辺にボールが出るぞっ。」
赤木は一瞬河田についていこうとしたが、宮城の声で野辺の前に出た。
深津が気付いた時にはボールを投げた後だった。
赤木「ナイスだ宮城。」
赤木がボールを奪った。
赤木「牧っ。俺がスクリーンをかける。必ず三井がフリーになる。見逃すな。」
牧「ふっ。やっと赤木らしくなってきやがった。」
そういいながら牧は切れ込んでいった。
牧と藤真がクロスし、ボールは藤真にわたっていた。
藤真がシュート体制に入ろうとしたときに深津が藤真の前に出てきた。
藤真「さすがだな。」
深津「これ以上は好きにさせないピョン。」
藤真は一度牧へボールを戻した。
牧は、仙道と三井のポジションを確認した。
牧「そういうことか・・・。」
牧は、仙道と三井のポジションから二人が何を考えているか一瞬で悟った。
牧は、三井にボールを入れた。
三井にボールが渡った瞬間に一ノ倉がタイトなマークがついた。
一ノ倉「シュートはさせん。」
三井「誰が、シュートを打つといった!?」
三井は後ろにボールを送った。
三井の背後に仙道がポジションをとった。
一ノ倉と野辺が仙道のシュートを止めようとしたが、三井が二人ともの壁になって、仙道へのマークが遅れた。
彦一「きたきたきたーーーー。」
仙道の連続スリーが決まった。
神奈川 81
秋田 82
赤木「さすがだな。ここ一番の得点能力は流川以上だ。」
しかし、仙道の得点能力以上に藤真が脅威に感じたことがあった。
藤真「なんの打ち合わせもせず一瞬でこの展開を組み立てたのか?
しかもそれを読んで絶妙のタイミングでパスを入れた牧。
天才は天才を知るということなのか・・・。」
藤真は味方ながら戦慄を覚えた。
1点差まで神奈川が追い上げてきた。
(続く)
2016年09月03日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part72 三井の出番
神奈川 75
秋田 80
弥生「残り時間が6分。これ以上離されたくないわね。」
中村「しかし、秋田はまだ余裕がありますよ。」
弥生「そうね。簡単に神君をフリーにして神君を止めている。(神奈川では考えられない戦略だわ。)」
中村「なんで、あの神君が簡単に止められるんでしょうかね?
いつもフリーになってボールをもらったらあっという間にシュートを決めているのに。」
弥生「・・・!?あっという間に・・・・。」
三井「監督っ!!神には重大な欠点がある。そこを突かれている。
代わりに出させてくれ。」
高頭は迷った。ここで交代させたら神はひょっとしたら立ち直れないかもしれない。
しかし、三井の言う通り確かに神が狙われている。
海南の監督としては許しがたい事実だ。そこを見極めて神が打開しないまま交代というのは選択したくない。だが、一方で神奈川の監督でもある。勝利を目指さないといけない。
そんな時、
「高頭ーーーー!!お前のところの選手は、そんなにやわじゃないぞーーー。」
田岡だった。田岡が悩める高頭監督の背中を押した。
高頭「よしっ。三井交代だ。」
神が少しうなだれてベンチに戻ってきた。
三井「神よ、同じスリーポインターとして外から見ていてわかったことがある。
っていっても仙道が教えてくれたんだがな・・・。
敵に塩を送るようだが、お前は、ここ数日、全国の強敵を相手にしようと意識しすぎだ。
マークが来る前にシュートを打とうとマークを外してボールをもらった瞬間にシュートを打ってるんだ。だから、敵はマークが一瞬外れてもそのあとのボールの行方を追って一定のリズムで横から叩き落とせてるんだ。」
神「・・・・そ、そんなはずは・・・。」
そういいながら神は、自分のプレーを振り返った。
三井「まあ、そう落ち込むな。わかっていてもそんな芸当ができるのは、全国にもそうそういねぇ。それくらいお前のスリーポイントはすごいんだ。まあ今日は俺に任せておけ。」
そういって三井はコートに戻った。
三井「さぁ、オレ様が戻ってきたからにはあっという間に逆転だぜ。」
激を飛ばした。
牧「三井、神の代わりに入ったんだ。狙えよ。」
三井「あぁ。」
三井の眼はゴールリンクだけを見ていた。
河田「一ノ倉よ、インターハイの悔しさを忘れるな。三井にやられたんだ。」
一ノ倉「今度こそ止めてやる。」
秋田も必死だった。
一ノ倉から深津へボールを入れ、フロントに運んだ。
深津もそうそう牧にやられっぱなしではなかった。
パスと見せかけ、牧を置き去りにした瞬間にシュートを決めた。
神奈川 75
秋田 82
三井「仙道よ、そろそろ本気を出してくれよ。」
仙道「三井さんこそ。」
7点差。残り時間を考えると神奈川としては一本も落とせない状況になってきた。
藤真「牧、オレによこせ。中山の守備はザルだ。」
そういって藤真が大きな声をあげた。
中山「なにっ。」
自信を持ってプレーをしていた中山にとってその声で一瞬自信を無くしかけた。
藤真の狙いはそこにもあった。藤真が中山のフロントへ位置どった。
だが、藤真の狙いは声に出したことで秋田の守備陣を藤真に意識を向かせることだった。
牧はそれを素早く察知し、パスコースを探して、外にいる三井にボールを回した。
素早く一ノ倉がマークに来たが三井はボールを受けず手で弾いた。
三井「あめぇな。」
そこには仙道がフリーでいた。
野辺は中を固めていたため、まさか外に仙道が流れるとは思っていなかったのだ。
彦一「フリーや!!」
仙道はシュートを放った瞬間、ガッツボーズを決めた。
神奈川 78
秋田 82
田岡「珍しいな。仙道がガッツポーズだなんて。」
福田「アイツはきっとやる。優勝旗を神奈川に持ち帰ってくれる。」
そういいながら福田は怪我をした自分のふがいなさを悔いていた。
その横で桜木も同様の気持ちだった。
そしてベンチでもイライラが最高潮に達していた選手がいた。流川だ。
流川「くそっ。こんな大事な時にプレーできないなんて。」
宮城「流川よ。悔しい気持ちはわかるが今は全力で応援だ。」
宮城も悔しさはあった。神奈川ナンバーワンガードになるために、牧、藤真の壁は想像以上に高いこともわかった。だが、今はチームの勝利のためにそれを押し殺していた。
(続く)