2013年01月25日
抗MRSA薬
MRSAとは
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)のことで
病院では「Mが出た」というくらいである。
現在、日本国で承認されている抗MRSA治療薬は
バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリド、ダプトマイシン
がある。
以下、参考として
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ict/koukinyaku/antiMRSAdrugs.htm より。
a. 塩酸バンコマイシン(VCM)
グリコペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、豊富な実績があり且つ各臓器への移行性も良好である。髄液へ移行するのは本薬剤とリネゾリドのみである(ただし移行性は高くはない)。腎機能障害者への投与は慎重に行う必要があるが、しっかりしたTDMを行えば投与は十分可能である。筋肉など皮下組織への移行はテイコプラニン、リネゾリドに劣る。腎障害、聴神経障害の可能性が高くなるため、アミノグリコシド系薬との併用は避ける。また、急速なワンショット静注や短時間での点滴静注を行うと、レッドネック症候群、血圧低下等の副作用が発現することがあるので、60分以上かけて点滴静注する。
b. テイコプラニン(TEIC)
グリコペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、心臓・肺組織・骨への移行が良好である。特に筋肉など皮下組織への移行はリネゾリドと並んで高い。ただし髄液への移行は良くない。一般に血液透析で除去されないのでしっかりしたTDMは必須である。VCMとTEICの効果および安全性に関するメタ解析によると、治療効果はほぼ同等であるが、TEICの方が有意に腎障害、レッドネック症候群の発現率が低いことが示されている。一方、肝障害についてはTEICの方が発現しやすい傾向にある。
c. 硫酸アルベカシン(ABK)
アミノグリコシド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、唯一グラム陰性菌にも効果があり、他の抗MRSA薬との交差耐性が少ない。しかし、当院では唯一耐性菌が検出されている抗MRSA薬でもある。その耐性率(MIC>8)は、2010年は7%である。胸水・腹水・心嚢液・滑膜液への移行は良好であるが髄液・皮下組織・骨への移行は良くない。神経筋接合部に作用するので重症筋無力症患者では慎重投与。
d. リネゾリド(LZD)
オキサゾリジノン系の抗MRSA・抗VRE薬で、抗MRSA薬の中では唯一静菌的に作用し他の抗MRSA薬と交差耐性が少ない。保険適応があるのはMRSA感染症及びVRE感染症のみである。筋肉などの皮下組織・骨・肺への移行が特に良好である。また、体重40kg未満、授乳婦などでは慎重に投与する必要がある。とくに副作用としては骨髄抑制(血小板減少など)に注意が必要である。本薬剤とキヌプリスチン・ダルホプリスチンだけが、国内で承認された抗VRE薬であるため、その使用に当たっては、しっかりした根拠が必要である。
血小板減少は添付文書では14日を越えて投与される場合には注意が必要とされている。さらに、腎機能障害患者では腎機能正常患者に比べ、LZD投与により有意に血小板を減少させることが報告されている。腎機能障害患者に投与する際は、血小板減少のリスクが高くなることを考慮する必要がある。当院の平成19年8月現在の実績では、20例中11例(55%)に血小板減少の副作用が認められ、使用前の末梢血血小板数が正常であった場合の投与開始から血小板減少出現までの期間は13.7±8.3日、使用前の末梢血血小板数がすでに正常値以下だった場合は4.0±4.8日であった。有効例11例中2例(18.2%)は血小板減少が原因で治癒前に本薬剤の投与が中止された。他疾患などで死亡した症例を除き、血小板減少を示した8例中7例(87.5%)の血小板数は血小板輸血無しに回復し、その期間は血小板減少発生日から15.3±11.9日であった。
e. ダプトマイシン(DAP)
環状リポペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬であり、敗血症、感染性心内膜炎、皮膚軟部組織感染症に使用される。一方、肺サーファクタントに結合し、不活化されるため肺炎には使用しない。濃度依存的に効果を示す薬剤であり、1日1回投与が推奨されるが、腎排泄型の薬剤であるため、クレアチニンクリアランスが30 mL/min未満の場合は、2日に1回投与する。また、1日2回以上投与した場合、血中クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇が認められ、さらに、トラフ濃度が24.3 μg/mL以上でCK上昇が示されているので、DAP投与中は定期的なCK値の確認が必要である。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus、MRSA)のことで
病院では「Mが出た」というくらいである。
現在、日本国で承認されている抗MRSA治療薬は
バンコマイシン、テイコプラニン、アルベカシン、リネゾリド、ダプトマイシン
がある。
以下、参考として
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~ict/koukinyaku/antiMRSAdrugs.htm より。
a. 塩酸バンコマイシン(VCM)
グリコペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、豊富な実績があり且つ各臓器への移行性も良好である。髄液へ移行するのは本薬剤とリネゾリドのみである(ただし移行性は高くはない)。腎機能障害者への投与は慎重に行う必要があるが、しっかりしたTDMを行えば投与は十分可能である。筋肉など皮下組織への移行はテイコプラニン、リネゾリドに劣る。腎障害、聴神経障害の可能性が高くなるため、アミノグリコシド系薬との併用は避ける。また、急速なワンショット静注や短時間での点滴静注を行うと、レッドネック症候群、血圧低下等の副作用が発現することがあるので、60分以上かけて点滴静注する。
b. テイコプラニン(TEIC)
グリコペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、心臓・肺組織・骨への移行が良好である。特に筋肉など皮下組織への移行はリネゾリドと並んで高い。ただし髄液への移行は良くない。一般に血液透析で除去されないのでしっかりしたTDMは必須である。VCMとTEICの効果および安全性に関するメタ解析によると、治療効果はほぼ同等であるが、TEICの方が有意に腎障害、レッドネック症候群の発現率が低いことが示されている。一方、肝障害についてはTEICの方が発現しやすい傾向にある。
c. 硫酸アルベカシン(ABK)
アミノグリコシド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬で、唯一グラム陰性菌にも効果があり、他の抗MRSA薬との交差耐性が少ない。しかし、当院では唯一耐性菌が検出されている抗MRSA薬でもある。その耐性率(MIC>8)は、2010年は7%である。胸水・腹水・心嚢液・滑膜液への移行は良好であるが髄液・皮下組織・骨への移行は良くない。神経筋接合部に作用するので重症筋無力症患者では慎重投与。
d. リネゾリド(LZD)
オキサゾリジノン系の抗MRSA・抗VRE薬で、抗MRSA薬の中では唯一静菌的に作用し他の抗MRSA薬と交差耐性が少ない。保険適応があるのはMRSA感染症及びVRE感染症のみである。筋肉などの皮下組織・骨・肺への移行が特に良好である。また、体重40kg未満、授乳婦などでは慎重に投与する必要がある。とくに副作用としては骨髄抑制(血小板減少など)に注意が必要である。本薬剤とキヌプリスチン・ダルホプリスチンだけが、国内で承認された抗VRE薬であるため、その使用に当たっては、しっかりした根拠が必要である。
血小板減少は添付文書では14日を越えて投与される場合には注意が必要とされている。さらに、腎機能障害患者では腎機能正常患者に比べ、LZD投与により有意に血小板を減少させることが報告されている。腎機能障害患者に投与する際は、血小板減少のリスクが高くなることを考慮する必要がある。当院の平成19年8月現在の実績では、20例中11例(55%)に血小板減少の副作用が認められ、使用前の末梢血血小板数が正常であった場合の投与開始から血小板減少出現までの期間は13.7±8.3日、使用前の末梢血血小板数がすでに正常値以下だった場合は4.0±4.8日であった。有効例11例中2例(18.2%)は血小板減少が原因で治癒前に本薬剤の投与が中止された。他疾患などで死亡した症例を除き、血小板減少を示した8例中7例(87.5%)の血小板数は血小板輸血無しに回復し、その期間は血小板減少発生日から15.3±11.9日であった。
e. ダプトマイシン(DAP)
環状リポペプチド系の殺菌的に作用する抗MRSA薬であり、敗血症、感染性心内膜炎、皮膚軟部組織感染症に使用される。一方、肺サーファクタントに結合し、不活化されるため肺炎には使用しない。濃度依存的に効果を示す薬剤であり、1日1回投与が推奨されるが、腎排泄型の薬剤であるため、クレアチニンクリアランスが30 mL/min未満の場合は、2日に1回投与する。また、1日2回以上投与した場合、血中クレアチンキナーゼ(CK)値の上昇が認められ、さらに、トラフ濃度が24.3 μg/mL以上でCK上昇が示されているので、DAP投与中は定期的なCK値の確認が必要である。
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