2015年07月27日
〈555〉蝉の亡骸
井熊有音はその日もドラッグストアでアルバイトをしていた。
スーパーに3台あるレジの真ん中。No.2のレジについていたが
あがりの時間、5分ほど前に、最近加入した中国人のユンさんに代わった。
ユンさんは上手くはない日本語と、丁寧で器用な所作でレジに入り、
サラリーマン風の男の応対をした。
客の男は、26歳の井熊から、39歳のユンさんに代わったことで少し、残念そうにみえた。井熊は、レジ袋を少し補充して、その場を後にした。
事務所を出ると、19時半だというのに、空に群青が残り、井熊は「ああ夏がきたのだ」と少し思った。そんな感慨も、蒸し暑い夏の湿気にまとわりつかれ、6時間の立ち仕事を終えた井熊の体の中に長く留まる由もなく、信号を待っている間にどこへともなく消失した。
スーパーに3台あるレジの真ん中。No.2のレジについていたが
あがりの時間、5分ほど前に、最近加入した中国人のユンさんに代わった。
ユンさんは上手くはない日本語と、丁寧で器用な所作でレジに入り、
サラリーマン風の男の応対をした。
客の男は、26歳の井熊から、39歳のユンさんに代わったことで少し、残念そうにみえた。井熊は、レジ袋を少し補充して、その場を後にした。
事務所を出ると、19時半だというのに、空に群青が残り、井熊は「ああ夏がきたのだ」と少し思った。そんな感慨も、蒸し暑い夏の湿気にまとわりつかれ、6時間の立ち仕事を終えた井熊の体の中に長く留まる由もなく、信号を待っている間にどこへともなく消失した。
【おはなしの最新記事】
この記事へのコメント