2011年10月20日
抗精神病薬の有害反応と使用上の注意
抗精神病薬の有害反応には,不可逆性のものや生命予後にかかわるものもあることから十分な注意が必要である。投与初期にみられる副作用としては,過度の鎮静や急性の錐体外路症状(パーキンソニズム,アカシジア,急性ジストニア)がある。こうした有害反応には薬物の減量や切り替えで対応する必要がある。慢性投与中にも遅発性のジスキネジアやジストニアが生じる可能性がある。こうした有害反応は難治性であることが多く,普段から抗精神病薬の使用量を少なく保つことなど心がけ,症状が出現した場合は早期に減量や変薬を行うべきである。
悪性症候群は生命予後に直接関連するため,最も注意すべき副作用である。抗精神病薬開始後4週間以内に生じることが多く,解熱剤に反応しない高熱,筋強剛,発汗,嚥下困難などが出現する。栄養障害や脱水などの全身症状の悪化が誘因となりやすく,抗精神病薬投与中は常に注意を怠らないようにする。心電図上のQT延長から心室性不整脈を誘発し突然死するおそれもあり,普段からモニタリングが必要である。多飲水から電解質バランスが崩れる水中毒が出現することもある。リスペリドンで比較的多くみられる高プロラクチン血症による無月経にも注意が必要である。
これまで挙げてきた有害反応は第1世代抗精神病薬に比較的多くみられ,第2世代抗精神病薬の出現とともに減少傾向にあるが,代わって,オランザピンやクロザピンを中心に体重増加,耐糖能異常など新たな問題が出現しており,定期的な採血検査を行うなどの注意が必要である。クロザピンの難治性統合失調症への有用性は広く認められているが,無顆粒球症が生じる可能性から,頻回の採血による観察が必要であり,慎重な使用が求められている。
引用:臨床薬理学 第3版 日本臨床薬理学会編集
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