2016年10月10日
スラムダンク その後 〜Another Story 国体編 Part74 ベンチワーク
神奈川 81
秋田 82
1点差に迫られたが秋田は動揺していなかった。
淡々と作業をこなすように、深津がフロントへボールを運んだ。
赤木「ここだ。ここを止めるぞーー!」
赤木が吠えた。残り時間を考えるとそろそろ追いついておきたいのだ。
河田「ドンドンボールを入れろっ!決めてやる。」
河田も気合を入れてきた。
しかし、深津が選択したのは、一ノ倉だった。
三井は、一ノ倉はシュートはないと踏んで、少し離れてマークをしていた。
深津「イチノ、打つピョン!!」
一ノ倉は、言われるまでもなくシュート体制に入っていた。
三井「くそっーー」
桜木「スクリーンアウトだーーー。」
応援席から桜木の声が響いた。
しかし、その声むなしく一ノ倉のシュートがリングに吸い込まれた。
神奈川 81
秋田 84
桜木もうずうずが止まらない感じだった。この試合、神奈川はリバウンドがあまりとれていなかった。自分がいればという気持ちで声が自然に出るようになっていたのだ。
また、神奈川ベンチもいつもなら桜木の声に対して清田あたりが
清田「けけーっ。入るシュートかどうかも分かんないのか?ドシロートが。」
などと冷やかすのだが、誰もそんな声を発することはなかった。
ベンチも一体となって勝利を目指していたのだ。
三井「このタイミングでアイツにシュートがあるとは。油断した。」
藤真「ここからは一本も落とせないぞ。」
三井「ふっ、プレッシャーをかけやがって。」
しかし、三井に慌てるそぶりは全くなかった。それどころかこの大舞台を楽しんでいた。
不良時代を考えると夢のような時間なのだ。
三井は安西先生の方を見た。安西はグッとこぶしを差し出した。
安西も三井がこの試合のキーマンになりそうだという予感を感じていた。
ここで、高頭はタイムアウトを取った。
高頭は、3点差だが、ここで一気に追いつこうと考えるのは危険だと思ったのだ。
一度冷静にさせようとタイムアウトを取った。
高頭「中々簡単に追いつかせてくれないな。」
高頭にしては珍しく笑顔で選手に話しかけた。
切り出したのは藤真だった。
藤真「監督っ。ここからは確実なシュートが求められます。そうなるとインサイドを強化したほうが良いと思います。」
三井はドキッとした。
三井「(ひょっとして今のミスでオレを変えようっていうのでは・・・。)」
しかし、その後の言葉に三井は驚いた。
藤真「今、仙道、三井、牧の3人がノッテいます。この3人をサポートするために、花形と私を変えてください。インサイドの高さが必要です。」
高頭は花形投入のプランも考えていた。しかし、三井、藤真の調子が良かったので少し悩んでいたのだ。
藤真「花形!体力の限界まで勝負して来い。お前の力が必要だ。」
高頭「花形。行けるか?」
花形は即答した。
花形「行けます!!」
一方、秋田ベンチもあわただしかった。
堂本「ここからだぞ。インターハイの悔しさを忘れるな。お前たちはあれからさらに地獄のような練習をしたんだ。負けるはずがない。」
堂本の声はいつになく大きく、神奈川ベンチまで聞こえるくらいの声だった。
堂本は続けた。
堂本「ここからは気持ちだ。ここで負けたら冬の選手権でもなめられるぞ。徹底的に叩けっ!」
堂本は、沢北不在でのここ一番での攻撃力の弱さを感じていた。中山ががんばっているとはいえ、まだ2年生で全国の舞台は初めてなのだ。
松本「監督っ。行かせてください。俺が決めてきます。」
堂本は驚いた。いつもクールにしている松本が感情をむき出しにしていた。
中山「僕も行きたいですが、ここは3年生に任せるべきです。」
中山も自分が成長できている自覚もあり、どんどん試合をしたかったが、自分でもまだ松本には遠く及んでいないことはわかっていたのだ。
堂本「よしっ。お前たち3年で勝利をつかんで来い。」
そして試合は再開された。
(続く)
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